
「これが、一度味わうとクセになる『究極の物理現象』」
1960年代から70年代にかけて、数々の名盤を支えた「テープエコー」。あの、物理的なテープが回転し、磁気ヘッドと摩擦を起こすことで生まれる「浮遊感」と「飽和感」を、最先端のDSPチップの中で完璧に、そして立体的に再現!
かつて、エコープレックス(Echoplex)やローランドのスペースエコー(Space Echo)といった巨大な実機が持っていた、あの予測不能な「美しき不完全さ」。STRYMONはそれを、El Capistanの中に閉じ込めるだけでなく、現代のプレイヤーが必要とする利便性を「V2」として極限まで高めて昇華させました。
国内外のプロのボードにも組み込まれていることが多い、このテープエコーマシン『STRYMON El Capistan V2』の本領を余すところなく解剖していきましょう。
使用レビュー:「良い雰囲気」を纏うには、コレしかない
「良い雰囲気」を纏うには、コレしかない。 テクニックや機材構成を語る前に、結局のところ、聴き手の心を掴むのはその曲が持つ「空気感」であり、STRYMON El Capistan V2はまさにその雰囲気こそ、曲やフレーズの印象を決定づける最重要項目であることを証明してくれるペダルです。
スイッチを入れた瞬間、デジタルな無機質さは消え去り、そこにはヴィンテージテープが回る「温度」と「湿り気」が宿ります。リピートが重なるたびにわずかに風化し、滲んでいく残響。Wow & Flutterが生み出す、時空が歪むような有機的な揺らぎ。これらが混ざり合った時、ディレイを超えた「物語」が始まります。
V2で独立したSpringノブを回せば、さらに深い奥行きが加わり、演奏は一瞬で映画のワンシーンのような情感を帯びます。正解のない「心地よさ」を、確信へと変えてくれる唯一無二の装置です。
「dTape」テクノロジーによる驚異の物理シミュレーション
El Capistanの心臓部は、STRYMON独自の「dTapeテクノロジー」にあります。これは単に「テープっぽい音」をシミュレートしたものではありません。テープの劣化、モーターの回転ムラ、磁気ヘッドの汚れ、さらにはテープの繋ぎ目(スプライス)によるクリック音までもが、アルゴリズムによってリアルタイムで計算されています。
デジタルでありながら、そこにあるのは紛れもない「アナログの挙動」。弾き手のタッチに反応して変化する残響は、もはや一つの楽器と言っても過言ではありません。
3つのテープマシン・モードが描く多彩な風景
トグルスイッチ一つで、3つの異なるテープマシン・タイプを切り替えられます。
- Fixed(固定ヘッドモード): テープスピードを変化させて遅延時間を調整。最も伝統的なエコープレックス的な挙動です。
- Multi(複数ヘッドモード): 2つの再生ヘッドを同時に使用。リズミカルでパーカッシブな、スペースエコー特有の重層的なディレイを生み出します。
- Single(移動ヘッドモード): テープスピードを固定し、スライドするヘッドの位置で時間を調整。より安定した、かつエッジの効いたエコーが得られます。
V2で搭載された独立した「SPRING」ノブの魔法
V1では隠しコマンド的な扱いだったスプリングリバーブが、V2では独立した専用ノブとして表面に配置されました。
テープエコーとスプリングリバーブ。この「黄金の組み合わせ」が、直感的にコントロールできるようになった意味は大きいです。ディレイ成分にのみリバーブを深くかけるといった繊細な調整が可能になり、音の奥行きが異次元のレベルに達しました。
「WOW & FLUTTER」がもたらす唯一無二の揺らぎ
多くのディレイペダルの「Modulation」ノブが単純なLFOによるピッチ変化なのに対し、El CapistanのWow & Flutterは違います。劣化したテープ特有の不規則な速度変化を再現しており、これを上げていくと、音が溶け合うような、ノスタルジックでサイケデリックな質感が生まれます。
全てを司る「TRS MIDI」とUSB-Cの搭載
V2の大きな進化点として、フルMIDI機能への対応があります。
300ものプリセット保存が可能になり、ライブ中に複数の設定を瞬時に呼び出すことができます。また、USB-C端子の搭載により、PCからのファームウェアアップデートやエディットも容易になりました。ヴィンテージなサウンドを、最新のデジタル環境で完璧に制御できる。これこそが現代のスタンダードです。
