
「最近のコーラスは、どうも音が細くていけない」
そう感じているアナログ・モジュレーション狂のあなたにこそ、この重厚な「イエローボックス」を捧げたい。
エフェクターボードの貴重なスペースを、まるで占領するかのように居座る巨大な筐体。MXR M134 STEREO CHORUS。マニアの間ではそのサイズ感から畏敬を込めて「黄色い冷蔵庫」などと呼ばれることもありますが(笑)、一度そのスイッチを踏み込めば、なぜこれほど大きな回路が必要だったのか、その「答え」は一瞬で理解できます。
ここにあるのは、ギターの音がまるで液体の金へと姿を変え、部屋中の空気を濃密に書き換えていくような体験。デジタル・コーラスの「点」の煌めきではなく、アナログBBD回路だけが到達できる「面」で押し寄せる圧倒的な音圧と太さ。
今回は、数々のアナログコーラスを使い倒してきた一人のマニアの視点から、MXR M134がなぜ「マニアの選択」であり続けるのか、その真実を徹底的に解剖します。
使用レビュー:アナログコーラスマニアを心酔させる理由
18V駆動が生み出す、圧倒的な「音の余裕(ヘッドルーム)」
まず、このペダルが9Vではなく「18V」で動くことの重要性を語らねばなりません。アナログコーラスの宿命である「入力過多による歪み」が、M134にはほぼ皆無です。
高出力なハムバッカーを叩きつけても、クリーンサウンドが濁ることなく、どこまでも透き通ったまま深く揺れる。この「余裕」こそが、安価なコーラスでは決して得られない、リッチで高級感のあるトーンの正体です。音が太いのに、耳を突くような不快な歪みが一切ない。これだけでM134を選ぶ価値があります。
「液体感」と「体温」を感じるアナログサウンド
内部に詰まったBBD(バケツ・ブリゲード・デバイス)素子。これが奏でる音は、デジタルシミュレーターがどれだけ頑張っても再現できない「液体っぽさ」と「体温」を含んでいます。
音が遅延し、重なり合う過程で生まれるわずかな高域の減衰。それが耳に心地よい「温かみ」となり、ギターのトーンに奥行きを与えます。冷たい金属的な揺らぎではなく、まるで呼吸しているかのような、生命力に満ちたモジュレーション。これこそが、私たちがアナログに求める全てです。
「Bass Filter」スイッチの優秀さがハンパない!
マニアが最も愛してやまないのが、この小さなボタンです。Bass Filterをオンにすると、低音域にだけはコーラスがかからなくなります。
「コーラスをかけると音がボヤける、芯がなくなる」というギタリストの永遠の悩みを、このスイッチが完璧に解決!
低域の輪郭はタイトに保ったまま、高域の倍音成分だけが美しく、豊潤に揺れる。バッキングではタイトに、アルペジオでは幻想的に。この実用性は、一度味わうと他のペダルが物足りなくなります。
自由自在に「音像のエディット」ができる独立2バンドEQ
多くのコーラスが「Tone」ノブ一つで済ませるところを、M134は「Bass」と「Treble」を独立させています。
単に明るくしたり暗くしたりするだけではありません。低域をグッと持ち上げて「壁」のような音圧を作ることも、高域を強調して80年代のクリスタル・クリーンのような煌めきを作ることも自由自在。自分のギターとアンプの特性に合わせて、コーラス成分の「質感」そのものをエディットできるのです。
左右に広がる「三次元空間」ステレオ出力
もしアンプを2台持っているなら、迷わずステレオで繋いでほしいです。M134のステレオ出力は、単に音が広がるだけではありません。
ドライ音とウェット音が空間で混ざり合い、ギターの音が自分の目の前ではなく、部屋の四隅から包み込んでくるような感覚。モノラルでは決して到達できない、文字通りの「立体音響」がそこにあります。この没入感は、可能であればスタジオなどに入って大音量で体験してみて欲しいです。
設定次第で「別人に変わる」圧倒的な可変幅
Rate、Width、Intensityという3つのコントロール。これらを組み合わせることで、M134はいくつもの顔を見せます。
微風のようなシマー、水中で音が回転しているようなロータリーサウンド、実用域を超えた過激な揺らぎ。どの設定にしても音が「細くならない」のがM134の凄みです。どのノブをどこへ回しても、音楽的な響きが損なわれません。
「一生モノ」と呼ぶにふさわしい武骨な信頼性
MXR特有の堅牢なエンクロージャー、そしてこのサイズ。現代のミニペダル・ブームに真っ向から反する「重さと大きさ」は、言い換えれば「信頼の証」でもあります。
ステージでどれだけ激しく踏み込んでも微動だにしない安定感。そして、内部回路を守り抜く強固な作り。M134は、流行に左右される使い捨ての道具ではなく、余裕で10年、20年と連れ添うことができる設計なのです。
アナログ・コーラスの美学:太さとリッチさを追求した潔さ
