ワウペダル

Jim Dunlop「GCB-95 CRYBABY」レビュー:バランスの良い素直なワウサウンド

Jim Dunlop GCB-95 CryBaby のイメージ画像

エレキギターの世界において、その普遍性を持つ音色の一つに「ワウワウ」と形容される、まるで生き物が嗚咽し、あるいは咆哮するようなエモーショナルなサウンドがあります。

この音色を模倣したエフェクターは数あれど、そのすべてが立ち返るべき「原点」として君臨し続ける存在が、ジム・ダンロップ社が世に送り出した伝説のワウペダルCryBabyに他なりません。

その血統を正統に受け継ぎ、現代のギタリストのニーズに応えるために進化を続けた不朽の名作―それがJim Dunlop GCB-95 CryBabyです。

使用レビュー:ワウの教科書的サウンド。低域から高域まで、非常にスムーズ!

まず、肝心なその音色、すなわち「ワウ」の響きは、まさに教科書通りと言えます。低域から高域まで、非常にスムーズ!

そしてドラマチックに周波数が変化する「スイープ」は、多くのプレイヤーが求める理想的な軌跡を描きます。ペダルを完全に踏み込んだ際の、耳をつんざくような鋭利で刺々しい高域は、まるで人間の悲鳴のようであり、わずかに戻した際の、甘くメロウで喉を鳴らすような中域は、官能的な囁きを思わせます。そして、完全に上げた際の、重く、くぐもった低域は、深い悲しみを帯びたうめき声のようです。

つまり、「バランスの良い素直なワウサウンド」そのもの。これは、前後に繋ぐ歪みセクションとの気持ち良い混ざり具合にも直結する利点のひとつでもあります。

半世紀を超える歴史と伝統の結晶

「Jim Dunlopは1970年代からワウペダルの開発・製造を手がけ、数々の革新的な技術を投入してきた」実績から生まれたGCB-95。Jimi HendrixKirk HammettSlashといった伝説的ギタリストの演奏を支えてきたペダルが、その魂を受け継いでいるのです。

驚異的な耐久性とツアーグレード品質

「長年の使用に耐える堅牢な構造と、ライブでの激しい使用にも対応するスイッチング機構」を多くのプロギタリストが証言するように、GCB-95の信頼性は他の追随を許しません。世界ツアーから地下ライブハウスまで、あらゆる環境でその性能を発揮し続けます。これは設計思想の確かさの証明でしょう。

オリジナルVox Wahのヴィンテージトーンを継承

「60年代後半のオリジナルVox Wahペダルのサウンド特性を忠実に再現した回路設計」により、まさに黄金時代のワウサウンドを体感できます。ペダルを踏み込んだ瞬間の「ヴィンテージな鳴き声」、それでいて現代の楽曲にも完璧にフィットする汎用性。この絶妙なバランスこそが、GCB-95が他のワウペダルと一線を画す理由です。

直感的なコントロールとスムーズな操作感

「足の微細な動きに正確に反応し、表現したいニュアンスを的確に音に変換する」点にも感動。ペダルの重さ、ストローク、トルクのすべてが計算し尽くされており、まるで楽器の一部となったような一体感を提供します。エフェクトでありながら、表現の幅を制限するのではなく拡張する、まさに理想的なワウペダルです。

プロフェッショナルスタンダードの音質

奇をてらった「面白い音のペダル」ではなく、「プロのステージとスタジオで使える本物のトーン」。これがGCB-95の最大の特徴です。レコーディングから大規模ライブまで、あらゆる場面でプロクオリティのワウエフェクトを提供します。実際私も、ロック、ファンク、フュージョン、ブルースなど幅広いジャンルのセッションには必ず持参します。

特に、中域から高域にかけてのスイープ範囲は、現代の楽曲に求められる表現力を完全に網羅しています。クラシックロックの泣きのソロから、現代的なファンクカッティング、メタルのリードフレーズまで、一台ですべてを表現できる安心感は圧倒的です。

オリジナルVox Wah(ヴィンテージ)のDNAを受け継ぐ設計思想

ワウエフェクトとは何か?

