
「あのOD-100の、押し寄せるような音圧と煌めきがここにあり。」
1990年代から2000年代にかけて、マイケル・ランドウ、スティーヴ・ルカサー、スコット・ヘンダーソンといった世界最高峰のギタリストたちの足元と背後を支えた伝説のアンプ「Custom Audio Electronics (CAE) OD-100」。
その、フェンダーライクな滑らかさと、マーシャルライクな雷鳴のような力強さが共存する唯一無二のドライブサウンドが、たった一つのペダルから惜しげもなく溢れ出す。
ハイエンド・アンプの代名詞として君臨したOD-100。その設計者であるボブ・ブラッドショーとジョン・サーが目指した「究極のトーン」を、日本の職人集団Ovaltoneが、アナログ回路の限界を超えた執念によってひとつのドライブユニットへ完全移植しました。
それが、OD-FIVE 2 eXplosionです。
今回は、太く粘りのあるローエンド、リッチで厚みのある中域とコシが生み出す、その他多数の歪みペダルとは一線を画す魅力にスポットを当ててみたいと思います。
使用レビュー:「周波数の最大公約数」を見事に攻略
私はこれまで、CAE OD-100を筆頭にOD-50、そしてPT-100(OD-100ベースのPETE THORNモデル)といった歴代の名機を実機として実際に所有し、その「速すぎるレスポンス」と「濃密な倍音」を文字通り身体に刻み込んできました。それゆえ、このペダルを鳴らした瞬間の戦慄は言葉に尽くしがたいものでした...。

OD-FIVE 2 eXplosionは、紛れもなく実機のトーンに肉薄しています。音色の模倣というよりも「周波数の整理学」です。OD-100サウンドの真髄である、あらゆるジャンルに溶け込み、どんな音域や声質のボーカリストも決して邪魔することのない「周波数の最大公約数」を見事に攻略しています。
歪ませているのにクリーンより透き通るような分離感、そしてアンサンブルの核を射抜く中音域。それは、長年実機を愛した私ですら「これでいい、いや、これがいい」と唸らされる、完璧なOD-100サウンドそのものといえる水準ですよ。
伝説の名機「OD-100」のサウンド構造を徹底解析した設計
OD-FIVE 2 eXplosionの最大の存在意義は、CAE OD-100という巨星をターゲットに据えたことです。そもそも、他に無いですからね(笑)
OD-100特有の「歪んでいるのにクリーンのような輪郭がある」「ピッキングした瞬間に音が飛び出す超高速の立ち上がり」といった、アンプとしての物理的な振る舞いを、アナログディスクリート構成によって見事に再現しています。
完全に独立した2つの「アンプ・チャンネル」
本機は、同じスペックを持つ2つのチャンネル(Ch.A / Ch.B)を搭載しています。これは単なる「ブースト機能」とは根本的に異なります。「アンプヘッドを2台並べ、瞬時に切り替える」という贅沢なコンセプトです。
それぞれのチャンネルに独立したLEVEL / MIDDLE / EDGE / GAINを備えているため、例えば、Ch.Aをランドウのような透明感のあるクランチに、Ch.Bをルカサーのような分厚いリードトーンに設定する。あるいは、両方のゲインを上げつつ、トーン設定だけを変えてバッキングとソロを使い分ける。プロフェッショナルな現場で求められる、一切の妥協を許さないシビアなサウンドメイクが可能です。
ボーカルとの共存を司る「MIDDLE」コントロール
本機のコントロールにおいて、最も重要かつ「実機らしさ」を感じさせるのがこのMIDDLEです。
実機オーナーなら、OD-100がいかに「中域の整理」に長けていたかをご存知でしょう。 このノブは、単に音を太くするだけではありません。ボーカルの帯域を絶妙に避けつつ、ギターとして最も「抜ける」ポイントを強調します。
どんな声質の歌い手であっても、その背後で完璧に調和し、ソロでは一転して主役を張る。この「周波数の最大公約数」を調整する役割こそが、このMIDDLEノブの真骨頂です。
アタックの閃光をコントロールする「EDGE」
EDGEノブは、ハイミッドからハイにかけての帯域を司ります。
