
先日、お付き合いのある某代理店さまのご厚意で、ID:X FLOOR DSPモデラー(僕が弾いたのは、ID:X FLOOR 1、ID:X FLOOR 2)の試奏会に行ってまいりました。
最近、新商品でグッとくるアイテムが少なかったのですが、これは一発でグッときましたよ〜!
2026年1月、Blackstarが世界に放ったID:X FLOORシリーズ。それは、利便性と引き換えに失われがちだった「真空管のシビアな息遣い」を、最新のDSP技術とAmptonによるコンポーネントレベルの解析によって完全に取り戻した、全ギタリスト・ベーシストへの朗報です。
かつてMarshallの血統を継ぐエンジニアたちが立ち上げたBlackstarは、常に「本物のトーン」を追求してきました。その彼らが、ついにマルチプレイヤーの理想郷とも言える3つのフロアユニットを完成させたのです。
それでは、このシリーズに詰まっている、Blackstar社らしい実にマニアックな拘りとその実力とサウンドの印象をあらためて解説していきましょう!
使用レビュー:真空管アンプの「スッピン」のサウンドに極めて近い
第一印象は、一切の飾りを排した「スッピン」のサウンド。そしてパワー管のチョイスでここまで弾き心地が変わるのか!ということ。
TVP技術によって磨かれたその音は、出力トランスの磁気飽和が伝わるような、生々しく、無防備な、真空管アンプの素の響きそのものです。
※他社のプロセッサー・モデラーは、マイクやマイクプリを通した“モニタールームで聴いている”イメージですが、ID:X FLOORシリーズは、“アンプのキャビネットの真ん前で直接耳で聴いているイメージ”です
そして、EL84からEL34、さらには6L6へとパワー管を切り替える瞬間が、何よりの快楽。EQの変化ではなく、アンプの「筋肉量」と「呼吸」が書き換わる感覚。
EL84の甘いサグ感に酔い、6L6の強靭なヘッドルームに震える――この切り替えは、もはや機材の選択ではなく、アンプという生命体との対話です。メニューを潜る必要はありません。ノブ一つでアンプの心臓部分を植え替える。その背徳的なまでの官能性に、ニンマリです。
3種類のパワーバルブ・レスポンス:物理法則をハックする「弾き心地」
ID:X FLOORが既存のモデラーと一線を画す最大の理由は、「パワーアンプの挙動」を再現している点にあります。
- EL84: 煌びやかでタイトなコンプレッション。クラスAアンプの繊細な鈴鳴りを再現。
- EL34: ブリティッシュ・ロックの魂。粘り強いミッドレンジと、歪ませた時のあの「飽和感」。
- 6L6: 突き抜ける高域と豊かな低域。圧倒的なヘッドルームを持つアメリカン・クリーンの王道。
これらを切り替えた瞬間、音色だけでなく「ピッキングに対する弦の跳ね返り」まで変化します。トランス、スピーカー、そしてパワー管が相互に干渉し合う「動的な関係性」をデジタルで再構築したのです。
35種以上の妥協なきプレミアムエフェクト
「マルチのエフェクトは所詮おまけ」という常識は、ここで崩れ去ります。35種類を超えるエフェクト群は使用頻度が高いものを厳選。
Blackstarの代名詞である「スーパー・ワイド・ステレオ」技術が、リバーブやディレイに異次元の奥行きを与えます。ヘッドフォン出力ですら、まるで巨大なコンサートホールのステージ中央に立っているような感覚に陥る。この「空間の支配力」は、他のエフェクターを加えずとも、実用レベルでは必要十分なクオリティーです。
12種のアンプモデル+ベース・アコギへの完全対応
この一台で、あなたはすべての楽器のマスターになれます。
- ギター: クリーンからハイゲインまで、Blackstarの歴史を凝縮した12種類。
- ベース: 低域の芯を失わない、パンチの効いた3種類の専用アンプ。
- アコースティック: 2種類のボイスと、エレキをアコギに変えるシミュレーター。
「今日はベースでセッション、明日はアコギでソロライブ、週末はエレキでバンド」という過酷な現代プレイヤーのニーズを、これ以上ない精度で満たしてくれます。これは意外と需要あるので嬉しいですね。。
CabRig & "In The Room":箱鳴りのリアル感は?