強力なサウンドシェイピング:隠れたセカンダリ機能
ノブを押し込みながら回すことでアクセスできるセカンダリ機能(隠しパラメータ)が、音作りの幅を極限まで広げます。
- Tape Age: テープの鮮度を調整。上げれば高域が減衰し、ダークでスモーキーなトーンへ。
- Low End Contour: 低域の削り具合を調整し、ミックス内での残響の立ち位置をコントロール。
- Wow & Flutter: 前述の通り、機械的な不安定さを付加。
高品位なアナログ・フロントエンド
STRYMONのこだわりは内部回路にも及びます。入力段にはお得意のJFETプリアンプを採用。これにより、エフェクトをオンにした瞬間にギターのトーンがリッチになり、アナログ特有のダイナミックなレスポンスが得られます。楽器の繊細なニュアンスを殺さず、逆に引き立てる設計です。
ヴィンテージのDNAをデジタルで解明
磁気テープという「生き物」への敬意
1950年代から続くテープエコーの歴史。それは「ノイズや劣化との戦い」でもありました。しかし、現代の耳で聴くと、その欠点こそが「音楽的な温かみ」として愛されています。
El Capistanは、その「欠点」を徹底的に分析しました。テープが磁気ヘッドを擦る際の摩擦熱、モーターがわずかに回転を速める瞬間。それら全ての偶発的な要素を計算式に組み込むことで、冷たいデジタル信号に「体温」を宿らせたのです。
リピートの「消失」ではなく「美しい風化」
デジタルディレイの多くは、音が繰り返されるたびに単に音量が下がるだけですが、El Capistanのリピートは「美しく風化」していきます。
繰り返されるたびに高域が落ち、わずかな歪みが加わり、やがて背景のノイズの中に溶けて消えていく。この消え際の美しさこそが、多くのプロギタリストがこのペダルを「外せない」と断言する理由です。
詳細スペック&ビジュアルインプレッション
基本仕様
| 項目 | 詳細 |
| 製品名 | STRYMON El Capistan V2 |
| タイプ | dTape エコー / デジタル・ディレイ |
| 電源 | 9V DC(センターマイナス)/ 最低300mA |
| 寸法 | 102mm (W) x 114mm (D) x 44mm (H) |
| 製造国 | アメリカ(カリフォルニア州) |
| 入出力 | ステレオ入出力、MIDI TRS、USB-C、EXP端子 |
| 参考価格 | ¥63,000前後 |
筐体に宿るプロフェッショナリズム
El Capistan V2の外観は、鈍く光るミッドナイトグレーのアルマイト処理が施され、無骨ながらも洗練された高級感を放っています。
ノブのトルク感は絶妙で、演奏中に足で動かしても正確に反応します。V2から搭載された専用の「SPRING」ノブは、文字通りこのペダルを「ディレイ+リバーブ」の複合機へと昇華させました。
LEDは非常に高輝度で、屋外ステージでも視認性抜群。フットスイッチの踏み心地は非常に滑らかで、スイッチングノイズは皆無です。
ジャンル別完全攻略セッティング集
アンビエント・シューゲイザー:漆黒の宇宙空間
設定:
- Time: 2時
- Repeats: 3時(発振直前)
- Mix: 12時
- Wow & Flutter: 4時
- Tape Age: 3時
- Spring: 12時
- Mode: Multi / Head 1&3
この設定では、深いリバーブと劣化したテープの揺らぎが混ざり合い、霧の中を彷徨うような幻想的なトーンが得られます。音が重なり合うたびに倍音が増幅され、シューゲイザー的な音の壁を構築するのに最適です。
60s ロカビリー:スラップバック・エコー
設定:
- Time: 8時(極短)
- Repeats: 9時(1〜2回)
- Mix: 2時
- Tape Age: 10時
- Spring: 9時
- Mode: Fixed / Head A
50年代後半から60年代のギタートーンを象徴するスラップバック。El CapistanのJFETプリアンプによる太い音が、シングルコイルのピックアップと組み合わさることで、圧倒的な「いなせな」質感を生み出します。
プログレッシブ・ロック:リズミカルな多重構造
設定:
- Time: 曲のBPMに同期(タップテンポ使用)