これはピッキングした瞬間の「食いつき」や「抜け」を決定するパラメーターです。接続するアンプがJC-120のようなソリッドステートであれ、大型のチューブアンプであれ、このEDGEを調整することで、瞬時に「OD-100特有のクリスピーな解像度」を環境に合わせてキャリブレーションすることが可能です。
歪みの質を根本から変える「3段階ゲインレンジ」
中央に配置されたトグルスイッチにより、ULTRA / LOW / HIGHの3段階で歪みのキャラクターを切り替えられます。これは、アンプの回路設計そのものを書き換えるような根本的な質の変化をもたらします。
- LOW: クリーン〜クランチのダイナミックな反応。
- HIGH: モダン・ハイエンドアンプの王道サウンド。
- ULTRA: 圧倒的なサステインと密度を誇るハイゲイン。
物理的な「箱鳴り」を補正する背面のプッシュスイッチ
筐体背面に備えられたNORMAL / BRIGHTスイッチ。これが、本機を「アンプそのもの」たらしめる重要な隠し味です。
使用するアンプのスピーカー特性やキャビネットの容積に合わせて高域の出方を最適化し、足元から地響きがするような重厚なスタックサウンドを手に入れる手助けをします。
鎌倉から世界へ誇る、堅牢で美しいメイド・イン・ジャパン
神奈川県鎌倉市の工房で、一台一台手作業で調整されるOvaltoneの製品。
内部配線の美しさはもちろん、激しいライブパフォーマンスに耐えうる堅牢な筐体、操作ミスを防ぐレイアウト、そして視認性の高いLED。これらはすべて「音楽を奏でる道具」としての誇りを感じさせます。手にした瞬間、その重みと質感から、これが「一生モノ」であることを確信するでしょう。
ハイエンド・アンプの弾き心地を継承
OD-100という「究極」への到達
1990年代、ギターサウンドは大きな転換期を迎えました。それまでの派手なラックエフェクト中心のサウンドから、より「アンプ本来の鳴り」を重視するスタイルへと回帰していったのです。その中心にいたのがOD-100でした。
Ovaltoneの開発チームは、この歴史的名機の回路図を追うだけでなく、実際にその音が放つ「空気の揺れ」や「弾き心地」を徹底的に研究しました。歪みの粒立ちの細かさ、コードを弾いた時の各弦の分離感、そして音が減衰していく際の消え際の美しさ。それらすべてが、OD-FIVE 2 eXplosionという小さな箱の中に凝縮されています。
歪みの概念を覆す「透明感」
多くのディストーションペダルは、歪みを深くすると音が濁り、和音の構成が分からなくなります。しかし、OD-FIVE 2 eXplosionは、どれほどゲインを上げても「和音の芯」が失われません。これはOD-100が持っていた、高い動作電圧による余裕のヘッドルームを、Ovaltone独自の昇圧技術で見事に再現しているからです。
ジャズ・フュージョンのような複雑なテンションコードから、モダンヘヴィネスのドロップチューニングまで、音が潰れることなくクリアに響く快感は、このペダルでしか味わえません。
プレイヤーとの対話、レスポンスの速さ
「OD-100は弾き手のミスを隠さない」と言われます。それは、それだけレスポンスが速く、ピッキングのニュアンスをそのまま増幅するからです。OD-FIVE 2 eXplosionも同様です。
あなたの指が弦に触れたその瞬間に、音がスピーカーから放たれる。この「遅延のなさ」が、演奏における圧倒的な安心感とインスピレーションを生みます。良い音は、プレイヤーの技術を向上させる。本機はそのことを証明してくれる「プロの機材」なのです。
詳細スペック&コンセプト
基本仕様
| 項目 | 詳細 |
| 製品名 | Ovaltone OD-FIVE 2 eXplosion |
| 開発コンセプト | CAE OD-100 サウンドの徹底追求 |
| 回路方式 | アナログ・ディスクリート(内部昇圧) |
| 電源 | 9VDC(センターマイナス) |
| 寸法 | 約120(W) x 98(D) x 56(H) mm |
| 重量 | 約450g |
| 製造国 | 日本(神奈川県鎌倉市) |
開発コンセプト:なぜ「OD-100」だったのか?
