コーラス

EWS「LA CHORUS」レビュー:伝説のアリオンサウンドを現代に!

EWS LA CHORUS のイメージ画像

ペダルをオンにした瞬間、澄み渡るカリフォルニアの青い空と、キラキラと輝く太平洋の波しぶきが見えた気がした...
「これだ、ずっと探していたのはこの『洗練感、存在感』だったんだ」

1980年代のLAスタジオシーンを席巻し、今や伝説となった「あのアリオン・コーラスサウンド」。クリーントーンにはシルクのような艶を、リードプレイには立体的な奥行きを与える、夢のようなモジュレーション。

かつて、名立たるセッションギタリストたちが密かに愛用したプラスチック筐体の名機「ARION SCH-Z。その唯一無二のサウンドを継承しつつ、プロフェッショナルの現場に耐えうる耐久性と、現代的な操作性を手に入れたのが、このEWS LA CHORUSです。

このペダルは、単調で薄っぺらいピッチの揺れを生み出す道具ではありません。弾き手の感情を増幅し、楽曲に「生命」を吹き込む、まさに「歌う」ためのエフェクターなのです。

使用レビュー:「温かさとエグみ」「爽やかで洗練」の両刀使い

EWS LA CHORUSは、相反する二つの顔を完璧に使い分ける「二刀流」です。

BBD回路が紡ぐアナログ特有の太く湿った音像は、セッティング次第で毒々しいまでの「エグみ」を露わにし、スピーカーがのたうち回るような野生的なうねりを生み出します。しかし一転、TONEを右に振れば、カリフォルニアの潮風を浴びるような「爽やかで洗練」されたクリスタル・クリーンへ。

伝説のARIONを昇華させたこの一台は、ヴィンテージの泥臭さと現代的な透明感を自在に行き来します。泥臭いブルースから都会的なAORやフュージョンまで、この揺らぎ一つで楽曲の表情は劇的に変わる。これほどまでに「歌う」コーラスは、他に類を見ません。

伝説のARION SCH-Zを「完璧」を超えて昇華させた回路

EWS LA CHORUSの核心は、多くのプロギタリストが「これにしか出せない音がある」と断言したARION SCH-Zの回路設計をベースにしている点にあります。

しかし、単なるコピーではありません。オリジナルの弱点であったプラスチック筐体の脆弱性、スイッチング時の音痩せ、そして極端な音量変化を、日本の職人集団E.W.S.が見事に解消。オリジナルの「マジック」を維持しながら、信頼性を極限まで高めています。

BBD素子による濃密で有機的なアナログサウンド

デジタルコーラスでは決して再現できない、BBD「バケット・ブリゲード・デバイス」(遅延素子)を用いたフルアナログ回路。その音色は、どこまでも滑らかで、耳に心地よい温もりを持っています。高域がキンキンと刺さることなく、低域がぼやけることもない。まるで上質なヴィンテージアンプのトーンのように、楽器の芯を捉えたまま美しく広がります。

独立したDry/Wet、2つのトーンコントロールによる前人未到の音作り

オリジナルのSCH-1が持っていた構造的制約―ドライとウェットのトーンが常に連動してしまう―を、LA CHORUSは完全に克服しました。

独立したDry ToneとWet Toneノブにより、原音とコーラス音それぞれの周波数特性を個別に調整可能。ドライ音を煌びやかに保ちながらウェット音をマイルドにする、あるいはその逆も自在。この革新的なコントロールが、「音痩せしないコーラス」「歪みと相性の良いコーラス」という、相反する要求を同時に満たすのです。

セッションでバリエーションが劇的に拡がる―これがプロフェッショナルたちがLA CHORUSを選ぶ最大の理由です。

エグみと上品さが共存する独特のキャラクター

LA CHORUSのサウンドを一言で表現するなら「オーガニックでいて派手、されど上質」。これは矛盾した表現のようですが、実際に音を出すとその意味が理解できます。

ヴァイブレーションのような水流感を持ちながら、決して下品にならない絶妙なバランス。他社のどのコーラスとも一線を画す、ARIONコーラス独特の個性がここにあります。前モディファイ品より若干強まった揺れ感が、さらなる表現力を生んでいます。

疑似レズリースピーカーを彷彿とさせる高速モジュレーション

Speedを最大付近まで上げると、まるでヴィンテージのドップラー効果を伴う回転スピーカーのようなサウンドが得られます。

その揺らぎは無機質で機械的なピッチ変化ではなく、空気が震えるような立体感を伴います。オルガンライクなバッキングから、サイケデリックなリードまで、表現の幅は無限です。

※中期のマイケル・ランドウ氏は、このセッティングが大のお好みでしたね!

