オーバードライブ プリアンプ

LPD PEDALS「JMP79」レビュー:タイトでマッチョなマーシャルの覇気

LPD PEDALS JMP79 のイメージ画像

1979年。それは、マーシャルアンプの歴史において、神格化された特別な「当たり年」のひとつ。

「本当のマーシャルサウンドとは何か?」という問いに対し、世界中のトップギタリストやエンジニアが、正解として真っ先に名を挙げるのが、79年製のJMPです。

プレキシ時代の芳醇な倍音を維持しつつ、後のJCM800へと繋がる攻撃的なゲインを宿した、奇跡のクロスオーバー。その、空気を切り裂くような「鋭いバイト感」と、胸を突く「濃密な中域」は、後のハードロック黄金時代を決定づけました。LPD PEDALS JMP79は、その伝説の個体が持つ「マジックトーン」を、アナログ回路の極致によって現代に蘇らせた一台なのです。

アリゾナ州のビルダー、ローレンス・ペトロの手によって生み出されるLPD PEDALS。彼が追求したのは、安直な「マーシャルっぽい音」を作ることではありません。特定の個体、それも1979年製のJMP(Marshall 2203/2204)が持つ、独特の「骨まで噛みちぎるようなバイト感」と「豊かな倍音の層」を回路レベルで追い求めることでした。

JCMやJVMシリーズとはひと味もふた味も違う、このタイトでマッチョなマーシャルの覇気を思う存分に味わっていきましょう!

使用レビュー:ロングトーンでのプッシュ感が実機のそれ!

余計な味付けはいらない。ただ愛用のストラトやレスポールをダイレクトに突っ込み、弦を掻き鳴らす――それだけで、脳がクラクラするほど凄まじく気持ちが良い。JMP79が提供するのは、何も足さず、何も引かない、純度100%のシンプルなロックトーン

そして、「ロングトーンでのプッシュ感、これは実機そのものだ…!」
そう確信したのは、サステインが消え入る瞬間の、あの粘り強い「ひと押し」を感じた時でした。

多くのペダルが減衰とともにスカスカと痩せていく中で、JMP79は空気を掻き分けて熱気が押し出すような、リアルチューブらしいエネルギーを維持し続けます。

チョーキングで音を伸ばせば、フィードバックが心地よい倍音へと変化し、まるで背後にフルスタックの壁がそびえ立っているかのような錯覚に陥ります。歪みの量ではなく、音の「密度」が持続する。この圧倒的な音圧と、弾き手の感情に追従するダイナミクスこそが、ビルダーが1979年製の個体に懸けた執念の答え。一度このプッシュ感を体感すれば、離せなくなるはずです。

「真空管のバイト感」をアナログ回路で精緻に再現

JMP79の最大の特徴は、ピッキングの強弱に対する「食いつき」の良さです。真空管アンプのパワーセクションが悲鳴を上げる直前の、あの独特のコンプレッション感と粘り。これをデジタルに頼らず、厳選されたアナログ素子の組み合わせで再現しています。

弦を弾いた瞬間の立ち上がりの速さと、その直後にやってくるジューシーな飽和感。弾き手のニュアンスを一切スポイルしないこの「反応性」こそが、JMP79が本物である証です。

独自の「Preamp」と「Power」による2段階ゲイン構造

通常の歪みペダルが「Gain」一つで音作りを完結させるのに対し、JMP79は「Preamp」と「Master」のバランスによって歪みの質感を決定します。

Preampを上げればプリアンプチューブが飽和するエッジの効いた歪みが得られ、Master(および内部のトリマーや回路設計)との兼ね合いで、まるで大出力アンプのボリュームをフルアップした時のような「壁」のようなサウンドを作り出せます。この2軸のコントロールにより、クランチからハイゲインまで、解像度を保ったまま変化させることが可能です。

楽器の個性を殺さない「驚異的なクリアネス」

多くのプレキシ系ペダルは、ONにした瞬間にペダル側の個性が勝ってしまい、ギター本来の音が消えてしまうことがあります。しかしJMP79は違います。

ストラトキャスターの鈴鳴り、レスポールの太いミッドレンジ。それぞれのギターが持つ本来のポテンシャルを維持したまま、1979年製JMPのフィルターを通したようなサウンドへと昇華させます。ギターのボリュームを絞れば、鈴鳴りのような極上のクリーン・クランチへと滑らかに移行する様は圧巻です。

