イコライザー

MXR「M108S Ten Band EQ」レビュー:説得力マシマシの10バンドEQ

MXR M108S のイメージ画像

MXR M108S Ten Band EQのスライダーをほんの少し動かしただけで、それまで抱えていたトーンの悩みが嘘のように消えた瞬間を、今でも鮮明に覚えています。アンプのEQでは決して到達できなかった「理想の音色」。バンドの中で埋もれていたギターサウンドが、まるで霧が晴れるように前面に躍り出た。それは単なる「音量アップ」ではなく、「音楽的な存在感の獲得」でした。

「周波数を正確にコントロールできる10個のスライダーを持つグラフィックイコライザー」であるM108S。その精密な音色調整能力を、なんとボックス一台で実現してしまった革命的デバイス―それがMXR M108S Ten Band EQなのです。

使用レビュー:なぜM108Sなのか?他とは違う5つの理由

1. 音質劣化ゼロの18V駆動設計

「一般的な9V駆動のペダルとは次元が違う音質」―これがM108Sの第一印象です。付属の18VアダプターECB004による駆動は、単なる電圧の違いではありません。より広いヘッドルーム、クリーンな信号伝達、そして何よりノイズフロアの低さ。スタジオグレードの音質を足元に実現する秘密は、この高電圧設計にあったのです。

実際、Eddie Van Halenをはじめとする伝説的ギタリストたちがMXR製品を愛用し続けてきた理由も、この妥協なき音質設計にあると言えるでしょう。

2. ノイズリダクション回路の威力

「アップグレードされたノイズリダクション回路により、これまでのモデルを遥かに凌駕する静粛性」を実現。10バンドすべてをブーストしても、サーッというノイズは最小限。これは単なる音量調整ツールではなく、「音楽制作の現場で使える」プロフェッショナルツールであることの証明です。

レコーディング時、バックトラックとの分離感も抜群。DAWでの後処理を最小限に抑えられるのは、エンジニアにとっても大きなメリットでしょう。

3. デュアルアウトプットの可能性

「2つのアウトプット端子を装備することで、別々のシグナルチェーンに信号を送れる」という革新的機能。メインアンプとサブアンプの同時駆動、レコーディング時のダイレクトモニター、さらにはステレオセットアップまで―一台で多様な使用法に対応します。

ライブでメインアンプが故障した時、すぐにバックアップアンプへ切り替えられる安心感。これはプロの現場では計り知れない価値があります。

4. 視認性抜群のLEDスライダー

「暗いステージでも一目で設定が分かる明るいLED」―これは単なる見た目の派手さではありません。ライブ中、瞬時に設定を確認し調整できる機能性。各周波数帯がどれだけブースト/カットされているか、光の位置で直感的に把握できる設計は、実戦で真価を発揮します。

そしてこの発光具合い、すごくカッコいい!

5. 真のトゥルーバイパス設計

「エフェクトOFF時は完全に信号経路から切り離されるトゥルーバイパススイッチング」により、ギター本来のトーンを一切損ないません。ペダルボードに組み込んでも、使わない時は透明な存在。これこそプロが求める「あるべき姿」です。

周波数特性の深層:10バンドが織りなす音響世界

5バンドや6バンドのEQも存在しますが、M108Sの10バンド構成(1オクターブごと)は、音のスペクトルを精密にコントロールするための「解像度」を劇的に高めます。

ギターの最も重要な帯域はミッドレンジに集中していますが、10バンドであれば、500Hzの「ボディ」と1kHzの「アタック」を独立して調整し、さらに2kHzの「プレゼンス」と4kHzの「エッジ」を細かく分離して調整することが可能です。

私たちは音を聴くとき、無意識のうちにその音の「意味」を判断しています。EQは、その意味を意図的に強調したり、隠蔽したりする「音の文法」です。

この「音の文法」の微調整の能力こそが、M108Sを単なるトーンペダルではなく、サウンドの精密外科医たらしめる所以です。

超低域:31.25Hz - 音の土台を構築

最低域の31.25Hzは、人間の可聴域ギリギリの超低音。「これ、ギターに必要?」と思うかもしれませんが、実はここが重要。バスドラムやベースとの棲み分け、音圧感のコントロールに効果を発揮します。