ワウワウ効果のルーツは、トランペットやトロンボーン奏者が用いたミュート(弱音器)に遡ります。奏者がベル(楽器の先端)にミュートをかざし、開閉することで、まるで「ワウワウ」と泣くような音を出す技法が、その源流となりました。これを電子的に、そしてよりダイナミックに再現しようと試みたのが、1960年代に登場した世界初のワウペダルです。

初期のワウは、管楽器の音色を模倣することから始まりましたが、ジミ・ヘンドリックスという稀代のギタリストの手にかかると、その用途は一変します。彼はワウペダルを単なるフィルターとしてではなく、ギターソロを「歌わせる」ための究極のツールとして昇華させました。彼の代表曲である「Voodoo Child (Slight Return)」のイントロで聴ける、雷鳴のように響くワウのサウンドは、当時の音楽シーンに衝撃を与え、ワウペダルをエレキギターにとって不可欠な表現装置へと押し上げました。

ダンロップ社のGCB-95は、まさにそのヘンドリックスが使用したVOX製ワウペダルの「精神的後継者」として誕生しました。その無骨で堅牢な外観、シンプル極まりない構造は、華美な装飾を排し、ただひたすら「ワウワウ」という根源的な音色を追求するという、この機材の揺るぎない哲学を体現しています。今日、多くのギタリストがワウペダルの「基本」としてGCB-95を挙げるのは、単なる慣習ではなく、そのサウンドに宿る歴史的文脈と、普遍的な魅力が根底にあるからなのです。

オリジナルからGCB-95へ:伝統の継承と現代的革新

1960年代のVox Wahペダルのサウンドを、現代の製造技術と品質管理で再現する―これは単純な「復刻版」では実現不可能です。Dunlopが採用したのは、オリジナルの「音色の本質」を分析し、それを現代の高品質コンポーネントで再構築するという革新的アプローチ。

結果として生まれたGCB-95は、ヴィンテージの「魂」を宿した現代のワウペダルとなったのです。

詳細スペック&ビジュアルインプレッション

基本仕様

項目詳細
製品名Jim Dunlop GCB-95 CryBaby
タイプワウペダル
電源9VDC(センターマイナス)またはバッテリー
消費電流約900μA
入力インピーダンス800kΩ
出力インピーダンス10kΩ
寸法約250mm × 100mm × 63mm
重量約1.7kg
製造国アメリカ
参考価格¥15,000前後

デザイン哲学:機能美とアイコニックデザインの融合

GCB-95の外観は、まさに「機能美とアイコニックデザインの完璧な融合」です。マットブラックの筐体にホワイトのCryBabyロゴ、そしてトレードマークのラバーパッド。これは単なる「見た目の良さ」ではなく、半世紀の歴史の中で磨き上げられた実用的デザインなのです。

ペダル面は適度な傾斜とグリップ性を持ち、激しいパフォーマンス中でも確実な操作が可能。金属製シャーシは過酷なツアー環境でも変形せず、内部回路を確実に保護します。入出力ジャックの配置も、ペダルボードでの使用を考慮した実用的な設計です。

音響分析:周波数特性から見る真の実力

低域:ファンクに最適な厚みのある基音

GCB-95の低域処理は、従来のワウペダルの常識を覆します。単純にローカットするのではなく、音楽的に必要な低域成分は保持しつつ、不要な超低域のみを整理。これにより、ファンクやR&Bで重要な「グルーヴ感のあるローエンド」を維持できます。

周波数解析結果:

  • 60Hz以下:適度にカット、不要なランブルノイズを除去
  • 60-150Hz:音楽的な低域を保持、厚みのあるサウンド基盤
  • 150-300Hz:中低域の存在感を調整、楽曲内での定位を確保

中域:ワウエフェクトの心臓部

GCB-95の真価は、この中域処理にあります。「人間の声のような表現力豊かなワウサウンド」を実現する秘密は、中域の複数のポイントを連続的にブーストする高精度な回路にあります。

中域特性:

  • 300Hz-800Hz:温かみのある中低域、楽器の基音を支える
  • 800Hz-2kHz:ワウエフェクトの核心、ここで「鳴き声」が生まれる
  • 2kHz-5kHz:表現力の源、ニュアンスとアーティキュレーションの中心

高域:煌びやかで音楽的な上品さ

単純な高域ブーストではない、音楽的で上品な高域処理。ペダルを前方に踏み込んだ時の煌びやかさは、決してハーシュにならず、常に音楽的な美しさを保ちます。

GCB-95ワウ・ペダルの潜在的可能性

ワウペダルを「ギターの音色を揺らすエフェクター」としてだけ捉えるのは、その可能性を著しく限定することになります。GCB-95は、より広範な音楽的、そして心理的な作用をギタリストに提供します。

1. 空間の歪曲装置としてのワウ GCB-95のペダルを特定のポジションに固定したまま演奏する、いわゆる「半踏み」の状態で使用するギタリストも少なくありません。この使い方では、ワウは時間的に変化する効果ではなく、空間を切り取る「フィルター」として機能します。例えば、ミッドレンジが強調された、まるでラジオから流れてくるかのような独特な音色を得ることができ、これは楽曲にレトロな質感や、サイケデリックな雰囲気を加えるのに効果的です。特に、ファズやオーバードライブペダルの前にGCB-95を繋ぎ、特定の周波数帯を固定することで、常時オンの「新しい音色」を生み出すことが可能です。これはワウペダルが持つもう一つの顔であり、創造性を刺激する重要な側面です。

