
2017年、エフェクター業界に衝撃が走りました。エフェクターの巨人BOSSと、モダンブティックペダルの旗手JHSペダルズが手を組み、一つのペダルを作り上げたのです。それがBOSS JB-2 Angry Driver。
二つの伝説的ドライブサウンドを一台に凝縮し、さらにそれらを自在にブレンドできる革新的機能を搭載。「妥協のないトーン選択」という新しい概念を、私たちギタリストに提示してくれた画期的なコラボ製品です。
BD-2 Blues Driverが象徴する「ピッキング・ニュアンスに忠実で、破綻寸前のカオスを内包したブルースの魂」。
Angry Charlieが体現する「80年代以降のマーシャル・スタックアンプに由来する、タイトで質量感のあるハイゲインの秩序」。
このJB-2は、その二極の音色を自在に切り替え、あるいは直列・並列に接続することで、従来のペダルの枠組みを超えた「音色のハイブリッド・プラットフォーム」としての地位を確立しました。今回は、このJB-2がどのようにしてその革新性を実現しているのか、その遺伝子、6つのモードが描き出す音の地図、そして「第三の音色領域」について、徹底的に解説します。
使用レビュー:これは事件!カオスと秩序の融合
JB-2を理解するためには、まずその設計思想の根幹をなす二つの名機の哲学を深く知る必要があります。
BD-2 Blues Driver:カオスとブルースの魂
BOSS BD-2 Blues Driverは、1995年の登場以来、その名の通りブルース・ロックの文脈で愛され続けているペダルですが、その本質は単なるブルース用オーバードライブに留まりません。
BD-2の最大の特徴は、一般的なオーバードライブが目指す「スムーズでコンプレッションされた歪み」とは一線を画す、その「フェンダー的アンプライクな挙動とカオスな倍音構成」にあります。特にゲインを上げていった際に現れる、エッジーでザラついた、そしてどこか破綻したかのような倍音成分が、ギタリストのピッキングの強弱やギター側のボリューム操作に極めて鋭敏に反応します。
これは、ヴィンテージアンプが限界点に達した時に生み出す、予測不能ながらも有機的なレスポンスをペダルサイズに閉じ込めたものです。BD-2は、ギタリストの感情や手の動きを「歪み」という形で極めて生々しく表現する、「表現の中継器」としての哲学を持っています。そのサウンドは、音圧を稼ぐというより、「音に感情的なエッジと立体感を与える」ことに特化しています。
Angry Charlie:マーシャル系ハイゲインの秩序
対するJHS PedalsのAngry Charlieは、ブティックペダル界におけるマーシャル・スタックアンプのハイゲインサウンドのエミュレーターとして、圧倒的な評価を確立しています。
Angry Charlieが提供するのは、BD-2とは対極の音色哲学です。それは、JCM800やJCM900といった名機が持つ、「質量感、タイトさ、そして支配された倍音」です。ハイゲインながらも音が潰れすぎず、特に低音域は引き締まっており、モダンなドロップチューニングや高速リフにも対応できる高い分離能力を持っています。
Angry Charlieは、単に「強く歪ませる」だけでなく、「ハイゲインの環境下で、クリアな音程感を保つ」というモダンロックやメタルに不可欠な「秩序」を音にもたらします。そのドライブは、BD-2の「歪みの境界を探る」という感覚とは異なり、「確固たる音の壁を築き上げる」という感覚に近いのです。
JB-2は、この「カオス(BD-2)」と「秩序(Angry Charlie)」という二つの偉大な音色哲学を内包するペダルとして完璧にワークしてくれるのが凄い!
