
今のクリーンサウンド、本当に満足していますか?
ギタリストの皆さん、あなたのクリーンサウンド、本当に満足していますか?アンプ直のサウンドも素晴らしいですが、もう少しだけ煌めきが欲しい、ピッキングに対する食いつきを良くしたい、あるいはアンサンブルの中で一歩前に出る存在感が欲しい…そう感じたことはありませんか?世の中には無数のオーバードライブが存在しますが、今回は「クリーンブーストの究極」とまで評される伝説的なペダル、VEMURAM Jan Rayの真髄に迫ります。
私も長年プロの現場で数えきれないほどの機材に触れ、3000曲以上の楽曲制作に携わってきました。数百台のエフェクターを所有し、海外のトップミュージシャンたちとも密に情報交換を行う中で、確信を持って言えることがあります。それは、Jan Rayが単なるオーバードライブではなく、ギタリストの感性を最大限に引き出す「魔法のヴェール」であるということです。この稀代のペダルがなぜ世界中のプロに愛され、ギタリストの音作りの概念を変えたのか、その奥深さと秘密を私の視点から徹底的に解説します。
VEMURAM Jan Ray の魅力は?「透明感」と「粘り」の融合が生んだ奇跡
VEMURAM Jan Rayは、日本のブティック系ハンドメイドエフェクターブランド「VEMURAM」が2012年に発表したオーバードライブペダルです。その開発コンセプトは、ヴィンテージのFender Blackface期アンプが持つ、あの煌びやかなクリーンと、そこから得られる絶妙なコンプレッション感を再現することでした。市場には様々なクローン系ペダルが存在しますが、Jan Rayはその中でも一際異彩を放ち、瞬く間に世界中のプロギタリスト、特にカントリーやブルース、AOR系のプレイヤーを中心に絶大な支持を得ていきました。
コントロールは非常にシンプルで、Volume、Gain、Treble、Bassの4ノブ構成。しかし、その内部に隠されたトリマー(内部調整ツマミ)こそがJan Rayの真骨頂であり、ギタリストを沼に誘う最大の要因でもあります。
なぜこのペダルがこれほどまでに「伝説」と呼ばれるのか?それは、「透明感を保ちながらも、サウンドに粘りや奥行き、そして暖かみを加える」という、一見矛盾するような特性を見事に融合させた稀有な存在だからに他なりません。単なる歪みペダルではなく、アンプのポテンシャルを最大限に引き出し、弾き手のタッチを増幅させる「ローゲインブースター」としての側面が、このペダルの真価なのです。
Jan Rayの「音の真髄」:プロの現場で使用してみた印象をレビュー
私は数多くの現場でJan Rayを試してきました。ここからは、言葉でJan Rayのサウンドキャラクターを詳細にレビューして、その「音の真髄」に迫ります。
サウンドキャラクター詳細:ギターアンプに一枚膜が張られたような絶妙な食いつき
歪みの質: Jan Rayのゲインを上げていくと、一般的なオーバードライブのように「ジャリッ」とした歪みが生まれるわけではありません。むしろ、アンプのボリュームを上げたときに自然に生まれるコンプレッション感と、極上のサスティーンが加わります。まるでギターアンプ全体に、上質なシルクのような膜が一枚張られたかのような、非常にスムースで耳当たりの良い歪み方です。ゲインを最大にしても破綻せず、ピッキングの強弱でクリーンにもクランチにもなる、驚くほどの追従性を持っています。
各コントロールノブの役割と効果
Volume: クリーンブーストからアンプをドライブさせるレベルまで、非常に広い範囲をカバーします。
Gain: 歪みの深さというよりは、「音の密度」と「コンプレッション感」を調整します。低めに設定すれば極上のクリーンブースト、上げていけば粘りのあるクランチサウンドが得られます。
Treble/Bass: 一般的なEQではありません。特にTrebleノブは「音の透明感と輝き」を司る鍵です。右に回すほど煌びやかさが増し、左に絞ると暖かく、丸いサウンドになります。Bassノブも同様に、音の土台をしっかりと支えつつ、過剰にならない絶妙なバランス感を持っています。
内部トリマーの魔法:未だ見ぬ音の領域へ
Jan Rayには内部に「TRIM」(SATURATION調整)というトリマーが隠されています。
