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ARION「SCH-Z」レビュー:マイケル・ランドウも愛した3次元コーラス

ARION SCH-Z のイメージ画像

チープな筐体に秘められた伝説のサウンド=「マイケル・ランドウも愛した3次元コーラス

ギターエフェクターの世界には、「安かろう悪かろう」という定説を鮮やかに裏切る、稀有な機材が存在します。その筆頭に挙げられるのが、日本のブランドARION(アリオン)が1980年代に世に送り出したコーラスエフェクター、SCH-Z Stereo Chorusです。

チープなプラスチック製の筐体、大味なデザイン。一見すると、量産型の初心者向けペダルに見えるかもしれません。しかし、この簡素な外観からは想像もつかないほど、SCH-Zは深く、ウォームで、そして立体的な揺らぎをギタリストにもたらし、時を超えてカルト的な人気を獲得し続けています。

80年代から続くARIONの血統、数多くの名盤で密かに使われてきた隠れた名器のサウンド。

伝説的なSCH-1の後継モデルとして誕生したSCH-Zは、オリジナルの美点を受け継ぎながら、現代のニーズに応える進化を遂げています。ステレオ出力による極めて立体的な音像、滑らかに変化するモジュレーション、そして何より圧倒的なコストパフォーマンス―それがARION SCH-Zという類まれな存在なのです。

ARIONとSCH-Zの誕生:80年代エフェクター市場の光と影

ARIONブランドのルーツ

ARIONは、主に1980年代から90年代にかけて活動した日本のエフェクターブランドです。当時のエフェクター市場は、BOSSMaxonといった堅牢なダイキャスト筐体の製品が主流でしたが、ARIONは「手頃な価格で高品質なサウンドを提供する」という明確なコンセプトのもと、プラスチック製の筐体を採用することでコストダウンを図りました。

この戦略は、当時、高価なエフェクターになかなか手が出せなかったアマチュアミュージシャンや学生バンドにとって福音となりました。SCH-Zもまた、この戦略のアイコン的な存在として誕生しました。

時代が求めた「揺らぎ」の音像

SCH-Zが発売された1980年代は、空間系エフェクトが全盛期を迎えた時代です。ディレイやリバーブに加え、コーラスはシンセサイザーやエレキギターのサウンドに広がりと深みを与える不可欠な要素となりました。BOSSのCE-2がその金字塔を打ち立てる中、SCH-Zは、単なる「CE-2の廉価版」という位置づけに甘んじることなく、独自のサウンド・キャラクターを確立します。

それは、CE-2のようなクリアで規則正しい揺らぎとは一線を画す、「濃密で、ややウェット、そしてどこかアナログ的な暖かさ」を伴った揺らぎでした。このサウンドは、当時のニューウェーブ、ポストパンク、そしてJ-POP/ロックのサウンドメイキングにおいて、不可欠な要素となっていったのです。

使用レビュー:太く温かみがあり、エグみが最高にカッコイイ!

「ウォーム」と「クリア」の絶妙なバランス

SCH-Zのサウンドを形容する上で最も頻繁に用いられる言葉は、ウォーム(Warm)」です。しかし、このウォームさは、単に高域が削られたモコモコした音とは異なります。SCH-Zは、原音の明瞭さ(クリアさ)を保ちながら、コーラスの揺らぎ成分に適度な倍音とアナログ的な飽和感を加えることで、全体として暖かみと艶やかさを持つトーンを実現しています。

この特性は、特にクリーン〜クランチ程度のセッティングで顕著です。アルペジオやカッティングに使用すると、音が単に左右に広がるだけでなく、空間そのものが呼吸しているような、生きた音像を生み出します。

歪みとの相性:激変するテクスチャ

SCH-Zは、クリーンサウンドでの評価が高い一方で、ディストーションやオーバードライブとの組み合わせでも特異な魅力を発揮します。

通常、コーラスを歪みの前に接続すると、変調された信号が過剰に飽和し、音が濁りやすいという欠点があります。しかし、SCH-Zの持つ適度なコンプレッション感とミッドレンジの粘りは、歪みペダルと組み合わせた際にも、音の芯を保ちつつ、サウンドテクスチャを分厚く、メタリックに変化させる効果を持ちます。特に、ハイゲインセッティングで使用すると、ジェットエンジンのような強烈な揺らぎや、エグいスペーシー・トーンを生み出すことができ、シューゲイザーやエクスペリメンタル・ミュージックの領域で、そのポテンシャルが最大限に引き出されます。