二大ブランドの技術融合という歴史的快挙
BOSSとJHSペダルズ――この二つのブランドがコラボレーションするという事実そのものが、エフェクター史における重要な出来事でした。40年以上の歴史を持つBOSSの確立された技術力と、革新的なサウンドデザインで急成長を遂げたJHSの創造性。この両者が融合することで生まれたJB-2は、単なる「二つのペダルの寄せ集め」では決してありません。
JHSの創業者ジョシュア・スコット氏とBOSSの開発チームが何度も議論を重ね、互いの哲学を尊重しながら作り上げた傑作。その開発過程では、単にサーキットを並べるのではなく、二つのドライブがどう相互作用すべきかまで徹底的に研究されました。
独創的なモード切替システムの革新性
JB-2の最大の特徴は、単純なA/Bスイッチではない、連続可変型のモードセレクターです。BD-2タイプのドライブとAngry Charlieタイプのドライブを、2軸コントロールノブをブレンドすることで、事実上0:100から100:0まで無段階で調整可能。この機能により、理論上は無限のドライブキャラクターを生み出すことができます。
完全にBD-2側に設定すれば、BOSSが誇るブルージーで温かみのあるオーバードライブが得られます。一方、完全にAngry Charlie側にすれば、マーシャルアンプを思わせる攻撃的なハイゲインディストーションが咆哮します。そして最も魅力的なのは、その「中間地点」。二つのドライブを混ぜ合わせることで、どちらか単体では決して得られない独自のサウンドキャラクターが誕生するのです。
驚異的な音楽性と実用性の両立
ハイゲインペダルでありながら、驚くほど音楽的。これがJB-2の本質です。多くのディストーションペダルが「激しさ」を追求するあまり、音楽性を犠牲にしてしまいますが、JB-2は違います。
ギターのボリュームコントロールへの反応は極めて自然で、フルテンからゼロまで、あらゆるポジションで使える音色が得られます。ボリュームを絞れば繊細なクランチトーン、上げれば力強いリードトーン。この有機的な応答性こそ、真に「演奏者の意図を音に変換できるペダル」の証です。
コードストロークでは各音の分離が明瞭で、6弦すべてが聞き取れる透明感。単音のリードプレイでは適度なコンプレッション感とサスティーンが得られ、フレーズが自然に歌います。テクニカルなパッセージでも、音が団子にならず、一音一音がクリアに聴こえる解像度の高さ。これは回路設計の優秀さの表れでしょう。60年代〜現代的モダンドライブまで、難なく出力してくれますよ〜!
BOSSブランドの信頼性とサポート体制
JHSの革新性を享受しながら、BOSSブランドの安心感も得られる――これもJB-2の大きな魅力です。世界中どこでも入手可能な補修パーツ、充実したサポート体制、そして何十年も使い続けられる堅牢性。
実際、BOSSペダルの耐久性は伝説的です。過酷なツアーの移動にも耐え、踏まれ続けても壊れない筐体。これは単なる「丈夫さ」ではなく、「プロフェッショナルの現場を知り尽くした設計」の賜物です。ブティックペダルの音質と、量産品の信頼性。この両立がJB-2では実現されています。
JB-2の核心:6モード・セレクターが放つ守備範囲の広さ
JB-2の真骨頂は、中央の6ポジション・ロータリースイッチによって定義されることです。このスイッチは、単なるA/Bの切り替えではなく、二つのエンジンをどのように連携させるかという、音響工学的なルーティング(経路制御)を司るナビゲーターです。
1. 個別モード:BD-2とAngry Charlie (B, J)
- B (BD-2 Mode): BD-2単体としての挙動を極めて忠実に再現します。特筆すべきは、単なるエミュレーションではなく、BOSS自らが設計に深く関わっているため、オリジナル機と並べても遜色ない、あのエッジと反応性を保持している点です。ギタリストが求めるBD-2のクリーンアップ、そしてあの荒々しい倍音の爆発力をそのまま享受できます。