:このトリマーを調整することで、歪みのキャラクター(SATURATION(飽和感))を大きく変えられます。右に回せばよりコンプレッションが効いてサスティーンが増し、ヴィンテージアンプの飽和感を強調できます。左に回せばよりオープンで、クリーンなサウンドに近い状態になります。
このトリム調整が可能なことにより、まるで高級アンプの回路をいじるような感覚で、ギタリストの理想とする音のニュアンスを徹底的に追い込むことができます。
ピッキングニュアンスへの究極的な追従性:
Jan Rayは、弾き手のピッキングの強弱や、指先のわずかなタッチを驚くほど忠実に、そして美しく増幅します。強く弾けば艶やかに歪み、弱く弾けば瑞々しいクリーンサウンドが顔を出す。この「音のグラデーション」の豊かさこそが、Jan Rayがプロから絶賛される所以です。まるでギタリストの感情そのものが音になるかのような、圧倒的な表現力を持っています。
ギター・アンプとの相性:
シングルコイルのギター:ストラトキャスターやテレキャスターでは、その煌びやかさを損なわずに、芯のある抜けの良いサウンドに。特にハーフトーンの鈴鳴り感が、より立体的に聴こえるようになります。
ハムバッカーのギター:レスポールのようなギターでは、元々持っている太さをスポイルせず、さらに粘りや艶やかさを加えます。ブルースロック系のリードサウンドでは、これ以上ないほど説得力のあるトーンが得られます。
クリーンなトランジスタアンプ:Jan Ray本来のキャラクターが際立ち、まるで高級なチューブアンプを鳴らしているかのような、暖かみと奥行きのあるサウンドを付与できます。
真空管アンプ:既に軽く歪ませた真空管アンプをさらにプッシュすることで、そのアンプの持ち味を損なわずに、さらにリッチな倍音とサスティーンを生み出します。特にFender系アンプとの相性は抜群で、極上のヴィンテージトーンが手に入ります。
「クリーンブーストの究極」と言われる理由:
ゲインをほぼゼロに設定しても、Jan Rayを通すだけでサウンドに明確な変化が生まれます。音の輪郭がはっきりし、ピッキングレスポンスが向上し、コンプレッション感が加わることで、アンプの直出しでは得られない「もう一歩先のサウンド」へと昇華させます。これは、クリーンサウンドを多用するプレイヤーにとって、まさに「最後のピース」となるでしょう。
Jan Rayの特徴・特性(レーダーチャート)

グローバルな評価:なぜ世界中のプロに愛され続けるのか?
私の海外のミュージシャン仲間との会話の中で、お気に入りエフェクターの話になるとJan Rayの名前が出ない日はないと言っても過言ではありません。特にアメリカのカントリーやブルース、そしてジャズやAOR系のギタリストの間では、もはや「秘伝のスパイス」のような存在として扱われています。
- 海外ミュージシャンたちのJan Ray評:
- 「あいつのギター、なんであんなに生々しいのに、耳に刺さらないんだ?」その答えがJan Rayだった、というエピソードをよく耳にします。彼らはJan Rayを単なる歪みペダルとしてではなく、「ギタリストのタッチを最大限に引き出し、アンサンブルの中で自然に溶け込ませながらも存在感を放つためのツール」として認識しています。
- ある有名スタジオミュージシャンは「Jan Rayは、自分のギターが持つ最高の音を、さらにその上へと引き上げてくれるペダルだ」と語っていました。限られた時間の中で最高のテイクを生み出すプロにとって、Jan Rayは「失敗のない選択肢」なのです。
- 多様な音楽ジャンルでの採用例:
- カントリーやブルースでの使用はもはや定番ですが、実はポップスやR&Bのレコーディングでも、クリーン〜クランチのニュアンスを出すために重宝されています。リードギターだけでなく、リズムギターに「存在感のあるクリーン」を与えるために使われることも。
- 一部のプロデューサーは、Jan Rayをベースに繋いで、アタック感を強調したり、わずかにコンプレッションをかけてグルーヴ感を増幅させたりするユニークな使い方をしています。これは、グローバルなサウンドメイキングにおいて、「楽器本来の音を活かしつつ、楽曲に奥行きと有機的な暖かさを加える」というトレンドに合致しています。