カット推奨シーン:

  • バンドアンサンブルでの住み分け
  • ローノイズの除去
  • タイトなメタルサウンド

ブースト活用シーン:

  • ソロギターでの重厚感
  • ダウンチューニング時の存在感
  • スタジオレコーディングでの迫力

低域コア:62Hz & 125Hz - 楽器の骨格

62Hzと125Hzは、ギターサウンドの「重心」を決定づける帯域。ここを操ることで、音の太さ、暖かみ、パワー感をコントロールできます。

62Hz調整の効果:

  • ブースト:豊かで温かみのある低音
  • カット:スッキリとしたタイトな低域

125Hz調整の効果:

  • ブースト:パワフルな低音の存在感
  • カット:ボワつきの除去、明瞭度向上

中低域の要:250Hz & 500Hz - 音楽的存在感

250Hzから500Hzは、ギターが「バンドの中で聴こえる」ために最も重要な帯域。ここが適切に調整されていないと、どんなに良い機材を使っても音が埋もれてしまいます。

250Hz - 暖かみとボディ: 多くのギタリストが見落としがちなこの帯域こそ、「音の厚み」の源泉。適度にブーストすることで、フルレンジでバランスの取れたトーンが実現します。

500Hz - 音の芯: ギターの「キャラクター」が最も表れる周波数。ストラトのカラッとした質感も、レスポールの甘いトーンも、この帯域の調整で際立ちます。

中域の心臓部:1kHz & 2kHz - 表現力の源

1kHzと2kHzは、ギターの「歌心」を左右する決定的な帯域。ここを制するものが、感動的な演奏を生み出します。

1kHz - プレゼンスの中心: 「前に出る音」と「引っ込む音」の分岐点。わずか2〜3dBの調整で、劇的に存在感が変化します。ソロパートで抜けが欲しい時、ここをブーストすることで魔法のような効果が得られるのです。

2kHz - アタックとクリアネス: ピッキングのニュアンスが最も伝わる帯域。フラットピッキングのキレ、フィンガーピッキングの繊細さ―すべてがここに集約されます。

高域の輝き:4kHz & 8kHz & 16kHz - 空気感と煌めき

高域3バンドは、サウンドに「空気」と「輝き」をもたらす魔法の周波数帯。

4kHz - 明瞭度とエッジ: 子音の明瞭さ、音符の分離感を決定。カッティングのシャープさはここで作られます。

8kHz - 倍音の煌めき: ギターサウンドに「艶」と「高級感」を与える帯域。過度にブーストすると耳障りになりますが、適切に調整すればスタジオサウンドの輝きが手に入ります。

16kHz - 超高域の空気感: 人間の可聴域上限に近いこの帯域は、「空間の広がり」を演出。微妙なブーストで、まるでコンデンサーマイクで録音したような空気感が生まれます。

プロフェッショナルの証言:M108Sとの邂逅

レコーディングエンジニア K氏の体験

「アナログコンソールのEQセクションと遜色ない音質。いや、むしろフットスイッチ一つでバイパスできる利便性を考えれば、場合によってはコンソールを超える実用性があります。

特に印象的だったのは、複数の周波数を同時にブーストしても音が濁らないこと。これは回路設計の優秀さを物語っています。通常、安価なEQでは各バンドが干渉し合い、結果として不自然な音になりがちです。しかしM108Sは違う。まるで個別のパラメトリックEQを10個並べたような精密さなのです」

ライブサウンドエンジニア R氏の評価

「PAの立場から見ても、M108Sを使うギタリストのサウンドは扱いやすい。なぜなら、既にギター側で適切な周波数調整がなされているから。

ライブハウスの音響特性は千差万別。アンプだけの音作りでは、会場ごとに大きく印象が変わってしまいます。しかしM108Sで基本的なトーンを確立しておけば、PA側の調整は最小限で済む。