IRベースの最新キャビネットシミュレーター「CabRig」は、スピーカーの口径、マイクの種類、配置をシミュレート。さらに独自技術「In The Room」により、ライン出力特有の「耳に張り付くような平べったさ」を排除しました。
しかし、他社製品のような「わざとらしさ」「大袈裟感」は皆無。あくまでも、キャビネットのスピーカーに近い距離で聴いているイメージを優先させて追い込んであるタイプです。
ノンメニュー・インターフェース:感性を止めない操作性
多くのマルチがギタリストを「PCのオペレーター」にしてしまったのに対し、ID:X FLOORはあなたを「演奏者」に留めます。
液晶の深い階層を潜る必要はありません。パネル上の物理ノブを回せば、即座に音が変わる。ライブの暗転中、ドラマーの合図を待ちながら「あと少しだけミッドを足したい」と思った時、直感的に指が動く。この「アナログの即時性」こそ、Blackstarのこだわりです。
エクスプレッションペダル(FLOOR 2 / 3)の機敏な反応
上位2モデルに搭載されたペダルは、ボリューム調整用だけではありません。ワウ、ピッチシフト、さらにはエフェクトの深度をリアルタイムでコントロール。
つま先を蹴り込んでスイッチをONにする時の重み、パラメータが滑らかに遷移するカーブの自然さ。足元で音を「歪ませ、揺らし、叫ばせる」快感を、1台で完結可能。
USB-CとArchitectソフト:無限に広がるデジタル・ハブ
最新のUSB-C端子を装備。Architectソフトウェアを活用すれば、PCの画面上で顕微鏡レベルの音作りが可能。さらに世界中のユーザーが作成したパッチを共有でき、あなたの音色は日々アップデートされ続けます。
徹底比較:3つのモデル、どれがあなたの「ベスト」か?
【ID:X FLOOR 1】 自由を愛するポータブル・キング
「最高のアンプを、ケースのポケットに入れて持ち運ぶ」という夢を叶える一台。
- ペダル: 非搭載
- ターゲット: 荷物を最小限にしたいストリートミュージシャン、デスクトップ制作中心のクリエイター。
- 魅力: 重さわずか約1.3kg。3個の多機能スイッチながら、パッチ切り替えやタップテンポをスマートに制御。CabRigの恩恵を最も手軽に受けられるモデルです。
【ID:X FLOOR 2】 ステージを支配する実戦仕様の核
シリーズで最もバランスに優れ、多くのプレイヤーの「正解」となるモデル。
- ペダル: 搭載
- ターゲット: ライブでのパフォーマンスを重視するギタリスト。
- 魅力: FLOOR 1の機能に加え、ペダルが内蔵。ワウやボリューム操作による動的な表現を求めるなら、迷わずこれです。
【ID:X FLOOR 3】 全てを統べるフラッグシップ司令塔
プロフェッショナルの現場を想定した、究極のコントロール・タワー。
- ペダル: 搭載
- ターゲット: 複雑なシステムを組むプロ、膨大なセットリストを抱えるプレイヤー。
- 魅力: 8つのスイッチを駆使し、パッチ切り替えだけでなくエフェクトの個別ON/OFF(マニュアルモード)も余裕でこなします。拡張MIDIや外部端子も充実し、ボードの「脳」として君臨します。
詳細スペック比較表
| 項目 | ID:X FLOOR 1 | ID:X FLOOR 2 | ID:X FLOOR 3 |
| ギターアンプモデル | 12種類 | 12種類 | 12種類 |
| ベースアンプモデル | 3種類 | 3種類 | 3種類 |
| アコギ/Sim | 2種 / 1種 | 2種 / 1種 | 2種 / 1種 |
| エフェクト数 | 35種類以上 | 35種類以上 | 35種類以上 |