LAスタジオシーンのDNAを受け継ぐ設計思想

80年代、世界を虜にした「あの音」の正体

1980年代、マイケル・トンプソンやマイケル・ランドウといったLAのトップセッションプレイヤーたちが作り上げた、透明感溢れるクリーントーン。その秘密のスパイスが、ARIONのコーラスでした。

フュージョン、AOR、ポップスの黄金時代。あの煌めくギターサウンドの背後には、SCH-1の「エグい揺れ」がありました。それは決して綺麗なだけのコーラスではなく、存在感と太さを持った、音楽的に「主張するコーラス」だったのです。

EWS LA CHORUSは、その歴史的背景をリスペクトし、当時のレコードから流れてくる「あの感触」を、現代の機材環境で再現することを目的に開発されました。

「LA」という名に込められた誇り

モデル名に冠された「LA」は、まさにその黄金時代のサウンドに対するオマージュです。派手すぎず、しかし圧倒的な存在感を放つ。ミックスの中で埋もれることなく、ギターの帯域を美しくデコレーションする。その洗練された響きは、まさに大都会の洗練と、西海岸の開放感を同居させたかのようです。

詳細スペック&ビジュアルインプレッション

基本仕様

項目詳細
製品名EWS LA CHORUS
タイプアナログ・コーラス / 空間系
回路方式BBDアナログ遅延素子
電源9VDC(センターマイナス)/ 9V電池対応
消費電流約15mA
寸法約113mm × 62mm × 52mm
製造国日本(E.W.S. / PCI Japan)
参考価格¥27,000前後

ミニマリズムと機能性の融合

LA CHORUSのルックスは、シンプルながらも高級感が漂います。鮮やかなオーシャンブルーの筐体に、ホワイトのレタリング。5つのノブは操作性に優れ、どの位置に設定されているかが一目でわかります。

スイッチのクリック感は非常にスムーズで、切り替え時のショックも最小限。LEDの輝度も適切で、屋外のライブステージから暗いスタジオまで、あらゆる状況で高い視認性を確保しています。

音響分析:アナログコーラスが描く周波数と位相の世界

BBDがもたらす「時間のゆらぎ」

LA CHORUSは、信号をバケツリレーのように次々と転送するBBD素子を使用しています。この過程で発生するわずかな高域の減衰と、クロックノイズをカットするためのフィルター処理が、デジタルでは出せない「温かみ」を生みます。

  • 低域: タイトに保たれつつ、モジュレーションによって豊かな広がりを持つ。
  • 中域: ギターの最も美味しい帯域が強調され、音が前に出てくる。
  • 高域: 角が取れた丸みのある響きになり、聴感上の「痛さ」が消える。

位相の魔法:なぜモノラルなのに広がって聞こえるのか?

LA CHORUSの最大の魅力は、その「立体感」です。物理的にはモノラル出力ですが、コーラスがかかった成分がドライ音(原音)と複雑に干渉し合うことで、聴き手の脳内には左右に広がるステレオのような空間が描き出されます。

これは、ARIONから受け継いだ独自の位相特性によるもので、他の「揺れるだけ」のコーラスとは一線を画すポイントです。

ジャンル別完全攻略セッティング集:5つのノブと3つのモードを使い倒す

EWS LA CHORUSの真骨頂は、エフェクト音(Wet)と原音(Dry)それぞれのトーンを独立して調整できる点にあります。さらに3つのモードを切り替えることで、時代背景の異なる「揺らぎ」を自在に演出可能です。

80's LA Studio Clean:クリスタルな輝きと透明感

「爽やかで洗練」を極めた、あの黄金時代のクリーントーン。

  • Mode: Black(クリアでレンジの広いSCH-1サウンド)
  • Rate: 10時
  • Depth: 2時
  • Wet Tone: 2時(エフェクトに煌めきを付加)
  • Dry Tone: 12時(原音の芯を維持)
  • Volume: 1時(音量落ちを防ぐ微ブースト)

Blackモード特有のHi-Fiな質感に、Wet Toneを強調することで、12弦ギターのような煌びやかさを演出します。コンプレッサーとの併用で、さらに洗練された都会的な響きになります。

Fusion / Blues Lead:中域の粘りと「歌う」エグみ

ソロを際立たせる、太く有機的なモジュレーション。

  • Mode: Gray(中域がプッシュされるSCH-Zサウンド)
  • Rate: 9時
  • Depth: 1時
  • Wet Tone: 10時(少しダークにして落ち着かせる)
  • Dry Tone: 11時(中低域に厚みを出す)
  • Volume: 2時(リード時に存在感を出すブースト設定)

Grayモードによる中域の持ち上がりを活かした設定です。Wet Toneを少し絞ることで、歪ませたソロでも耳障りにならず、リードプレイに独特の「エグみ」と「粘り」を注入します。