これはバンド全体のサウンドクオリティ向上に直結します。ギターだけが突出したり埋もれたりすることなく、常にベストバランスでミックスできるのですから」

プロギタリスト(知人) M氏の告白

「正直に言うと、最初は『たかがEQ』『EQペダルなんて邪道』と思っていました。『良いギターと良いアンプがあれば十分』というピュアリスト思考だったんです。

しかし、あるレコーディングで使わざるを得ない状況になり、渋々M108Sを試しました。結果?完全に考えが変わりました。

自分が何十年もアンプのツマミで悩んでいたことが、M108Sなら数分で解決したんです。『ああ、俺が出したかった音はこれだ』という明確な答えがそこにありました。

今ではペダルボードの最重要ポジション、オーバードライブの直後に常設しています。もうこれなしでは演奏できません」

MXR M108S 主な使用アーティスト

MXRの10バンドEQは、その正確な周波数制御能力と高いヘッドルーム(18V駆動)により、特にハイゲインや複雑な音作りをするジャンルで絶大な信頼を得ています。

アーティスト名バンド/プロジェクト主な使用用途と音響的役割
Zakk WyldeOzzy Osbourne, Black Label Society強烈なミッドブースト:ワウペダルのような効果(ミッドレンジの「コブ」)を作り出し、彼の代名詞である「唸るような」リードトーンとハーモニクスを強調するために使用。歪みペダルの前段に接続されることが多い。
James HetfieldMetallicaディストーションの補正と輪郭付け:アンプ(MESA/Boogieなど)のセッティングに加え、ミッドレンジを調整し、スラッシュメタルのタイトで分厚いリフサウンドの輪郭を明確にするために使用。
Kirk HammettMetallicaソロ時のブーストとトーンシェイピング:ソロ演奏時に音量を持ち上げると同時に、ミッドハイ(1kHz〜4kHz)をブーストすることで、ミックスの中で埋もれない「泣き」のエッジを与える。
John FruscianteRed Hot Chili Peppersファズ/ディストーションサウンドの調整:特にヴィンテージ系のファズの音色をタイトにし、不要なローエンドをカットして、彼の求めるクリアでありながら荒々しいサウンドを完成させる。
Dave GrohlFoo Fighters音色の均一化と微調整:異なるギターやアンプを使用する際の音色のばらつきを調整し、一貫性のあるロックトーンを保つために使用。ライブでの即座な音色調整に活用。
Les ClaypoolPrimusベースギターの強調と音作り:ベーシストながらM108Sを多用。特定の周波数(特に中低域)をブースト/カットすることで、彼のユニークなスラップやタッピングのトーンを強調。
Jerry CantrellAlice in Chainsダークでヘヴィなミッドレンジの創出:彼の特徴的なドロップチューニングのリフと、重厚で暗いサウンドを実現するため、特定のミッドレンジを調整し、アンプの歪みを補強。
Tom MorelloRage Against the Machine, Audioslave特定の音色のカット:音色を劇的に変化させるために、特定の周波数帯を極端にカットしたり、ブーストしたりして、エフェクティブなサウンドの「出発点」として活用。

ライバル機との徹底比較

vs BOSS GE-7:ベストセラーとの対決

項目MXR M108SBOSS GE-7
価格¥27,000前後¥15,000前後
バンド数10バンド7バンド
駆動電圧18V9V
周波数レンジ31.25Hz-16kHz100Hz-6.4kHz
アウトプットデュアルシングル
ノイズ性能極めて優秀標準的

BOSS GE-7は入門用として優秀ですが、プロユースを考えるならM108Sが明らかに上位です。特に周波数レンジの広さは決定的な差となります。

vs Empress ParaEq:ブティック対決

項目MXR M108SEmpress ParaEq
EQタイプグラフィックパラメトリック
操作性視覚的・直感的高度・複雑
価格¥27,000前後¥47,000前後
ライブ適性非常に高いやや低い(調整時間要)
周波数精度固定10ポイント可変3バンド