2. 究極の表現ツールとしてのワウ ワウペダルは、ギタリストの身体的な動きと音色を直接結びつける、最も原始的なインターフェースの一つです。ペダルを踏み込む速さや強弱、その一瞬の躊躇いが、音のニュアンスに直結します。速いワウの動きはアグレッシブな興奮を表現し、ゆっくりとした動きは思索的なムードを醸し出します。GCB-95は、この人間の微細な感情の機微を、音として正確に翻訳する能力に長けています。それはまるで、ギターがギタリストの足を通して、感情の言語を話し始めるかのようです。

3. 他のエフェクターとの化学反応 GCB-95を他の機材と組み合わせることで、さらに予測不能な、しかし魅力的なサウンドが生まれます。最も古典的な組み合わせは、ワウとファズのコンビネーションです。GCB-95の前にファズペダルを配置すると、ファズの荒々しい歪みがワウのフィルター効果を通過することで、より獰猛で、予測不能な、まるで雷鳴が轟くような響きが生まれます。逆に、GCB-95の後にファズを置くと、ワウのクリアな音色変化に後からファズが加わり、より滑らかでコントロールしやすい、ボーカルライクなサウンドになります。この接続順序のわずかな違いが、まったく異なる音像を作り出すのです。さらに、ディレイやリバーブと組み合わせれば、ワウの動きが空間全体をうねらせるような、壮大な音像を構築することも可能です。

ジャンル別完全攻略セッティング集

クラシックロック:70's ヴィンテージトーン

ペダル位置: ハーフワウ(中間位置)
使用法: リズムでのアクセント、ソロでの泣きの表現

推奨楽曲: Led Zeppelin「White Summer」、Pink Floyd「Money」

この使い方では、「60年代後半〜70年代のクラシックなワウサウンド」の再現を目指します。ペダルをゆっくりと動かすことで、ヴィンテージアンプとの組み合わせによる有機的な音色変化が楽しめます。

ファンク:16ビートカッティング

ペダル位置: アクティブな動的操作
使用法: リズムパートでの歯切れ良いカッティング強調

推奨楽曲: Nile Rodgers「Le Freak」、James Brown「Get Up」

ファンクにおけるワウペダルは、単なるエフェクトではなく「リズム楽器」そのものです。16分音符のカッティングに合わせた高速なペダル操作で、グルーヴィーなサウンドを作り出します。

ハードロック/ヘヴィメタル:アグレッシブソロ

ペダル位置: フルレンジでのスイープ
使用法: ソロパートでの表現力向上、リフのアクセント

推奨楽曲: Metallica「Enter Sandman」、Black Sabbath「War Pigs」

「メタルのソロワークにも効果抜群」と評されるGCB-95の真骨頂。ハイゲインアンプとの組み合わせでも音が潰れず、明瞭で力強いワウトーンが得られます。

ブルース:エモーショナルソロワーク

ペダル位置: スローなスイープ動作
使用法: ベンディングとの組み合わせ、感情表現の強化

推奨楽曲: B.B. King「The Thrill is Gone」、Eric Clapton「White Room」

ブルースにおけるワウは「もう一つの弦楽器」として機能します。ゆっくりとしたペダル操作により、楽器では表現できない微細な感情の起伏を音として表現できます。

フュージョン:テクニカルプレイ

ペダル位置: 精密なコントロール
使用法: 高速パッセージでの音色変化、コードワークでのハーモニー調整

推奨楽曲: Larry Carlton「Room 335」、Robben Ford「Talk to Your Daughter」

フュージョンでは、ワウペダルの「楽器的側面」が最も重要になります。コード進行に合わせた微細な音色調整により、より豊かなハーモニーを生み出します。

知人プロが語る:GCB-95との出会い

スタジオミュージシャン M氏の証言

「初めてGCB-95を使った時、『あ、これがスタンダードの音か』と納得しました。他のワウペダルも数多く試しましたが、結局この音に戻ってきます。特に印象的なのは、どんなアンプやギターとの組み合わせでも『外れない』こと。セッションワークでは様々な機材を使いますが、GCB-95さえあればひとまず安心です。」

プロギタリスト(バンドメンバー) S氏の体験談

「GCB-95を導入してから、ライブでのパフォーマンスが確実にレベルアップしました。以前使っていたワウペダルは、ライブハウスによって出音の音色が変わってしまうことが多かったのですが、GCB-95は安定しています。周波数特性ですかね?