Psychedelic Vibrato:異次元のピッチ・ワープ

Vibrateモードによる、完全なピッチ揺らぎの世界。

  • Mode: Vibrate(エフェクト音のみを出力するビブラート)
  • Rate: 3時(高速回転)
  • Depth: 2時
  • Wet Tone: 12時
  • Dry Tone: (無効:Wetのみの出力となるため)
  • Volume: 12時

原音をカットし、BBD回路によるピッチの変化のみを抽出。レズリースピーカーの高速回転のようなサウンドから、テープの回転ムラのようなLo-Fiな揺らぎまで、実験的なサウンドスケープに最適です。

Modern Neo-Soul:温かさと立体感の共存

現代的なメロウさと、アナログの温もり。

  • Mode: Black
  • Rate: 11時
  • Depth: 3時(深めに設定)
  • Wet Tone: 9時(エフェクトを甘くこもらせる)
  • Dry Tone: 2時(原音をクッキリさせて輪郭を出す)
  • Volume: 12時

「Wetは暗く、Dryは明るく」設定するテクニカルなセッティング。深めの揺らぎが背景に溶け込みつつ、ギターの輪郭は失われない、現代的でドリーミーなテクスチャーを作り出します。

スタジオ系プロが語る:EWS LA CHORUSの価値

スタジオギタリスト K氏の証言

「これまで何台ものヴィンテージ・コーラスを試してきましたが、結局ボードに残ったのはこのLA CHORUSでした。理由は単純。『ミックスした時に一番いい位置に音がいてくれるから』です。

多くのコーラスは、かけると音が引っ込んでしまうか、逆にハイが立ちすぎて耳障りになります。でもこれは、ギターの存在感を保ったまま、美しくパッケージしてくれる。特にバッキングの録音では、ダブルトラッキングしなくても十分な厚みが得られますね」

ツアーミュージシャン S氏の体験談

「ARIONの音が好きでずっと使っていましたが、ツアーの移動中に筐体が割れたり、スイッチが効かなくなったりして困っていました。EWSがこれを出してくれた時は救われた気分でしたね。

音がARIONそのもの、いや、それ以上にクリアになっているのに、あの特有の『色っぽい揺れ』はそのまま。バッファーの質もいいので、長いケーブルを引き回す現場でも安心して踏み込めます。僕にとって、これはエフェクターではなく、体の一部のようなものです」

ライバル機との徹底比較分析

項目EWS LA CHORUSBOSS CE-2WStrymon Ola
価格¥27,000前後¥26,000前後¥50,000前後
駆動方式アナログ(BBD)アナログ(BBD)デジタル(DSP)
音色の特徴艶やか・立体的素朴・温かい多機能・Hi-Fi
操作性TONEが非常に有用シンプル多彩なモード
独自性ARIONサウンドの継承CE-1/CE-2の再現dBucket技術
サイズコンパクト標準やや大きい

考察:

BOSS CE-2Wは「コーラスの原点」とも言える安心感がありますが、よりモダンで洗練された、かつ「立体的」な広がりを求めるならLA CHORUSに軍配が上がります。Strymon Olaは高機能ですが、アナログ特有の「指先に吸い付くような反応」を重視するプレイヤーにはLA CHORUSが最適です。

まとめ:「1980年代スタジオサウンドの本質」を忠実に再現

EWS LA CHORUSは、ギタープレイに懐かしくも新しい色彩と奥行きを与える「カラーパレット」です。

BBDアナログ回路が生み出す、あの甘く、時に切ない揺らぎ。伝説のARIONサウンドを現代のクオリティで蘇らせたその設計思想。そして、どんなジャンルにも馴染むTONEコントロール。

このペダルが足元にあるだけで、あなたのクリーンはより深く、あなたのリードはより雄弁になります。

「弾いている自分が一番気持ちいい」「自分の音がプロの音源のように聞こえる」という感動は、このLA CHORUSでしか味わえない特権です。

  • インスピレーションの源: 踏むたびに新しいメロディやアルペジオが浮かんでくる
  • 表現の拡張: 繊細なタッチに呼応する有機的な反応
  • 一生モノの相棒: 日本製の堅牢な作りと、飽きのこない究極のトーン

最終評価:★★★★★(5.0/5.0)

推奨度:

  • 80'sサウンド/フュージョン愛好家: 100%
  • クリーン・トーンにこだわる人: 100%
  • ARION SCH-Zファン: 100%
  • 現代のポップス/インディーロック: 90%
  • ハードロック/メタル(ソロ用): 80%

こんな人に特におすすめ:

  • 「あと一歩、クリーンの音がプロっぽくならない」と悩んでいる人
  • デジタルのコーラスにどこか物足りなさを感じている人
  • スタジオギタリストのような、洗練されたリードトーンを作りたい人
  • 一生使い続けられる、本物のコーラスを探している人

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