伝説の「1979年製」にフォーカスしたピンポイントな設計

なぜ1979年なのか? それは、JMPモデルが最も円熟味を増し、後のJCM800へと繋がる「攻撃的なゲイン」と「ヴィンテージの太さ」を両立していた奇跡的な年だからです。

LPD PEDALSはこの特定の年式のトーンスタックを徹底的に研究。中音域の押し出し感と、高域の痛くない「チリッ」とした成分を完璧なバランスで封じ込めました。

4バンドEQによる完璧なトーンシェイピング

Treble、Middle、Bass、Presenceの4バンドEQは、実機のアンプと同様の挙動を示します。特にMiddleノブの効きが秀逸で、カットすればモダンなドンシャリ・サウンドに、ブーストすればリードプレイに最適な歌うようなトーンが得られます。

Brightスイッチも完備しており、どんなアンプ(クリーン設定)に繋いでも、その環境に合わせて「マーシャルの鳴り」を補正できるため、スタジオやライブハウスの備え付けアンプに左右されない一貫したサウンドを提供します。

超低ノイズ・設計とスタジオクオリティのコンポーネント

ハイゲイン設定にしても、驚くほどノイズ発生が低く抑えられています。これは高品質なパーツ選定と、最短の信号経路を追求した内部設計の賜物です。

プロのレコーディング現場でもノイズゲートを最小限に抑えられるこの静寂性は、微細なタッチのニュアンスを記録したいギタリストにとって、これ以上ない武器となりますよね。

ハンドメイド・イン・アリゾナの信頼性

一台一台、ローレンス・ペトロ本人の厳しい監修のもとで製作されるメイド・イン・USA。堅牢なエンクロージャーに収められたその回路は、ツアーの過酷な環境にも耐えうる信頼性を誇ります。

「所有する喜び」を感じさせる美しい塗装と、実用性を追求したノブの配置。これは大量生産品では到達できない、ビルダーの執念が形になった「工芸品」レベルです。

伝説の骨太サウンドを受け継ぐ設計思想

1970年代後半、ロックの定義を塗り替えた「あの音」

1970年代、ジミー・ペイジやエドワード・ヴァン・ヘイレンらが鳴らしたサウンド。それは「歪み」の問題ではなく、空気を震わせる巨大なエネルギー体でした。特に1979年前後のJMP回路は、それまでのプレキシよりもゲインが高く、ハードロックや初期ヘヴィメタルの台頭を支えた象徴的なサウンドです。

LPD PEDALS JMP79は、この歴史的な変革期のトーンを、現代のペダルボードに落とし込むことを目的に開発されました。

「マスターボリューム付マーシャル」の革新を再現

1975年に登場したマスターボリューム付きの2203/2204モデルは、小音量でも深い歪みが得られる画期的なアンプでした。JMP79はこの「プリアンプで歪みを作り、パワーセクションで音色を整える」という挙動をペダルの中で再現しています。

これにより、自宅の小型アンプであっても、フルスタックのマーシャルが背後で鳴っているかのような錯覚を引き起こすのです。

詳細スペック&ビジュアルインプレッション

基本仕様

項目詳細
製品名LPD PEDALS JMP79
タイプオーバードライブ / プリアンプ
電源9V DC(センターマイナス)
消費電流約20mA
コントロールMaster, Preamp, Treble, Middle, Bass, Presence
製造国アメリカ(アリゾナ州)
参考価格¥36,000前後

機能美が宿るインダストリアル・デザイン

JMP79の外観は、質実剛健なアメリカン・プロダクトの象徴です。ワインレッドの筐体にゴールドの印字は、まさにマーシャルJMPサウンドを彷彿とさせ、足元に置くだけでギタリストの士気を高めてくれます。

6つのノブは操作性に優れ、適度な重みがあるため、演奏中の意図しないズレを防ぎます。LEDは高輝度で、屋外ステージでも視認性抜群です。

音響分析:帯域ごとのキャラクター

JMP79のトーンスタックは、実機のマーシャルを操作しているかのような錯覚に陥るほど、各ノブが音楽的な役割を担っています。

  • Bass(低域) タイトで重心の低い低域です。大型キャビネットが振動するような重量感がありつつも、速いパッセージでも音が滲まない驚異的なレスポンスを誇ります。
  • Middle(中域) このペダルの心臓部。1979年製JMP特有の「押し出しの強い中域」を司ります。2時以降に上げればリードで歌うような粘りが生まれ、削ればモダンなエッジが際立ちます。
  • Treble(高域) 音の輪郭を決定するセクション。耳を突き抜けるような鋭さがありながら、アナログ回路特有の温かみを含んでおり、不快な高周波ノイズとは無縁です。
  • Presence(超高域) 最終的な「空気感」の調整役です。アンプの回路終段で作用するように機能し、サウンドに「生々しさ」を注入します。プレゼンスを上げることで、音がスピーカーの前に飛び出してくるような立体感が生まれます。
  • Brightスイッチ 1970年代のマーシャルにおいて、入力インピーダンスやキャパシタの個体差で生じた「ブライト・チャンネル」の輝きを選択します。3ポジションを切り替えることで、ストラトのセンターポジションや、ダークな響きのハムバッカーに鮮烈な煌めきを与えたり、よりマイルドな質感に整えたりします。