伝説のSCH-1回路を継承した正統後継機

80年代に生産されたSCH-1は、当時から「隠れた名機」として一部のプロフェッショナルに愛用されてきました。ボブ・ブラッドショーがハイエンドラックシステムに組み込んだことでも知られ、マイケル・ランドーの愛用機としても有名です。

SCH-Zはこの伝説的な回路をベースに、現代的な改良を加えた正当な継承者。オリジナルの「太く温かみのある中域」「個性的でエグみのある音の揺らぎ」といった特性を完璧に受け継いでいます。

立体音響を生み出すステレオ出力機能

SCH-Zの真価は、当時は珍しかったステレオ出力にこそあります。OUT1(モノラル)とOUT2(ステレオ)を切り替えるスイッチを搭載し、2台のアンプを使用することで、驚くほど広大な音場を創出します。

この立体感は、単なる左右の音の分離ではありません。音が空間を漂い、聴き手を包み込むような三次元的広がり―それこそがSCH-Zの本質です。スタジオワークでは、ステレオトラックに録音することで、ミックス内でギターサウンドが見違えるような存在感を放ちます。

極めて音楽的なコーラスキャラクター

多くのコーラスペダルが陥る「不自然なピッチの揺れ」や「金属的な響き」とは無縁です。SCH-Zのモジュレーションは、まるでストリングスセクションが奏でるような分厚くて有機的な揺らぎ。

特筆すべきは、Toneコントロールによる音色調整の幅広さ。明るく煌びやかなシマーサウンドから、深く温かみのあるヴィンテージトーンまで、ツマミ一つで自在に操れます。この音楽性の高さが、SCH-Zを「使える」コーラスたらしめているのです。

伝説的なレスリースピーカー・エミュレーション

Rateを遅く、Depthを深く設定すると、SCH-Zは驚異的なレスリーキャビネット・サウンドへと変貌します。回転スピーカーの独特なうねり、空気感、そして温かみ―これらをペダル一台で再現できる稀有な性能。

オルガン系サウンドとの相性は言うまでもなく、ギターのクリーントーンに適用すれば、60年代サイケデリックロックの雰囲気を一瞬で作り出せます。この機能だけでも、SCH-Zを手に入れる価値があると断言できます。

驚異的なコストパフォーマンス

新品で¥6,000〜8,000という価格帯でありながら、数万円クラスのブティックペダルと肩を並べる音質。これがSCH-Zの最大の魅力かもしれません。

プロの現場でも十分に通用するサウンドクオリティを、この価格で提供できているのは、ARIONの長年にわたる製造ノウハウと、シンプルながら洗練された回路設計の賜物でしょう。初心者からプロフェッショナルまで、あらゆるプレイヤーに門戸を開く民主的な名機―それがSCH-Zなのです。

SCH-1からSCH-Zへ:進化の軌跡

オリジナルSCH-1が築いた伝説

1980年代に登場したSCH-1は、当初「安価な入門用ペダル」として市場に投入されました。しかし、その真価に気づいたプロフェッショナルたちが密かに愛用し始めたことで、徐々に「知る人ぞ知る名機」としての評価を確立していきます。

特に注目されたのは:

  • 他のコーラスにはない独特の温かみと厚み
  • 低速設定時の見事なレスリー・エミュレーション
  • 高速設定でも音痩せしない豊かな倍音特性
  • ステレオ出力による圧倒的な立体感

これらの特性が、ハイエンド機材を扱うエンジニアたちの心を捉えたのです。

SCH-Zへの昇華:守るべきもの、変えるべきもの

SCH-Zの開発において、ARIONが直面した課題は「伝統と革新のバランス」でした。SCH-1の美点を損なわず、現代的な改良を加える―この困難な命題に、ARIONは見事に応えています。

継承された要素:

  • 核となるアナログ回路設計
  • 3ノブによる直感的な操作性
  • 独特の中域の厚みと温かさ
  • ステレオ出力機能

進化した要素:

  • より堅牢な筐体構造
  • 安定性を増した電源回路
  • ノイズ特性の向上
  • 現代のパワーサプライとの互換性

結果として生まれたSCH-Zは、「SCH-1のDNAを持つ、新たなスタンダード」となったのです。

詳細スペック&ビジュアルインプレッション

基本仕様

項目詳細
製品名ARION SCH-Z Stereo Chorus
タイプステレオコーラス
電源DC 9V(センターマイナス)または9V電池
消費電流約12mA
入力インピーダンス470kΩ
出力インピーダンス10kΩ以上
ノイズレベル-90dB(JIS-A)
寸法約75mm × 130mm × 53mm
重量約240g(電池含まず)
製造国中国(ARIONブランド)
当時新品価格/現在中古価格¥6,000〜8,000/¥8,000〜20,000前後