- Repeats: 11時
- Mix: 10時
- Wow & Flutter: 9時
- Mode: Multi / Head 1&2
ピンク・フロイドのような、付点8分音符を用いたリズミカルなエコー。複数のヘッドが作り出す複雑なディレイパターンは、単一のヘッドでは不可能な立体的なグルーヴを演出します。
ライバル機との徹底比較分析
vs BOSS RE-202 Space Echo
| 項目 | STRYMON El Capistan V2 | BOSS RE-202 |
| サイズ | コンパクトでボードに優しい | 大型で存在感がある |
| 音色の幅 | テープエコー全般のシミュレート | Space Echo特有の再現に特化 |
| 操作性 | 5ノブ+隠し機能で深い追い込み | 直感的なマルチノブ構成 |
| リバーブ | 1種類の高品質スプリング | 複数タイプのリバーブ |
RE-202が「伝説の銘機の完コピ」を目指しているのに対し、El Capistanは「テープエコーという概念の最高傑作」を目指しています。汎用性と透明感ではSTRYMONに軍配が上がります。
vs Universal Audio UAFX Starlight
| 項目 | STRYMON El Capistan V2 | UAFX Starlight |
| テープ再現度 | 有機的な「揺らぎ」が秀逸 | 音の「太さ」と「存在感」が強力 |
| 機能性 | MIDI対応、スプリング独立 | 3つのエフェクトエンジン搭載 |
| 重量 | 標準的 | 非常に重厚 |
Starlightはアナログディレイやデジタルディレイも搭載した多機能機ですが、El Capistanは「テープエコーへの執着」において、より深いカスタマイズ(Tape Ageなど)が可能です。
知人プロが語る:El Capistan V2導入の理由
「これまで本物のテープエコーを何台も所有してきましたが、メンテナンスの大変さに辟易していました。El Capistan V2を初めて鳴らした時、テープが物理的に回っている音が『聴こえた』気がしたんです。
デジタル特有の耳に刺さる感じが一切なく、ミックスの中でギターを自然に後ろへ下げつつ、存在感を消さない。これこそがプロの雰囲気です。」(セッションギタリスト S氏)
STRYMON El Capistan:世界のトップアーティスト愛用者リスト
| アーティスト名 | バンド / 活動 |
| Noel Gallagher | Oasis / High Flying Birds |
| Joe Satriani | ソロ・ギタリスト |
| Dan Auerbach | The Black Keys |
| Billy Corgan | The Smashing Pumpkins |
| Jeff Beck | ソロ・ギタリスト |
| Chris Shiflett | Foo Fighters |
| Justin Vernon | Bon Iver |
| Nels Cline | Wilco |
| Joe Perry | Aerosmith |
| Devin Townsend | ソロ / Devin Townsend Project |
| Wes Borland | Limp Bizkit |
| Four Tet | 音楽プロデューサー / DJ |
| Ariel Posen | ソロ・ギタリスト |
まとめ:1音やフレーズに、深い意味をもたせるペダル
「なぜ、あの人のギターは1音だけで涙を誘うのか?」 その答えのひとつが、El Capistan V2にあります。
このペダルは、単に残響を付け加えるだけのマシンではありません。弾いた瞬間のアタック、消えゆく瞬間の揺らぎ、そして磁気テープが摩耗していくような切ない「風化」の過程を、あなたのフレーズに宿らせます。
ただのドレミが、このペダルを通るだけで、数十年の歳月を経た映画の回想シーンのような奥行きを持ち始めます。音の粒に「物語」を、休符に「余韻」を。テクニックでは到達できない、感情の解像度を極限まで引き上げてくれるのです。
あなたの魂がこもった1音を、決して色褪せさせない。それどころか、時間と共に美しく枯れさせていく。El Capistan V2は、あなたの表現に「深い意味」と「一生ものの雰囲気」を授ける、唯一無二の装置なのです。