- なぜ「高価」でも選ばれるのか?:
- Jan Rayは決して安価なペダルではありません。しかし、世界中のプロがこぞって採用する理由は、そのサウンドが「価格以上の価値」を提供することを証明しているからです。「時間=お金」のプロの現場において、迷いなく最高の音を出せるツールは、結果的に最もコストパフォーマンスが高いと判断されるのです。
ポテンシャルを最大限に活かすセッティング術とボード構築のヒント
Jan Rayの真価を引き出すには、そのセッティングとボードでの位置が重要です。
基本のセッティング例:
「煌めくクリーンブースト」: Volume 12時~3時、Gain 9時~11時、Treble 1時~3時、Bass 12時(内部トリマーは好みに合わせて調整)
「粘りのブルースクランチ」: Volume 1時、Gain 1時~2時、Treble 12時、Bass 12時(内部SATURATIONを少し上げてコンプレッション感を増す)
「アンププッシュ&リードトーン」: Volume 3時、Gain 12時、Treble 12時~1時、Bass 12時(アンプ側はクランチ~クリーンに設定)
他のエフェクターとの組み合わせ:
TS系オーバードライブとの組み合わせ: Jan Rayを前段に置き、TS系でさらにゲインブーストすることで、よりミッドが強調された、粘りのあるリードサウンドが生まれます。Jan Rayの持つ透明感を活かしつつ、厚みとサスティーンを稼ぐことができます。
ファズとの組み合わせ: Jan Rayをクリーンブースト的に使い、ファズの前段に置くことで、ファズの音をクリアにしつつ、音量をブーストしてアンサンブルでの存在感を高めます。
コンプレッサーとの組み合わせ: Jan Ray自体にある程度のコンプレッション感がありますが、さらにコンプレッサーを前段に置くことで、より均一で滑らかなサウンドが得られます。カッティングやアルペジオでの粒立ちを揃えたい場合に有効です。
空間系(ディレイ、リバーブ)との組み合わせ: Jan Rayで得た上質なクリーン/クランチサウンドに、高品質な空間系エフェクトを組み合わせることで、さらに奥行きのある、プロフェッショナルなサウンドに仕上がります。Jan Rayのサウンドがクリアなため、空間系との馴染みも非常に良いです。
プロが実践するJan Rayボード組み込み術:
ボードでの定位置: 私はJan Rayをボードの「一番最初か2番目」、あるいは「ワウペダルの直後」に置くことが多いです。これは、Jan Rayがギターからの信号を素直に受け止め、そのポテンシャルを最大限に引き出すからです。後段の歪みペダルや空間系が、Jan Rayによって整えられた「上質なクリーン/クランチ」を基盤として機能することで、全体のサウンドが格段に向上します。
電源供給の重要性: VEMURAM製品は高品質な電源を推奨します。安定した9VのDC電源を供給することで、Jan Ray本来のサウンドクオリティを余すことなく引き出すことができます。ノイズ対策も万全なパワーサプライの使用をおすすめします。
VEMURAM Jan Ray 主な使用アーティスト
VEMURAM Jan Ray は、そのナチュラルでクリアなドライブサウンドが特徴であるため、特にクリーンからクランチサウンドを重視するギタリストや、アンプ本来のサウンドをブーストしたいギタリストに愛用されています。
- Michael Landau (マイケル・ランドウ)
- Jan Rayの登場当初からその可能性を見出し、VEMURAM製品の開発にも深く関わったことで知られる伝説的なセッションギタリストです。彼のシグネチャーサウンドは、ヴィンテージアンプをドライブさせたような芳醇なクリーンから、絶妙なコンプレッション感と豊かなサスティーンを持つクランチトーンが特徴であり、Jan Rayはその音作りの核となっています。彼自身もJan Rayについて「古き良きBlackface Fenderアンプのトーンコントロールによく似ていて、暖かく豊かな音色だ」とコメントしており、彼の求める「アンプライク」なサウンドを補完する存在として不可欠です。
