
1990年代のグランジ・ムーブメントを象徴する、あの深く、瑞々しく、どこか退廃的なコーラスサウンド。
鬼才、カート・コバーンが愛し、世界中のギタリストを虜にした伝説の名機「Small Clone」。そのDNAを寸分違わず受け継ぎ、現代のニーズに合わせてダウンサイジングされたのが、このELECTRO-HARMONIX NEO CLONEです。
単純な「復刻版」にとどまらない、アナログ回路の温もりと、伝統的なバケツリレー素子(BBD)が生み出すダイナミックでノスタルジックなモジュレーションを、最小限のスペースで実現した「奇跡の結晶」なのです。
Small Cloneの音は好きだけど、ペダルボードのスペースはとことん節約したいギタリストにもってこいの1台です!
使用レビュー:透き通るアルペジオから、「グワングワン」まで
NEO CLONEの真骨頂は、その極端な二面性にあります。DEPTHスイッチを「下」に倒せば、まるで冷たい清流のような透明感。RATEを抑えめにすれば、煌びやかで透き通るようなクリーンが得られ、アンサンブルに洗練された奥行きを添えます。
一方でスイッチを「上」に跳ね上げた瞬間、世界は一変。BBD回路特有の太くダークなうねりが牙を剥き、ピッチが激しく波打つ「グワングワン」としたサイケデリックな狂乱へと突入します。
歪みエフェクターと絡めれば、地地響きのような重厚なモジュレーションへと進化。この「上品な揺らぎ」と「泥臭いエグさ」をスイッチ一つで往復できる瞬発力こそ、NEO CLONEが世代を超えて愛される理由です。
伝説のSmall Clone回路を完全に継承
NEO CLONEの最大のアイデンティティは、オリジナルのSmall Cloneと全く同じ高品質なBBD(Bucket Brigade Device)チップを採用している点にあります。デジタルシミュレーションでは決して再現できない、高域がわずかにロールオフしたマイルドな質感と、噛みごたえのある低域。
この「アナログならではの言葉では言い表せない美しさ」こそが、多くのプロフェッショナルがNEO CLONEをチョイスする最大の理由です。
迷いなき直感的な1ノブ・1スイッチ構成
複雑なパラメータは必要ありません。NEO CLONEにあるのは、揺れの速さを決める「RATE」ノブと、揺れの深さを切り替える「DEPTH」スイッチのみ。
この潔い設計が、演奏中の直感を妨げず、一瞬で「あの音」へとアクセスさせてくれます。ノブをどこに設定しても音楽的な響きを失わない、設計の妙が光ります。
現代のボード事情にマッチするナノ・サイズ
オリジナルモデルは、そのサウンドこそ至高でしたが、ボード上での占有面積がネックでした。NEO CLONEは、その巨大な魂をダイキャスト製ナノ・エンクロージャーに凝縮。
限られたスペースを有効活用しながら、音質には一切妥協しない。まさに現代のギタリストが求めていた形態と言えるでしょう。
アンサンブルに埋もれない圧倒的な存在感
安価なデジタルコーラスにありがちな「音が細くなる」「引っ込む」といった現象がNEO CLONEにはありません。エフェクトをオンにした瞬間、ギターの音が横に広がり、立体的な膜を作るような感覚。
特にクリーンサウンドにおける奥行き感は、他のコンパクトペダルを圧倒する「太さ」を持っています。
2段階のDepthスイッチがもたらす極端な変化
Depthスイッチを上に倒せば、深く、うねるようなサイケデリックな揺らぎへ。下に倒せば、12弦ギターのような煌びやかで繊細なシマー効果へ。
たった一つのスイッチで、楽曲の表情を劇的に変えることができます。この「極端さ」こそがエレクトロ・ハーモニックスらしい個性であり、クリエイティビティを刺激するポイントでもあります!