- J (Angry Charlie Mode): JHS Pedalsのノウハウが凝縮された、タイトで強力なマーシャル系ハイゲインを提供します。特筆すべきは、オリジナルACが持つミッドレンジの押し出し感と、トレブルの鋭さがBOSSのペダルフォーマットに完全に統合されている点です。これにより、ペダルボード上で安定した「アンプのリードチャンネル」としての役割を完璧に果たします。
2. 直列モード:音のタワーを築く (B -> J, J -> B)
直列接続は、JB-2の音作りにおける「タワー建築家」としての側面を際立たせます。
- B → J (BD-2がAngry Charlieをプッシュ):
- 解釈: これは、「ブルース的なエッジを持つブースター」で、「モダンなハイゲインアンプ」を叩き込むという、極めて実用的なセッティングです。
- 音響的な効果: BD-2はゲインを抑えてボリュームを上げることで、その特有のミッドハイのピークをACの入力段に送り込みます。これにより、AC単体よりもさらにコンプレッション感とサステインが増し、特にソロでの音抜けが劇的に向上します。BD-2の荒々しい倍音はACのタイトな回路によって部分的に「整理」されつつも、ハイゲインの中に「有機的なざらつき」として残存し、非常に複雑で立体的なリードトーンが生まれます。
- J → B (Angry CharlieがBD-2をプッシュ):
- 水平思考的解釈: これは、「確立されたハイゲインの音の塊」を「破綻を許容するBD-2の回路」に叩きつけ、音色の「崩壊寸前の美学」を追求するモードです。
- 音響的な効果: ACの強大な出力とタイトな低域がBD-2に送られることで、BD-2は通常のゲイン設定では到達し得ない、異様なまでのサチュレーションとコンプレッションを生み出します。歪みの質は粘り気を増しますが、BD-2の設計特性上、AC単体よりも遥かにノイジーで暴れるトーンになります。これは、極端なファズやシューゲイザー的な壁のようなサウンドを求めるギタリストにとって、予期せぬクリエイティブな結果をもたらします。
3. 並列モード:音の色彩を混ぜる (Parallel, Bypass Mode)
並列接続は、JB-2の最も革新的で、チャレンジ性が活きるモードです。
- Parallel (並列接続):
- セマンティックな解釈: 歪みペダルで並列接続を行うことは、一般的にラックシステムや高度なミキサーを必要としますが、JB-2はこれをコンパクトな筐体で実現しました。これは、「二つの音色の色彩を、互いの回路に干渉させることなく混ぜ合わせる」ことを意味します。
- 音響的な効果: BD-2の「荒々しい倍音」とAngry Charlieの「タイトな質量感」がミックスされます。BD-2のゲインを抑え、ACのゲインを上げることで、クリーンな基音の周りにタイトなディストーションの壁を配置できます。逆に、BD-2をブライトなオーバードライブに設定し、ACをローゲインに設定すれば、「ミッドレンジをブーストせずに、低音域と高音域だけを別々の回路で強調する」という、EQでは不可能な複雑なテクスチャを生成できます。これは、音が分厚くなりすぎることを避けたまま、音像を巨大化させたいフュージョンやポストロックのギタリストにとって、決定的なソリューションとなり得ます。
JB-2が描き出す「第三の音色領域」 (ハイブリッド・トーン)
6つのモードの組み合わせによって、JB-2はコラボレーションの域を超え、ギタリストの音色パレットに「第三の音色領域」を提供。これがまた、従来のオーバードライブやディストーションのカテゴリーでは定義しきれない、独自のサウンドアイデンティティなんですよ!