ジャンル別完全攻略セッティング集

1970's スタジアム・ロック:伝統のブラウンサウンド

  • Preamp: 12時
  • Presence: 1時
  • Bright: 1
  • EQ: Bass 1時 / Mid 2時 / Treble 11時
  • 推奨楽曲: Led Zeppelin、Bad Company

    中域を強調し、ブライトスイッチを1ポジションにすることで、図太く腰の据わったドライブサウンドに。ピッキングの角度ひとつで、クリーンから咆哮までを操れるセッティングです。

1980's LAメタル:ハイゲイン・シュレッド

  • Preamp: 3時
  • Presence: 3時
  • Bright: 2
  • EQ: Bass 12時 / Mid 10時 / Treble 2時
  • 推奨楽曲: Van Halen、RATT、Dokken

    ブライトスイッチとプレゼンスを積極的に上げることで、コンプレッションの効いた攻撃的なトーンへ。速弾きでも音が潰れず、一音一音がダイヤモンドのような輝きを放ちます。

ネオ・ブルースロック:現代的クランチ

  • Preamp: 9時
  • Presence: 11時
  • Bright: 3
  • EQ: Bass 11時 / Mid 1時 / Treble 10時
  • 推奨楽曲: John Mayer(ロック寄りな楽曲)、Gary Clark Jr.

    ゲインを抑えめに設定し、ブライトスイッチを3にしてエッジを立たせることで、枯れた味わいの中に現代的な解像度を持たせたセッティング。ギター側のボリューム操作で「極上のクリーン」への移行が容易です。

90's オルタナティブ/グランジ:荒々しい壁

  • Preamp: 2時
  • Presence: 12時
  • Bright: 1
  • EQ: Bass 3時 / Mid 12時 / Treble 1時
  • 推奨楽曲: Alice In Chains、Pearl Jam

    低域をブーストし、あえてブライトさを抑えることで、重厚でダークな質感を演出。パワーコードを弾いた際の、腹に響くようなプッシュ感が最も強調される設定です。

プロが語る:LPD JMP79の使い所

スタジオミュージシャン S氏の証言

「現場にどのアンプがあるか分からない状況でも、JMP79があれば安心です。ジャズコーラス(JC-120)に繋いでも、瞬時に『真空管の鳴り』に変えてくれる。特に中域の密度が素晴らしく、多人数なバンドアンサンブルの中でもギターの音がしっかりと抜けてきます。」

ギター講師 T氏の思惑

「生徒に『本当のマーシャルサウンドとは何か』を教える時にこれを使いたいと思います。最近のデジタルプラグインも優秀ですが、JMP79が持つ『弾いた瞬間の手応え』は、アナログ回路でしか出せない質感ですね。」

ライバル機との徹底比較分析

項目LPD JMP79Xotic SL DriveJHS Charlie Brown
キャラクター79年製JMP(マスター付)1959 Plexi(Super Lead)JTM45(最初期)
EQ4バンドTONE+内部スイッチ3バンド
歪みの深さ中~高低~中低~中
解像度極めて高い標準的暖かい

JMP79は、より「パンチが求められる・タフなハードロック」への適応力が高く、かつ現代的なプレイアビリティを備えています。

まとめ:オープンだけど喰らいつくニュアンスは実機さながら!

蓋を外したかのように開放的でワイドレンジな鳴りを見せながら、一度弦を強く弾けば、真空管が悲鳴を上げるようなあの「バイト感」が即座に牙を剥く

このレスポンスの速さは、デジタルシミュレーターでは決して到達できない領域です。プレイヤーの意思を1ミリの遅滞もなくスピーカーへと伝え、ロングトーンでは実機さながらのプッシュ感で音を支え続ける。

プレーヤーとアンプを一本の太いパイプで繋ぎ直すような、濃密な演奏体験。1979年という黄金時代の咆哮は、この一台を通じて見事に甦ったのです。

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