ニューヨークの混沌が生んだアナログ・コーラスの美学

BBD素子が紡ぐ、「生活感」や「体温」
NEO CLONEの心臓部には、アナログ遅延素子であるBBDが鎮座しています。電圧をバケツリレーのように次々と転送していく過程で生じる、わずかな信号の劣化。
それが、デジタルにはない「温かみ」や「音楽的な太さ」の正体です。NEO CLONEはこの古典的な手法を頑なに守り続けることで、冷たいデジタル空間には存在しない、ある種の生活感や体温を感じさせる揺らぎを作り出しています。
グランジ・ムーブメントから現代のインディーシーンへ
1970年代に誕生したこの回路は、90年代にカート・コバーンによって再定義されました。そして現在、そのサウンドはネオ・サイケデリアやシューゲイザー、ドリーム・ポップといったジャンルで再び熱い注目を浴びています。
流行が移り変わっても、NEO CLONEが奏でる「深く澄んだ、けれど少し影のある揺れ」は、常に時代が必要とするトーンであり続けています。
詳細スペック&ビジュアルインプレッション
基本仕様
| 項目 | 詳細 |
| 製品名 | ELECTRO-HARMONIX NEO CLONE |
| タイプ | アナログ・コーラス |
| 回路方式 | BBD素子によるアナログ設計 |
| コントロール | RATEノブ、DEPTHスイッチ |
| 入出力 | Input, Output (1/4インチモノラル) |
| 電源 | 9VDC(センターマイナス)/ 9V電池対応 |
| ブランド | アメリカ(ニューヨーク) |
機能美を極めたシャーシデザイン
堅牢なダイキャスト製の筐体は、ニューヨークのストリートを感じさせるタフな佇まい。ブランドロゴのフォントやカラーリングは、オリジナルの意匠を尊重しつつ、現代的な洗練を纏っています。
RATEノブは操作性に優れ、足元でも現在の設定が一目で確認可能。DEPTHスイッチのクリック感も確実で、ライブ演奏中の誤作動を防ぐ絶妙な硬さを持っています。
内部基板のレイアウトも非常に効率的で、長年の使用に耐えうる信頼性をしっかりと確保。
音響分析:1ノブが生み出す無限のグラデーション
RATEコントロールの挙動
- 7時〜10時(スロー): 水面を撫でるような緩やかな揺れ。コード弾きに透明感を与えます。
- 11時〜2時(ミディアム): アルペジオに最適な、標準的なコーラス効果。音が立体的に回転し始めます。
- 3時〜5時(ファスト): レスリースピーカーのような激しいヴィブラート的効果。オルガン的なサウンドアプローチに。
DEPTHスイッチの音色変化
- 下側(Low Depth): 原音の芯を残しつつ、高域に微細なコーラスを付加。クリーンカッティングや繊細なメロディラインに。
- 上側(High Depth): モジュレーションが深くかかり、ピッチが大きく揺らぎます。ダークで重厚な、まさに「スモールクローン」の真骨頂。他にはないアイデンティティーがここにあり!
ジャンル別完全攻略セッティング集
グランジ:90's シアトル・サウンド
- Rate: 10時
- Depth: 上側 (High)
- 推奨楽曲: Nirvana「Come As You Are」「Smells Like Teen Spirit」深く沈み込むような、あの不穏で美しい揺らぎ。歪みペダルの前段に繋ぐことで、より壁のような厚みのあるドライブサウンドが得られます。
ドリーム・ポップ / シューゲイザー:幻想的な残響
- Rate: 9時
- Depth: 下側 (Low)
- 推奨楽曲: Slowdive, Cocteau Twins スタイル深いリバーブやディレイと組み合わせることで、音の境界線が溶け出すような浮遊感を演出。あえてDepthを抑えることで、濁りのない透明な空間を構築します。
80's ニューウェーブ:煌びやかなクリーン
- Rate: 2時
- Depth: 下側 (Low)
- 推奨楽曲: The Police「Every Breath You Take」 スタイル速めの揺れを薄くかけることで、12弦ギターのような煌めきを付加。テレキャスターのブリッジピックアップと合わせれば、鋭くも華やかなトーンが完成します。
ジャズ / フュージョン:厚みのあるリード
- Rate: 8時
- Depth: 下側 (Low)
- 推奨楽曲: Mike Stern スタイルわずかな揺れを加えることで、単音ソロに太さと艶を与えます。コンプレッサーを併用すると、プロクオリティの洗練されたコーラストーンになります。
知人プロが語る:NEO CLONEという選択肢

スタジオミュージシャン S氏の証言
「現場でコーラスを求められた時、最終的にこれに戻ることが多いですね。多機能なデジタルエフェクターは便利ですが、NEO CLONEには『弾いていて気持ちいい』という根源的な魅力がある。
実は、アコースティックギターに薄くかけた時の、アナログ特有のシルキーな広がりは代えがたいものがあります。ミックスの中でも主張しすぎず、かといって存在感は消えない。絶妙なチューニングです」
ライバル機との徹底比較分析
| 項目 | NEO CLONE | BOSS CH-1 | MXR Analog Chorus |
| 価格 | リーズナブル | 標準 | 標準 |
| 音色傾向 | ダーク/ファット | 明るい/モダン | ウォーム/微調整可能 |
| 操作性 | 究極のシンプル | 多彩な調整 | 多彩な調整 |
| サイズ | ナノサイズ | 標準 | 標準 |
| キャラクター | 唯一無二の個性 | 汎用性の塊 | 優等生的なアナログ |
まとめ:脆さと儚さを「美しさ」へ昇華する響き
NEO CLONEが奏でる音には、他のペダルにはない「人間臭さ」が宿っています。
それは、BBD回路というアナログの心臓が刻む、どこか不器用で温度感のある拍動。
完璧に整えられた揺らぎではなく、時に音の輪郭が滲み、消え入りそうなほど繊細に震える。その「脆さ」こそが、聴き手の心の奥底にあるノスタルジーを激しく揺さぶります。沈み込むような深いデプスで奏でれば、一音一音がため息のように空間に溶け出し、切ないほどの儚さを湛えた芸術的なトーンへと変貌を遂げるでしょう。
ノイズさえも音楽の一部として抱きしめるような、この圧倒的に個性派なモジュレーション。それは、あなたの人生から溢れる感情を、最も純粋な形で世界に響かせるための、間違いない選択肢のひとつとなるでしょう!