Empress ParaEqはより精密な調整が可能ですが、ライブでの実用性ではM108Sが勝ります。グラフィックEQの「見てわかる」利点は計り知れません。

詳細スペック&ビジュアルインプレッション

基本仕様

項目詳細
製品名MXR M108S Ten Band EQ
タイプグラフィックイコライザー
バンド数10バンド
周波数帯31.25Hz, 62Hz, 125Hz, 250Hz, 500Hz, 1kHz, 2kHz, 4kHz, 8kHz, 16kHz
ブースト/カット各バンド±12dB
電源18VDC(付属アダプターECB004)
消費電流約50mA
入力インピーダンス1MΩ
出力インピーダンス470Ω
入出力端子INPUT×1, OUTPUT×2
スイッチングトゥルーバイパス
寸法約124mm × 92mm × 57mm
重量約350g
筐体材質アルミニウム
製造国アメリカ
参考価格¥27,000前後

デザイン哲学:機能性とビジュアルの融合

M108Sの外観は、「プロツール」としての矜持を体現しています。シルバーのアルミニウム筐体は、単なる見た目の美しさではなく、電磁シールドと堅牢性を両立させた実用設計。

12個のLED付きスライダーが整然と並ぶ様は、まるで小型のレコーディングコンソール。暗いステージでも、各周波数の設定が光の位置で一目瞭然。これは40年以上の歴史を持つMXRブランドが培ってきた「使い手の立場に立った設計思想」の結晶です。

フットスイッチは確実なクリック感を持ち、誤操作を防ぐ適度な硬さ。ステータスLEDは極めて明るく、照明が当たるステージでも視認性抜群です。

ジャンル別完全攻略セッティング集

クラシックロック:ヴィンテージトーンの再現

Volume: 0dB (12時)
Gain: 0dB (12時)
31.25Hz: -3dB
62Hz: +2dB
125Hz: +3dB
250Hz: +2dB
500Hz: +1dB
1kHz: 0dB
2kHz: +2dB
4kHz: +3dB
8kHz: +1dB
16kHz: 0dB

推奨楽曲:Led Zeppelin「Whole Lotta Love」、Cream「Sunshine of Your Love」

70年代ブリティッシュロックの温かみあるトーン。中低域を厚くしつつ、高域で存在感を出す設定です。超低域をカットすることで、ヴィンテージアンプ特有の引き締まった低音を再現します。

ハードロック:80年代パワーサウンド

Volume: +3dB (2時)
Gain: +2dB (1時)
31.25Hz: -6dB
62Hz: 0dB
125Hz: +2dB
250Hz: -2dB
500Hz: -1dB
1kHz: +3dB
2kHz: +4dB
4kHz: +5dB
8kHz: +3dB
16kHz: +2dB

推奨楽曲:Van Halen「Panama」、Ratt「Round and Round」

80年代LAメタルの象徴的なサウンド。中域をやや抑え、高域を強調することで、エッジの効いた現代的なトーンを実現。ソロでの抜けも抜群です。

モダンメタル:ハイゲインモンスター

Volume: -2dB (10時)
Gain: +4dB (2時)
31.25Hz: -12dB
62Hz: -6dB
125Hz: -3dB
250Hz: -2dB
500Hz: +2dB
1kHz: +3dB
2kHz: +4dB
4kHz: +6dB
8kHz: +2dB
16kHz: 0dB

推奨楽曲:Meshuggah「Bleed」、Periphery「Scarlet」

超タイトな現代メタルサウンド。低域を大胆にカットし、ダウンチューニングでも明瞭なリフワークを実現。高域は適度に抑え、耳障りにならない程度の切れ味を確保します。

ブルース:泣きのリードトーン

Volume: +1dB (1時)
Gain: -2dB (10時)
31.25Hz: -6dB
62Hz: +4dB
125Hz: +5dB
250Hz: +3dB
500Hz: +2dB
1kHz: +1dB
2kHz: -1dB
4kHz: 0dB
8kHz: -2dB
16kHz: -3dB