A. 「ハイゲイン・ブルース」の可能性
BD-2(B)の哲学は「ブルース」ですが、Angry Charlie(J)と直列接続することで、BD-2が本来持つ荒々しさと、ACが持つタイトなサステインが化学反応を起こします。
従来のハイゲインディストーションは、ピッキングの強弱に対する追従性(ダイナミクス)と引き換えに、強大なサステインと音圧を得ていました。しかし、JB-2の B → J モードでは、BD-2のダイナミクスがブースターとして機能するため、「ハイゲインでありながら、ピッキング・ニュアンスが潰れない」という、矛盾した理想を達成します。
これは、ジミ・ヘンドリックスやSRVのようなブルースの精神性を、モダンなサウンドシステムで表現したいギタリスト、すなわち「ハイゲイン・ブルース」を求める世代にとって、画期的な領域です。音圧はあるが、指先一つで音をコントロールできる——これがJB-2の提供する新しいダイナミクスです。
B. JB-2を「音色のプラットフォーム」として捉える
JB-2を「歪みペダル」という狭い定義から解放してみましょう。JB-2は、音色の「カオス生成器」と「秩序維持装置」を内蔵したプラットフォームです。
- カオス生成器(BD-2)の役割: 破綻寸前の倍音、アンプの揺らぎ、ランダムなノイズの付加。
- 秩序維持装置(Angry Charlie)の役割: タイトな低音、ミッドの整理、十分なゲインとサステインの安定供給。
この二つをParallelモードでミックスする場合、ギタリストはBD-2をクリーンブースター、ACをメインの歪みとして使用できます。この設定の利点は、BD-2のトーンノブがEQとして機能し、ACの歪み回路を全く汚さずに、クリーンなまま高音域だけを強調できることです。
詳細スペック
基本仕様
項目 | 詳細 |
---|---|
製品名 | BOSS JB-2 Angry Driver |
タイプ | デュアル・オーバードライブ/ディストーション |
電源 | 9VDC(センターマイナス)、006P型9V電池 |
消費電流 | 55mA |
寸法 | 73mm × 129mm × 59mm |
重量 | 約445g |
コントロール | Level、Drive、Tone(各2段)、Mode(BOSS/JHS切替) |
製造国 | 台湾(BOSSブランド管理) |
参考価格 | ¥27,000前後 |
音響特性:周波数領域から紐解く音作りの秘密
BD-2モード:温かみと透明感の絶妙なバランス
BD-2モードの周波数特性は、「自然さ」を追求した設計です。
- 低域(80Hz-200Hz):適度に強調され、温かみのある土台を形成。しかし過度ではなく、クリアな低音を保持
- 中低域(200Hz-500Hz):ここに音の芯があります。ボディ感と存在感を支える重要な領域
- 中域(500Hz-2kHz):BD-2の真骨頂。豊かな倍音が音楽性を生み出し、歪みが「歌う」のはこの領域のおかげ
- 高域(2kHz-8kHz):適度なブライトネス。耳に刺さらない自然な高音特性
- 超高域(8kHz以上):滑らかにロールオフし、デジタル臭さを排除
Angry Charlieモード:現代的パワーとクラリティ
Angry Charlieモードは、より現代的な周波数バランスを持ちます。
- 低域(80Hz-200Hz):タイトに制御され、ブーミーさを排除。現代的なメタルトーンに最適
- 中低域(200Hz-500Hz):適度に抑制され、すっきりした印象
- 中域(500Hz-3kHz):攻撃的なキャラクター。この領域の倍音が、Angry Charlieの「怒り」を生み出す
- 高域(3kHz-10kHz):鋭く、明瞭。リフのアタック感とカッティングを支える
- 超高域(10kHz以上):BD-2より伸びており、エアー感とブリリアンスを提供
ブレンドモード:無限の可能性
そして、モードセレクターの中間位置では、これら二つの特性が混ざり合います。単純な「足し算」ではなく、相互作用によって新たな周波数特性が生まれるのです。例えば、50:50のブレンドでは:
- BD-2の温かみ + Angry Charlieのタイトネス = 現代的でありながら有機的なトーン
- BD-2の音楽性 + Angry Charlieの攻撃性 = パワフルでありながら繊細なキャラクター