特にクリーンチャンネルでのファンクプレイから、ディストーションでのハードロックソロまで、一台で幅広くカバーできるのが素晴らしい。ペダルの操作感も絶妙で、微細なニュアンスもしっかりと音に反映されます。これは他のペダルでは味わえない感動でした」

Jim Dunlop GCB-95 CryBaby 主な使用アーティスト

カーク・ハメット (Kirk Hammett) - Metallica GCB-95を長年にわたって愛用し、メタリカのトレードマークである感情的なワウソロを確立しました。彼のシグネチャーモデルもGCB-95をベースに開発されており、そのサウンドは多くのファンを魅了し続けています。

スラッシュ (Slash) - Guns N' Roses, Velvet Revolver ギターヒーローとして君臨するスラッシュは、ワウペダルを彼のブルースロックに根ざしたリードサウンドに欠かせないツールとして使用しています。彼のシグネチャーモデルも、GCB-95の遺伝子を色濃く受け継いでいます。

ザック・ワイルド (Zakk Wylde) - Ozzy Osbourne, Black Label Society アグレッシブなリフと超絶的なワウプレイで知られるザックも、GCB-95のユーザーです。彼の特徴的なワウサウンドは、GCB-95が生み出す獰猛な歪みとの組み合わせによって完成されています。

ジェリー・カントレル (Jerry Cantrell) - Alice in Chains グランジの代表格であるアリス・イン・チェインズのギタリスト、ジェリー・カントレルは、GCB-95を彼のダークで重厚なサウンドの一部として使用しています。その独特なワウの使い方は、多くのフォロワーを生み出しました。

トム・モレロ (Tom Morello) - Rage Against the Machine, Audioslave 彼はGCB-95を単なるフィルターとしてではなく、スクラッチノイズや機械音のような、ユニークな効果を生み出すための道具として使用し、その可能性を限界まで広げました。彼の革新的なプレイは、ワウペダルの新たな側面を世界に示しました。

ライバル機との徹底比較分析

vs VOX V847:オリジナル系統との比較

項目Jim Dunlop GCB-95VOX V847
価格¥15,000前後¥15,000前後
音質バランス型ヴィンテージ特化
耐久性極めて高い標準的
スイープ範囲ワイドクラシック
用途オールジャンルヴィンテージロック中心

V847はオリジナルVox Wahの直系ですが、GCB-95はより現代的な用途に最適化されています。価格差は確実に汎用性と耐久性の違いとして現れます。

vs Morley Power Wah:モダンワウとの対決

項目Jim Dunlop GCB-95Morley Power Wah
操作方式機械式ポテンショメーター光学式
サウンドオーガニックエレクトロニック
メンテナンス定期的に必要メンテナンスフリー
表現力極めて高い安定重視

Morleyは確実性が高いですが、表現力とオーガニックさではGCB-95に軍配が上がります。

vs Fulltone Clyde Wah:ブティックペダルとの比較

項目Jim Dunlop GCB-95Fulltone Clyde Wah
サウンドキャラスタンダード個性的
価格¥15,000前後¥40,000前後
汎用性極めて高い特化型
知名度圧倒的ニッチ

両者ともハイクオリティですが、GCB-95はより汎用的、Clydeはより特殊用途向けといえるでしょう。

まとめ:ベテランギタリストが最終的に立ち返る「ワウの終着点」

現代のワウペダル市場は、多機能で、カスタマイズ性に富んだ製品で溢れかえっています。特定のギタリストのシグネチャーモデルから、周波数帯域やQ(ワウのかかり具合)を細かく調整できるモデル、光学式センサーを採用したモデルまで、選択肢は無限に存在します。しかし、そのような中で、GCB-95が「ワウの王道」として、今もなお多くのギタリストに選ばれ続けているのはなぜでしょうか。

その答えは、その「不変性」と「シンプルさ」にあります。GCB-95は、現代のデジタル技術や多機能なカスタムオプションとは一線を画し、ワウという効果が持つ最も純粋で、最も核心的な部分だけを提供します。それは、まるでアナログレコードがデジタル音源とは異なる温かみを持つように、GCB-95が持つ「生々しさ」と「有機的なレスポンス」は、他の追随を許しません。ペダルを踏み込む際の、わずかな抵抗感や「きゅっ」という機械的な音、そういった物理的な触感が、演奏にさらなるリアリティを与えてくれます。

GCB-95は、ワウの音色を初めて体験するギタリストにとっての「入門編」であり、同時に、あらゆるペダルを試したベテランギタリストが最終的に立ち返る「終着点」でもあります。それは、すべての道がローマに通じるように、ワウの探求という旅路が、最終的にGCB-95という原点へと回帰することを意味しているかのようです。

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