- Mateus Asato (マテウス・アサト)
- 現代を代表するSNS世代のギタリストで、その繊細なタッチと美しいクリーン・クランチサウンドが特徴です。彼のボードにもJan Rayが組み込まれていることが多く、その滑らかなトーンの形成に寄与しています。
- Kirk Fletcher (カーク・フレッチャー)
- ブルースギタリストとして世界的に評価の高い彼もJan Rayを愛用しています。彼のブルースフィーリング溢れる粘りのあるトーンは、Jan Rayのコンプレッション感と相性が良いとされています。
- Josh Smith (ジョシュ・スミス)
- テクニカルかつブルージーなプレイで知られるギタリストで、クリーンからクランチサウンドを巧みに使い分けます。Jan Rayを自身のボードに組み込み、サウンドの要の一つとしています。
- Tim Pierce (ティム・ピアース)
- 数多くのレコーディングセッションに参加しているベテランスタジオミュージシャン。幅広いジャンルに対応するため、様々な機材を試しますが、Jan Rayのような「アンプライク」で「原音を損なわない」ペダルを重宝していると推測されます。彼のYouTubeチャンネルなどでも紹介されることがあります。
このギタリストたちは、いずれも単にエフェクターを「かける」のではなく、ギター、アンプ、エフェクター全てを連動させて「音を作る」ことに長けている点でも共通しています。Jan Rayは、そうしたギタリストの感性を最大限に引き出すツールとして、高く評価されていると言えるでしょう。
本当に必要なのか?メリット・デメリット総括
メリット
- 唯一無二のサウンド: 透明感を保ちながら、艶やかな歪みと絶妙なコンプレッション感、そして圧倒的なピッキングニュアンスへの追従性。
- アンプのポテンシャルを最大限に引き出す: 単なるエフェクトではなく、アンプのサウンドそのものを「一段階上」へと昇華させるブースターとしての側面。
- 優れた汎用性: クリーンブースト、クランチ、リードサウンド、さらに様々なギターやアンプとの組み合わせで、幅広いジャンルに対応可能。
- 高い演奏表現力: 弾き手の繊細なタッチを余すことなく表現し、感情豊かな演奏をサポート。
- プロからの絶大な信頼: 世界中のトップミュージシャンが愛用する、揺るぎない品質と信頼性。
デメリット(正直な目線)
- 高価であること: 他のオーバードライブと比較して高価格帯に位置します。
- しかし: そのサウンドクオリティと、あなたのギターライフにもたらす価値を考えれば、決して「高い」買い物ではありません。むしろ、これ一台で得られる音の感動は、多くのギタリストにとって価格以上の投資となるでしょう。
- 内部トリマーの調整の難しさ: 音作りの奥深さの反面、内部トリマーを触るには知識と経験が必要です。
- しかし: 初めは基本のセッティングから始め、徐々に自分好みの音を見つけていく楽しさがあります。一度「自分だけのスイートスポット」を見つければ、その音は唯一無二のものとなるでしょう。
- ブティックペダルゆえの入手難易度: 人気の高さから品薄になることもあります。
- しかし: 定期的に中古市場や楽器店の情報をチェックすれば、手に入れるチャンスは必ずあります。待つ価値は十分にあります。
Jan Rayは「高価なオーバードライブ」ではなく「音の哲学」。サウンドの常識を変える一台に
VEMURAM Jan Rayは、単に「音が良いオーバードライブ」という言葉だけでは語り尽くせない、「音の哲学」を内包したペダルです。それは、ギタリストが追い求めるクリーンサウンドの理想形であり、アンプの真価を引き出すための究極のツールであり、そして何よりも、あなたの演奏表現を無限に広げる可能性を秘めた存在です。
もしあなたが、現状のギターサウンドに何かしらの物足りなさを感じているなら、あるいは「あのプロのサウンド、どうやって出してるんだろう?」と疑問に思っているなら、ぜひ一度VEMURAM Jan Rayを試してみてください。その透明感と粘り、そして驚くべきピッキングニュアンスへの追従性は、きっとあなたのギターサウンドの常識を覆し、新たな感動の世界への扉を開いてくれるはずです。