デザイン哲学:実用性が生み出す美学

SCH-Zの外観は、まさに「機能が形を決める」デザイン哲学。ブラックを基調としたシンプルな筐体、視認性の高いコントロール配置、確実なフィーリングのフットスイッチ―すべてが実用性を追求した結果として美しい。

3つのノブは適度な間隔で配置され、ライブ中の素早い調整も容易。ステレオ/モノラル切替スイッチは誤操作を防ぐ位置に配され、LEDインジケーターは暗いステージでも視認可能な明るさを確保しています。

質感はチープなプラスチック筐体ながら、適度な厚みと補強リブにより、実用上十分な耐久性を実現。軽量でありながらも、意外にもペダルボード上で安定感があります。

音響分析:周波数特性から見る真の実力

Rate(スピード):揺らぎの芸術

RateコントロールはLFO(低周波発振器)の速度を調整し、モジュレーションの周期を決定します。SCH-Zの特徴は、その可変範囲の広さと、各設定における音楽的な質感です。

最小設定(スローコーラス):

  • 周期:約0.3Hz〜0.5Hz
  • 効果:ゆったりとした波のような揺らぎ
  • 用途:バラード、クリーンアルペジオ、レスリー・エミュレーション

中間設定(スタンダードコーラス):

  • 周期:約2Hz〜4Hz
  • 効果:クラシックなコーラスサウンド
  • 用途:カッティング、リズムギター、80年代サウンド

最大設定(ファストコーラス):

  • 周期:約7Hz〜10Hz
  • 効果:シマー効果、ヴァイブラート的な質感
  • 用途:リードトーン、特殊効果、サイケデリックサウンド

重要なのは、どの設定でも音痩せが最小限に抑えられている点。高速設定でも楽器本来の存在感を失わず、むしろ倍音が豊かになる感覚すらあります。

Depth(深さ):モジュレーションの振幅制御

Depthコントロールは、ピッチモジュレーションの振幅を調整します。SCH-Zの優れた点は、深い設定でも不自然さがない、極めて音楽的なモジュレーション特性です。

最小設定(サブトルコーラス):

  • ピッチ変動:±3セント程度
  • 効果:ほのかな厚み、デチューン感
  • 用途:自然な音の広がり、ダブリング効果

中間設定(クラシックコーラス):

  • ピッチ変動:±10セント程度
  • 効果:明確なコーラス効果、立体感
  • 用途:標準的なコーラスサウンド全般

最大設定(ディープコーラス):

  • ピッチ変動:±25セント程度
  • 効果:劇的な揺らぎ、ヴァイブラート的効果
  • 用途:特殊効果、レスリー・エミュレーション、サイケデリック

Depthを深くしても、音の芯が保たれるのがSCH-Zの美点。これは回路設計における絶妙なバランス調整の成果でしょう。

Tone(音色):周波数特性の魔術師

ToneコントロールはSCH-Zの個性を決定づける重要な要素です。単純なハイカット/ハイブーストではなく、中域を含む複雑な周波数特性の変化をもたらします。

最小設定(ダークトーン):

  • 5kHz以上:-6dB程度のカット
  • 1kHz〜3kHz:やや強調
  • 効果:温かく太い、ヴィンテージライクなサウンド
  • 用途:ジャズ、ブルース、温かみのあるクリーントーン

中間設定(ナチュラルトーン):

  • 全帯域:比較的フラット
  • 効果:楽器本来の音色を保持
  • 用途:オールラウンド、楽器の個性を活かす

最大設定(ブライトトーン):

  • 3kHz〜8kHz:+4dB程度のブースト
  • 効果:煌びやかでクリアな現代的サウンド
  • 用途:カッティング、ファンク、クリスタルクリーン

注目すべきは、どの設定でも「耳に痛い」高域にならない点。これは周波数特性が音楽的に調整されている証拠です。

ジャンル別完全攻略セッティング集

クリーンアルペジオ:80年代クリスタルトーン

セッティング:

  • Rate: 10時
  • Depth: 11時
  • Tone: 2時
  • Mode: STEREO

推奨楽曲: The Police「Every Breath You Take」、U2「With or Without You」

この設定では、80年代を象徴する透明感あふれるクリーンサウンドを再現します。適度なコーラス効果が音に広がりを与え、アルペジオの一音一音が空間に漂うような感覚を生み出します。ステレオ出力を活用することで、左右に広がる立体的な音像が完成します。