この「錬金術」こそが、JB-2の最大の魅力なのです。
ジャンル別徹底攻略:オススメの設定集
クラシックロック:60's~70's ブリティッシュトーン
モード: BD-2寄り(25%) Level: 12時 Drive: 10時 Tone: 1時
推奨楽曲: The Beatles「Revolution」、The Who「Won't Get Fooled Again」
このセッティングでは、60年代後半から70年代初頭のブリティッシュロックサウンドを再現します。BD-2の温かみを基調としながら、わずかにAngry Charlieを混ぜることで、ヴィンテージ感を保ちつつ現代的な明瞭さを加えます。クリーンブースト的な使い方から、軽いクランチまで対応可能です。
ブルース:王道のオーバードライブトーン
モード: BD-2 Level: 11時 Drive: 11時 Tone: 12時
推奨楽曲: Stevie Ray Vaughan「Pride and Joy」、B.B. King「The Thrill Is Gone」
完全にBD-2モードで使用することで、その名の通りブルースに最適なトーンが得られます。Driveを控えめにすることで、ギターのボリュームコントロールが最大限活きる設定。ピッキングのニュアンスがダイレクトに伝わり、まさに「歌うギター」を実現します。
ハードロック:80's アメリカンロックサウンド
モード: 中間(50%) Level: 1時 Drive: 2時 Tone: 2時
推奨楽曲: Bon Jovi「Livin' on a Prayer」、Van Halen「Panama」
BD-2とAngry Charlieを半々でブレンドすることで、80年代アメリカンハードロックの華やかなトーンが生まれます。両者の良いとこ取りで、パワフルでありながら音楽的。リズムギターのパワーコードからリードソロまで、一つの設定で幅広くカバーできます。
モダンメタル:現代的ハイゲインサウンド
モード: Angry Charlie Level: 12時 Drive: 3時 Tone: 1時
推奨楽曲: Metallica「Enter Sandman」、Alter Bridge「Metalingus」
完全にAngry Charlieモードに設定し、Driveをハイゲイン領域まで上げます。タイトで攻撃的でありながら、音の分離は保たれており、リフワークの各音がクリアに聴こえます。ダウンチューニングでも濁らない明瞭さが、現代メタルに最適です。
オルタナティブ:90's グランジロック
モード: Angry Charlie寄り(75%) Level: 1時 Drive: 1時半 Tone: 11時
推奨楽曲: Nirvana「Smells Like Teen Spirit」、Pearl Jam「Alive」
Angry Charlieをメインにしながら、BD-2を25%ブレンド。この組み合わせにより、90年代グランジ特有の「荒々しいが音楽的」というキャラクターが生まれます。Toneを少し下げることで、ダークで重厚な質感を強調します。
ポップロック:洗練されたドライブトーン
モード: BD-2寄り(30%) Level: 1時 Drive: 11時 Tone: 1時半
推奨楽曲: Maroon 5「This Love」、John Mayer「Slow Dancing in a Burning Room」
BD-2をベースに、わずかにAngry Charlieの明瞭さを加えることで、現代ポップスに最適な洗練されたドライブトーンが得られます。クリーンとの切り替わりがスムーズで、ダイナミックな楽曲展開に対応できます。
ファンク:タイトなリズムトーン
モード: 中間やや Angry Charlie寄り(60%) Level: 12時 Drive: 9時 Tone: 2時
推奨楽曲: Red Hot Chili Peppers「Can't Stop」、Nile Rodgers スタイル
低Gain設定でありながら、Angry Charlieの明瞭さを活かすことで、カッティングに最適なタイトなトーンが生まれます。高めのTone設定により、歯切れの良いアタックを強調。16分音符のカッティングでも、各音が明確に分離します。
プロフェッショナルの証言:JB-2との出会い
セッションギタリスト K氏のレビュー