推奨楽曲:B.B. King「The Thrill Is Gone」、Stevie Ray Vaughan「Texas Flood」

温かみと表現力を重視したセッティング。低域から中域にかけて豊かに、高域は抑えめにすることで、ヴィンテージアンプのような甘いトーンが得られます。

ファンク:カッティングマシーン

Volume: +2dB (1時)
Gain: 0dB (12時)
31.25Hz: -9dB
62Hz: -6dB
125Hz: -3dB
250Hz: +2dB
500Hz: +4dB
1kHz: +3dB
2kHz: +5dB
4kHz: +6dB
8kHz: +4dB
16kHz: +2dB

推奨楽曲:Nile Rodgers「Le Freak」、Prince「Kiss」

カッティングに特化した攻撃的セッティング。低域を大胆にカットし、中高域を強調。ストラトキャスターとの相性が特に良く、シャープで歯切れの良いリズムギターが実現します。

ジャズ:ウォームトーン

Volume: 0dB (12時)
Gain: -3dB (9時)
31.25Hz: -3dB
62Hz: +2dB
125Hz: +4dB
250Hz: +3dB
500Hz: +2dB
1kHz: 0dB
2kHz: -2dB
4kHz: -4dB
8kHz: -6dB
16kHz: -6dB

推奨楽曲:Wes Montgomery「Four on Six」、Pat Metheny「Bright Size Life」

ジャズギター特有の丸く温かいトーン。高域を大きくカットし、中低域の豊かさを強調。フルアコースティックギターとの相性が抜群です。

アンビエント:空間系サウンド

Volume: 0dB (12時)
Gain: 0dB (12時)
31.25Hz: -6dB
62Hz: -3dB
125Hz: 0dB
250Hz: +1dB
500Hz: 0dB
1kHz: -2dB
2kHz: +2dB
4kHz: +3dB
8kHz: +5dB
16kHz: +6dB

推奨楽曲:The Edge (U2)「Where the Streets Have No Name」、Radiohead「Paranoid Android」

ディレイやリバーブとの相性を最適化したセッティング。超高域を強調することで、エフェクトの「空気感」が際立ちます。

セットアップ戦略:M108Sを最大限に活用する

シグナルチェーンのポジショニング

M108Sの配置位置により、得られる効果は劇的に変わります。

パターン1:ギター → EQ → オーバードライブ → アンプ

  • 効果:ギターそのものの音色を整形
  • 用途:ピックアップ特性の補正、ギター本体の音作り
  • メリット:根本的なトーン改善

パターン2:ギター → オーバードライブ → EQ → アンプ

  • 効果:歪んだ音色の整形
  • 用途:バンドアンサンブルでの存在感調整
  • メリット:実践的な音作り(最も一般的)

パターン3:ギター → オーバードライブ → アンプSEND → EQ → アンプRETURN

  • 効果:アンプ全体のトーンシェイピング
  • 用途:会場の音響特性への対応
  • メリット:プリアンプを含めた総合的調整

デュアルアウトプット活用術

ステレオアンプセッティング: OUTPUT 1とOUTPUT 2から別々のアンプへ接続。同じEQ設定で2つのアンプを鳴らせば、ステレオイメージの広がりと音圧の向上が得られます。

メイン/バックアップ構成: メインアンプが故障してもすぐに切り替え可能な安全設計。プロのライブでは必須の考え方です。

レコーディング用デュアルパス: OUTPUT 1をアンプへ、OUTPUT 2をオーディオインターフェースへ。同時に異なるサウンドを録音し、後でブレンドするプロテクニックが可能に。

トラブルシューティング&メンテナンス

よくある問題と解決法

問題1:音が出ない

  • チェック項目:18V電源の接続、トゥルーバイパスON/OFF、ケーブル接続
  • 解決策:付属の18Vアダプター使用を確認(9Vでは動作しません)

問題2:ノイズが増えた

  • 原因:過度なブースト、他のペダルとの干渉
  • 解決策:各バンドを一旦フラットに戻し、必要最小限のブースト/カットに留める。特に隣接する周波数帯を同時に大きくブーストすると相互干渉が発生します