ファンクカッティング:グルーヴを生むリズム

セッティング:

  • Rate: 12時
  • Depth: 10時
  • Tone: 1時
  • Mode: DIRECT(モノラル)

推奨楽曲: Nile Rodgers「Le Freak」、Jamiroquai「Virtual Insanity」

ファンクギターに求められるのは、タイトでありながら艶やかなトーン。控えめなDepthで音の芯を保ちつつ、適度なRateでグルーヴ感を演出します。Toneを明るめに設定することで、カッティングのアタック感が際立ちます。

バラード:情感豊かなクリーントーン

セッティング:

  • Rate: 9時
  • Depth: 1時
  • Tone: 11時
  • Mode: STEREO

推奨楽曲: Eric Clapton「Wonderful Tonight」、Bryan Adams「Heaven」

スローなRateと深いDepthで、まるで弦が泣いているような情感を表現します。Toneを中間に設定することで、温かみと明瞭さのバランスが取れた、歌うようなトーンが得られます。バラードのソロやアルペジオに最適です。

サイケデリック:60年代タイムトリップ

セッティング:

  • Rate: 3時
  • Depth: 3時
  • Tone: 12時
  • Mode: STEREO

推奨楽曲: Pink Floyd「Breathe」、The Beatles「Lucy in the Sky with Diamonds」

最大設定でSCH-Zのサイケデリックな一面が開花します。速いRateと深いDepthで、現実と幻想の境界が曖昧になるような音響体験。ステレオ出力では、音が万華鏡のように回転する感覚すら得られます。

レスリースピーカー・エミュレーション:回転する音場

セッティング:

  • Rate: 8時
  • Depth: 2時
  • Tone: 10時
  • Mode: STEREO

推奨楽曲: Cream「Badge」、The Allman Brothers Band「Whipping Post」

SCH-Zの隠れた名機能がこのレスリー・エミュレーション。極端に遅いRateと深いDepthで、まるでレスリーキャビネットの前にいるような回転感を創出します。Toneを暗めに設定することで、よりオーガンライクな質感になります。

モダンポップ:現代的シマーサウンド

セッティング:

  • Rate: 1時
  • Depth: 11時
  • Tone: 2時
  • Mode: STEREO

推奨楽曲: John Mayer「Gravity」、Ed Sheeran「Thinking Out Loud」

現代ポップミュージックに求められる、煌びやかでクリアなサウンド。やや速めのRateで動きを出しつつ、控えめなDepthで自然さを保ちます。明るいTone設定で、現代的なプロダクションにマッチするトーンが完成します。

プロが語る:SCH-Zとの出会い

セッションギタリスト K氏の証言

「ARIONのコーラスは学生時代から知っていましたが、正直『安物』というイメージが強かった。でも、ある日スタジオで試す機会があって…その瞬間、認識が180度変わりました。

『この価格でこの音質?』というのが率直な第一印象。特に驚いたのは、ステレオ出力時の音の立体感です。2台のアンプから出る音が、まるでホールで鳴っているような空間的広がりを持っていました。

それ以来、セッションの持ち込み機材リストに必ずSCH-Zを加えています。クライアントから『もっと音を広げて』とリクエストされた時、SCH-Zをオンにするだけで完璧に対応できる。この『即戦力感』は、プロの現場では何よりも重要なんです。あと、他人と被らないのも優越感!笑」

ARION SCH-Z 主な使用アーティスト

アーティスト名備考・使用音源の傾向
Michael Landauアメリカのトップスタジオミュージシャン。彼の使用がSCH-1/SCH-Zの評価を一気に高め、「幻の名機」として認知されるきっかけとなった。彼の使用は初期はSCH-1だが、SCH-Zも後期に使用している。
e-ZUKAGRANRODEOのギタリスト。モディファイ品を含め、そのサウンドを愛用していることが知られている。
Johnny MarrThe Smithsのギタリスト。彼のきらびやかで空間的なアルペジオサウンドの一部に、SCH-Zのコーラスが貢献しているとされる。
Jonny GreenwoodRadioheadのギタリスト。彼の実験的で広大なサウンドスケープを構築する機材の一つとして挙げられることがある。
The EdgeU2のギタリスト。ディレイと並び、彼のトレードマークである空間的なサウンドにアナログコーラスは不可欠であり、SCH-Z系のモデルが使用機材として語られることが多い。
SUGIZOLUNA SEAのギタリスト。空間的なサウンドメイクに重点を置いており、SCH-Zのウェットで濃厚な揺らぎを愛用していたことで知られる。
KenL'Arc〜en〜Cielのギタリスト。クリーン・トーンでのコーラス使用が特徴的で、SCH-Zが彼のギターサウンドを彩った時期がある。
Bob Bradshaw伝説的なカスタムラックシステムビルダー。彼が製作する数百万円クラスのハイエンドラックシステムに、ARIONのコーラスを組み込んでいたことは有名です。「音質とコストのバランスが最高」と評し、多くのトップアーティストのシステムに採用しました。