OD-100は、ボブ・ブラッドショーとジョン・サーという二人の天才が作り上げた、ギターアンプのひとつの到達点です。 かつてプロのラックシステムを支配していたあのサウンドを、ペダルボードという限られたスペースで再現すること。Ovaltoneの開発チームが挑んだのは、単なる「音色」のコピーではなく、実機が持つ「ダイナミクス」と「アンサンブル内での完璧な立ち位置」の再現でした。
実機オーナーが共通して語る「OD-100の魔法」とは、歪んでいてもコードの構成音がすべて聴こえるという、魔法のような周波数バランスにあります。OD-FIVE 2 eXplosionは、その「魔法」をデジタルに頼ることなく、アナログ回路の追い込みだけで実現した、執念の結晶なのです。
ジャンル別完全攻略セッティング集
究極のハイエンド・フュージョン(Michael Landauスタイル)
- Mode: LOW
- GAIN: 11時
- MIDDLE: 1時
- EDGE: 12時
- 解説: 実機のCH1、あるいはCH2のゲインを絞った状態の再現です。LOWモードによる広いダイナミクスを活かし、ピッキングの強弱だけでクリーンからクランチまでを掌握します。MIDDLEをわずかに盛ることで、シングルコイルでも歌うようなリードに必要な「太さ」を確保できます。
80's-90's LAスタジオ・ワーク(Steve Lukatherスタイル)
- Mode: HIGH
- GAIN: 2時
- MIDDLE: 3時
- EDGE: 2時
- 解説: OD-100の真骨頂である、磨き上げられたハイゲイン・サウンド。MIDDLEを深く押し込むことで、アンサンブルの「周波数の最大公約数」を攻略し、ボーカルを邪魔せずに壁のような音圧を形成します。EDGEを立てることで、レガート奏法時でもアタックが埋もれません。
モダン・ハードロック/ソロ(PT-100リードスタイル)
- Mode: ULTRA
- GAIN: 1時
- MIDDLE: 12時
- EDGE: 1時
- 解説: PT-100を彷彿とさせる、滑らかで圧倒的なサステインを重視した設定。ULTRAモードは歪みが深いものの、MIDDLEを上げすぎないことでモダンな「抜け」を維持します。速いパッセージでも音が団子にならず、一音一音が明瞭に響く分離感は、実機オーナーも唸るクオリティです。
現代的なJ-POP/J-ROCK(ボーカル・バッキング)
- Mode: LOW or HIGH
- GAIN: 10時〜12時
- MIDDLE: 11時
- EDGE: 10時
- 解説: あらゆる声質のボーカルに馴染ませるための「最大公約数」セッティング。MIDDLEを控えめにし、EDGEを落とすことで、歌い手の帯域(特にプレゼンス域)を完全に空けます。しかし、GAINの解像度が高いため、ギターとしての存在感は決して失われません。
知人プロが語る:OD-FIVE 2 eXplosionの頼もしさ
スタジオミュージシャン K氏の証言
「以前、私も本物のOD-100を所有していましたが、メンテナンスや運搬の苦労から手放してしまいました。サブでもう1台買うのも高価すぎるし...その後、多くのシミュレーターを試しましたが、どれも『何か』が足りなかった。しかし、このeXplosionを鳴らした瞬間、『これだ!』と叫びましたね。
今では、どんな現場にも必ずこのペダルを持っていきます。JC-120が、瞬時に一番好きな最強スタックアンプに化けてくれるんですから。スタジオ・ミュージシャンやAOR好きなギタリストは買い一択でしょ。」
ライバル機との徹底比較分析
vs Friedman BE-OD
ブラウン・サウンドの象徴であるFriedman BE-100をモチーフにした一台です。
- 音色の傾向: BE-ODは低域の迫力と高域のエッジが非常に強く、いわゆる「ドンシャリ」な傾向にあります。
- 決定的な違い: BE-ODはギター単体で弾いた時の快感は凄まじいですが、歌モノのアンサンブルでは低域がベースと被り、高域がボーカルの抜けを邪魔するケースがあります。対してOD-FIVE 2 eXplosionは、MIDDLEノブを軸にボーカルの帯域を空けつつギターを前に出す「最大公約数」の構築が可能です。