「私の仕事は、日々異なるジャンルの録音に対応することです。あるときはポップス、次はロック、そしてメタル。以前は、ジャンルごとに異なるドライブペダルを使い分けていました。スタジオに入るたびに、『今日はどのペダルが必要か』を考えるのが日課でした。
JB-2を手に入れてから、その悩みから解放されました。このペダル一台で、ほぼすべてのドライブトーンをカバーできるのです。特に素晴らしいのは、モードセレクターの柔軟性。ディレクターから『もう少しアグレッシブに』と言われたら、その場でノブを右に回すだけ。『もっと温かみが欲しい』と言われたら、左に回す。時間を節約できるだけでなく、クリエイティブな流れを止めずに済むのです。
音質面でも妥協はありません。BD-2の温かさとAngry Charlieの明瞭さ、両方を必要に応じて引き出せる。プロのレコーディングに求められるクオリティを、確実に提供してくれます」
ライブギタリスト M氏の体験
「ツアーミュージシャンとして、機材の信頼性は最重要課題です。どんな環境でも、どんなアンプでも、一定のクオリティを保たなければなりません。JB-2は、その期待に完璧に応えてくれています。
特に印象的だったのは、アメリカツアーでの出来事です。レンタルアンプが予想と全く違うキャラクターで、リハーサル時には『今日の本番、大丈夫か?』と不安になりました。しかし、JB-2のモードを調整することで、そのアンプの長所を活かしたセッティングを見つけることができたのです。
BOSSブランドの耐久性も信頼できます。雨の野外フェス、砂埃の中東ツアー、極寒のヨーロッパ公演。どんな過酷な環境でも、JB-2は一度も故障せず、常に同じサウンドを提供してくれました。これがプロ仕様の意味です」
ライバル機との徹底比較
vs Fulltone OCD:ブティックペダルとの対決
項目 | BOSS JB-2 | Fulltone OCD |
---|---|---|
価格 | ¥27,000前後 | ¥36,000前後 |
キャラクター | デュアル/可変 | シングル/固定 |
汎用性 | 極めて高い | 中程度 |
製造品質 | 量産/高信頼性 | ハンドメイド/個体差あり |
サポート | 世界中で対応 | 限定的 |
OCDは独特の個性を持つ素晴らしいペダルですが、「一つのキャラクター」に特化しています。対してJB-2は、無限のバリエーションを提供します。
vs Strymon Sunset:ハイエンド・デュアルドライブとの比較
項目 | BOSS JB-2 | Strymon Sunset |
---|---|---|
価格 | ¥27,000前後 | ¥44,000前後 |
ドライブタイプ | 2種類 | 6種類 |
ブレンド機能 | 連続可変 | 直列/並列/独立 |
操作性 | シンプル | やや複雑 |
コストパフォーマンス | 優秀 | 高価格帯 |
Sunsetはより多機能ですが、JB-2は「必要十分な機能をシンプルに」という哲学で設計されています。価格差を考慮すれば、JB-2のコストパフォーマンスは圧倒的です。
vs Ibanez Tube Screamer:定番との比較
項目 | BOSS JB-2 | Ibanez TS9 |
---|---|---|
キャラクター | 多様 | ミッドブースト特化 |
ゲイン量 | 低〜高 | 低〜中 |
用途 | オールラウンド | アンプブースト |
価格 | ¥27,000前後 | ¥12,000前後 |
Tube Screamerは「アンプをプッシュする」という明確な役割を持つ名機ですが、JB-2はそれ自体が完結したドライブサウンドを提供します。
まとめ:実用性の高い立体的なドライブサウンドを1台で
JB-2は、ボード上の貴重なスペースを一つ使うだけで、二つの偉大な音色、そして六つの異なる音響工学的ルーティングを手に入れることができる、極めてコストパフォーマンスの高い「歪み生成のエンジンルーム」です。
もしあなたが、単なるオーバードライブやディストーションに飽き足らず、自分のピッキングニュアンスと楽曲の要求に応じて、実用性の高い音色を立体的にデザインしたいと願うギタリストならば、このJB-2はあなたのサウンドの核となるでしょう。
このペダルが示した「哲学的な対立の統合」という試みは、今後のコンパクトエフェクター設計における一つの指標として、長く語り継がれていくに違いありません!