ライバル機との徹底比較分析

vs BOSS CE-5 Chorus Ensemble:定番との対決

項目ARION SCH-ZBOSS CE-5
価格¥8,000〜20,000前後¥19,000前後
音質キャラクター温かく太いクリアで現代的
コントロール3ノブ(シンプル)5ノブ(詳細)
ステレオ機能ありあり
用途ヴィンテージ志向オールラウンド

BOSS CE-5は多機能で現代的なサウンドが魅力ですが、SCH-Zは「シンプルさ」と「ヴィンテージな温かみ」で差別化されています。価格差も考慮すれば、初心者やヴィンテージサウンド志向のプレイヤーにはSCH-Zが有利でしょう。

vs Electro-Harmonix Small Clone:ヴィンテージ対決

項目ARION SCH-ZEHX Small Clone
音質温かく立体的独特で個性的
操作性3ノブ1ノブ+スイッチ
ステレオありなし
価格¥8,000〜20,000¥15,000前後

Small Cloneは「Nirvanaのサウンド」として有名ですが、操作性と汎用性ではSCH-Zが優位。ステレオ機能の有無も大きな差別化ポイントです。

vs MXR M234 Analog Chorus:アナログ対決

項目ARION SCH-ZMXR M234
回路アナログBBDアナログBBD
サウンド太く温かいクリアでモダン
筐体プラスチック金属
価格¥8,000〜20,000¥20,000前後

両者ともアナログBBD回路を使用していますが、音質傾向が異なります。MXR M234はよりクリアで現代的、SCH-Zはヴィンテージで温かい。好みとバジェットで選択すべきでしょう。

購入前のチェック項目

中古市場での価値

現在プレミア価格(¥8,000〜20,000前後)で取引されています。将来的に同様の価値を上回る持つ可能性があります。

購入のタイミング:

  • 新品が入手可能な今がチャンス
  • 将来的な価値上昇も期待できる
  • コレクターアイテムとしての側面も

モディファイ(改造)の可能性

EWS(Effector Worship System)など、専門業者によるモディファイサービスが存在します。トゥルーバイパス化やヴァイブモードの追加など、さらなる可能性を引き出せます。

主なモディファイ内容:

  • 3PDTトゥルーバイパススイッチへの交換
  • トーン回路の改良
  • コーラス/ヴァイブモード切替機能の追加
  • 高輝度LEDインジケーターへの交換

ギターとの相性

相性が良いギター:

  • ストラトキャスター系(シングルコイル)
  • テレキャスター
  • セミアコースティック
  • ジャズマスター/ジャガー

やや注意が必要なギター:

  • アクティブピックアップ搭載機
  • ハイゲイン志向のハムバッカー

シングルコイルギターとの相性は抜群ですが、ハムバッカーでも十分使用可能です。むしろ、ハムバッカーの太さとコーラスの広がりが融合し、独特の質感を生み出します。

まとめ:SCH-Zがもたらす音楽表現の拡張

ARION SCH-Z ステレオ・コーラスは、その外見からは想像もつかないほどの「技術的な妙」と「音響的な深み」を内包した、エフェクター史における真の傑作です。

プラスチックの筐体は、廉価な機材というイメージを与えましたが、その内部に秘められた巧みなBBD回路設計と戦略的なステレオ出力は、当時のハイエンド機にも劣らない、あるいはそれ以上の広大でウォームなコーラスサウンドを実現しました。

SCH-Zは、単なるエフェクターではなく、「名機は必ずしも高価ではない」という哲学を体現する、文化的なアイコンでもあります。それは、モディファイを通じてギタリストと共に進化し、多くの著名なアーティストのサウンドを彩り、そして現代に至るまでクローンモデルのインスピレーションを与え続けています。

もし、あなたが「立体感があり、ウェットで、そしてどこかノスタルジックな暖かさ」を持つコーラスサウンドを求めているなら、SCH-Zを探し求める旅は、決して無駄にはならないでしょう。それは、過去の遺産を探し求める旅であると同時に、あなたのサウンド・アイデンティティを深く掘り下げる旅となるはずです。

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