| パワーバルブレスポンス | EL84, EL34, 6L6 | EL84, EL34, 6L6 | EL84, EL34, 6L6 |
| ペダル | なし | あり | あり |
| 重量 | 約1.33kg | 約2.07kg | 約2.5kg以上 |
| フットスイッチ数 | 3 | 3 | 8 |
ジャンル別・楽器別完全攻略セッティング
1. モダン・ロック
- Voice: OD2
- Valve: 6L6
- ISF: 左(アメリカン)
- Effect: Noise Gate + Plate Reverb
- 解説: 6L6のタイトな低域が、ギターの高速リフやパワーコードを鮮明に描き出します。
2. ブルース・ロック・セッション
- Voice: Crunch
- Valve: EL34
- ISF: 右(ブリティッシュ)
- Effect: Spring Reverb + Tremolo
- 解説: 手元のボリュームを絞った時の「クリーンへの戻り」と粘りは、まさにEL34の真骨頂。
3. ハイエンド・ベース・スラップ
- Voice: Modern Bass
- Valve: 6L6 (ヘッドルーム確保)
- Effect: Compressor + Chorus
- 解説: スラップのプル音にクリスタルな輝きを与え、アンサンブルを突き抜けます。
ライバル機との徹底比較分析
vs LINE 6 HX STOMP:多機能性との比較
| 項目 | ID:X FLOOR 2 | HX STOMP |
| 音作りの思想 | アンプそのものとしての直感性 | 無限の組み合わせとルーティング |
| 操作性 | アナログノブ中心で即座 | メニュー階層での深いエディット |
| チューブ選択機能 | 搭載(パワー管の挙動を再現) | 非搭載(アンプモデルの一部として処理) |
| ターゲット | アンプの質感を重視するプレイヤー | サウンドメイクを極めたいクリエイター |
HX STOMPは「音のパレット」として優秀ですが、ID:X FLOORは「本物のアンプを操る快感」において一歩抜きん出ています。
vs BOSS GX-100:汎用性との対決
| 項目 | ID:X FLOOR 2 | BOSS GX-100 |
| トーンの傾向 | オーガニック、真空管の温かみ | Hi-Fi、デジタル的な解像度 |
| ISFコントロール | あり(無段階調整) | なし(EQで作り込みが必要) |
| 筐体サイズ | 比較的コンパクト | やや大型(タッチパネル搭載) |
BOSS GX-100は多機能でエフェクトの数も圧倒的ですが、BLACKSTARは「ギターアンプ・メーカーが作った」という矜持を感じさせる、より音楽的で奥行きのあるトーンが魅力です。
結論:血の通った臨場感と生動感は首位レベル
ID:X FLOORのキャラクター特性は、スピーカーから放たれた音が空気を震わせ、鼓膜を揺らすその「臨場感」に集約されます。
独自技術「In The Room」が、ライン特有の閉塞感を打ち破り、あたかも自分の背後で4x12キャビネットが吠えているような、生き生きとした空間の奥行きを再現。静寂の中に響くピッキングの火花から、荒々しく空気を切り裂くディストーションまで、そのすべてに圧倒的な「生動感」が宿っています。
正しく綺麗な音が出るのではない。弾き手の熱量に反応し、音が空間の中で「踊る」のです。そこに、ビンテージアンプ特有の、ふくよかで色気のあるブーミーな低域さえ自然に加わることで、サウンドはより立体的で、人間味を帯びます。
ここ一番でモデラーらしからぬ(!)期待以上のラウドな反応をしてくれる、この血の通った体験は、ギターという楽器をより好きにさせてくれることでしょう!