問題3:音が痩せた気がする

  • 原因:低域の過剰カット、中域の削りすぎ
  • 解決策:31.25Hz〜250Hzを見直し。完全にカットせず、-3dB程度の緩やかな調整に留めることで、音の厚みを維持できます

問題4:バンドミックスで埋もれる

  • 原因:他の楽器と周波数が被っている
  • 解決策:1kHz〜4kHzをブースト。ギターの「美味しい帯域」を強調することで、確実に前に出ます

長期使用のためのケア

スライダーのメンテナンス: 月1回程度、接点復活剤をスライダー部分に軽く噴霧。上下に数回動かして馴染ませることで、スムーズな動作と接点の酸化防止を実現します。

筐体の保護: アルミニウム筐体は傷つきやすいため、ペダルボードでの隣接配置に注意。ベルクロテープは強力なものを使用し、ライブ中の脱落を防ぎましょう。

電源管理: 必ず18V電源を使用。9Vでは起動しないか、起動しても性能が大幅に劣化します。パワーサプライから供給する場合も、18V出力端子を使用してください。

定期的な動作確認: 3ヶ月に一度、全スライダーをフラットから最大まで動かす「エクササイズ」を実施。長期間動かさないスライダーは接点不良を起こしやすくなります。

応用テクニック:上級者向け活用法

テクニック1:ブースター的使用

全帯域をフラットに保ち、VOLUMEのみを+3〜6dB設定。これだけでクリーンブースターとして機能します。音色を変えずに音量だけを上げたいソロセクションに最適。

テクニック2:フィードバックコントロール

ハイゲイン設定でフィードバックに悩まされる場合、問題となる周波数帯をピンポイントでカット。多くの場合、250Hz〜500Hzあたりが原因です。

実践手順:

  1. フィードバックが発生する状態を作る
  2. 各スライダーを順番に下げていく
  3. フィードバックが止まった周波数を特定
  4. その帯域のみ-6dB程度カット

テクニック3:アコースティックギターの変身

エレアコのピエゾ臭さを除去する魔法の設定:

  • 250Hz: -6dB(ピエゾ特有の中域をカット)
  • 2kHz: -4dB(硬い質感を和らげる)
  • 8kHz: +3dB(自然な空気感を追加)
  • 16kHz: +4dB(艶やかさを付加)

この調整で、まるでコンデンサーマイクで録音したような自然なアコースティックトーンが得られます。

テクニック4:ダウンチューニング対策

7弦ギターやドロップチューニングで問題となる低域のボワつきを解決:

  • 31.25Hz: -12dB(完全カット)
  • 62Hz: -6dB(過剰な低音を除去)
  • 125Hz: -3dB(適度に引き締め)
  • 2kHz: +4dB(明瞭度確保)
  • 4kHz: +6dB(アタック強調)

テクニック5:スタジオ録音での活用

DAW上でのEQ処理を最小化し、録音時点で完成度の高い音を作る:

トラッキング段階: M108Sでギター本来の音を整え、最高の状態でDAWに録音。後処理での音質劣化を最小限に抑えます。

リアンプ段階: 既に録音されたDIトラックを、M108Sを通してリアンプ。周波数特性を変化させた複数テイクを録音し、ミックスでブレンドする高度なテクニック。

まとめ:「あと一歩足りない」ときの、音の司令塔

歪みの前段、エフェクトループ、ノッチフィルター、空間系との連携、マルチ楽器への応用。M108Sは、「EQはトーンの仕上げ」という常識を打ち破り、サウンドメイクのあらゆる局面に創造的な破壊をもたらします。

「欲しい音が出ない」「この歪みペダルにあと一歩足りない」と感じるすべてのプレイヤーにとって、M108Sは、その問題に対する「答え」ではなく、「答えを見つけるための方法論」を提供してくれる頼もしいヤツです!

音作りは探求です。M108Sのスライダーを動かすたびに、あなたは自分の音響的な直感と向き合い、既存のサウンドを解体し、再構築する喜びを味わうことになるでしょう。このペダルは、あなたのボードの中で最も地味に見えるかもしれませんが、間違いなく最も重要な音の司令塔となるはず!

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