| 比較項目 | OD-FIVE 2 eXplosion | Friedman BE-OD |
| サウンドの核 | CAE OD-100 (透明感・分離感) | Friedman BE-100 (重厚なブラウン) |
| チャンネル数 | 完全独立2ch | 1ch |
| アンサンブル適性 | 非常に高い(ボーカルを活かす) | やや難しい(主張が激しい) |
| コントロールの緻密さ | MIDDLE/EDGEによる補正力が高い | プレゼンスとタイトさの調整が主 |
vs Bogner Ecstasy Blue / Red
Bogner Ecstasyのサウンドを完全アナログ回路で再現したライバル機です。
- 音色の傾向: Bognerらしい濃密な中域と、ややコンプレッションの効いた「シルキー」な質感が特徴です。
- 決定的な違い: Ecstasyペダルは「Bognerの音」を出すことには長けていますが、接続するアンプ(JC-120等)の影響を強く受けすぎる傾向があります。OD-FIVE 2 eXplosionは、3段階ゲインレンジスイッチと背面のNORMAL/BRIGHTスイッチにより、接続先が何であれ「OD-100の鳴り」へと環境を強制上書きする力が極めて強いです。
| 比較項目 | OD-FIVE 2 eXplosion | Bogner Ecstasy Blue/Red |
| 中域の質感 | 速く、乾いた、分離の良い中域 | 粘りがあり、密度感のある中域 |
| 操作性 | 4ノブ×2chで直感的 | 多くのミニスイッチがあり複雑 |
| レスポンス | 非常に速い(実機OD-100同様) | ややタメがある(ラグジュアリー) |
| アンプ適応力 | どんなアンプでも「OD-100」化する | 接続先のアンプ特性に左右されやすい |
vs Suhr Riot
ジョン・サー本人が手掛けたハイゲインペダルの傑作です。
- 音色の傾向: 非常にモダンで、歪みのキメが細かく、オーディオ的に優れた「綺麗な歪み」です。
- 決定的な違い: Riotは「完成された1つの音」を提示しますが、OD-FIVE 2 eXplosionはLEVEL/MIDDLE/EDGE/GAINという4つのパラメーターによって、プレイヤーが自ら「現場に合わせた最適解」を作り出す余地を残しています。特に、実機OD-100オーナーが求める「生々しいダイナミクス」においては、本機の方がよりアンプに近い空気感を持っています。
| 比較項目 | OD-FIVE 2 eXplosion | Suhr Riot Reloaded |
| 音の立ち上がり | 物理的な衝撃を感じる速さ | スムーズで整った立ち上がり |
| チャンネル構築 | A/Bで全く異なる役割を担える | 基本は1つの音色を使い分ける形 |
| 歪みの質 | 立体的で「アンプの風」を感じる | 平面的だが完璧に整理された歪み |
| ダイナミクス | 手元のボリュームへの反応が鋭い | 歪み量が一定に保たれる傾向 |
まとめ:食感としてのトーン:耳に残る「アルデンテ」な芯の正体
「アルデンテ」という言葉こそ、OD-FIVE 2 eXplosionの弾き心地を表現するのに最も相応しい言葉かもしれません。
表面は滑らかで美しく磨き上げられた歪みの質感を持ちながら、その芯には決して崩れない強固な「音のコシ」がしっかりと残っている。ゲインをどれほど深く設定しても、コードの分離感が失われないのは、この芯があるからに他なりません。
実機OD-100が持つ、あの噛み応えのあるピッキング・レスポンス。指先に伝わる適度な抵抗感と、弾き出した瞬間の爆発的なスピード感。この「アルデンテ」な絶妙な食感こそが、歌モノのアンサンブルにおいてボーカルを邪魔せず、かつギターの存在感を凛と立たせる「最大公約数」の正体なのです。
推奨度:
- ヴィンテージ〜モダン・ハイエンド愛好家: 100%
- スタジオ・ミュージシャン志向: 100%
- ピッキング・ニュアンス重視派: 95%
- OD-100のサウンドを追い求めている人: 200%