デジタル全盛期に、なぜ「アナログ回路」が必要なのか
現代のエフェクト技術は進歩し、数gのチップで何百通りのコーラスを作れるようになりました。しかし、M134のような「物理的な重み」を伴うサウンドは、やはりアナログ回路でしか作れません。
音が太いということは、それだけ倍音の重なりが複雑であるということ。M134の回路は、入力されたギターの信号を丁寧に扱い、アナログならではの「滲み」と「厚み」を最大限に引き出すように設計されています。この「滲み」こそが、アンサンブルの中でギターの存在感を浮き上がらせるのです。
ヴィブラートとは違う、本物の「合唱(Chorus)」体験
コーラスとは本来、複数の奏者が同時に演奏しているような厚みを作るエフェクトです。M134はその原点に忠実です。
単純にピッチを揺らして不安定にするのではなく、元の音(ドライ音)を太く補強するように揺らぎが重なります。その結果、まるでギターが3本、4本と重なって鳴っているかのような、息を呑むほどリッチなサウンドが生まれるのです。
詳細スペック&ビジュアル・チェック
基本仕様
| 項目 | 詳細 |
| 製品名 | MXR M134 STEREO CHORUS |
| 回路 | アナログBBD方式 |
| 駆動電圧 | 18V(9V電池×2、または付属18Vアダプター) |
| 消費電流 | 26mA |
| コントロール | Bass, Treble, Intensity, Width, Rate, Bass Filterスイッチ |
| 筐体サイズ | 127mm (W) × 93mm (D) × 58mm (H)(MXRの標準の約2倍強) |
| 製造国 | USA |
あえて時代に逆行=レトロで愛着感が湧くデザイン
この鮮やかなイエロー。ボードの中で最も目立つ色ですが、決して安っぽくありません。マットな質感の塗装に、質実剛健なノブ。
そして、実際に持ってみると驚くほどの重量感。この「重さ」が、サウンドの「太さ」を視覚的にも確信させてくれます。
パっと見で、素晴らしいヴィンテージトーンを絞り出してくれそうなのも良いですね〜。
マニアが伝授:M134を「最高に太く」鳴らすための秘伝セッティング
伝説の「80s LAスタジオ・クリーン」
- Bass: 2時
- Treble: 1時
- Intensity: 10時
- Width: 12時
- Rate: 9時
- Bass Filter: ONこの設定では、低域のタイトさを保ちつつ、高域のキラキラした成分だけが贅沢に広がります。ストラトのセンター+リアでアルペジオを弾けば、そこはもう80年代のスタジオの空気。音が太いので、リバーブがなくても十分に幻想的です。
漆黒の「グランジ・ドロドロ・モジュレーション」
- Bass: 3時(MAX近く)
- Treble: 9時
- Intensity: 3時
- Width: 2時
- Rate: 12時
- Bass Filter: OFFあえてBass Filterを切り、低域まで激しく揺らします。Trebleを絞ることで、アナログ特有の「重苦しい湿り気」を強調。ディストーションの後ろに繋げば、Nirvanaのあの不気味で重厚なうねりが手に入ります。
「動く音の壁」リード・ブースト
- Bass: 12時
- Treble: 12時
- Intensity: 8時(薄く)
- Width: 9時
- Rate: 2時(速め)
- Bass Filter: ON歪ませたソロに薄く、速めにかけます。音が左右に細かく揺れることで、シングルトーンに圧倒的な厚みが加わります。Bass Filterのおかげで、速弾きでも音がボヤけず、音の輪郭を維持したままコーラスの艶だけを乗せることができます。
MXR M134を愛用する伝説的アーティストたち
ハードロック/メタルの巨匠たち
歪みの後ろに繋いでも音が痩せず、逆に「太さ」をブーストできるM134は、ハイゲイン勢に絶大な信頼を得ています。
- Randy Rhoads(ランディ・ローズ)
- 詳細: 彼の伝説的なライブサウンドにおいて、ステレオで広がる厚みはこのペダルの功績が大きいと言われています。
- Slash(スラッシュ / Guns N' Roses)
- 詳細: バラードのクリーントーンや、ソロに厚みを加える際に使用。
- Zakk Wylde(ザック・ワイルド)
- 詳細: シグネチャーモデル以前からM134を愛用。18Vのヘッドルームが彼の豪快なピッキングを受け止めます。
- John Petrucci(ジョン・ペトルーシ / Dream Theater)
- 詳細: 彼の要塞のようなラックシステムの中に、この黄色い筐体が鎮座しているのが何度も目撃されています。
- Paul Gilbert(ポール・ギルバート / Mr. Big)
- 詳細: ステレオ出力の広がりと、ピッキングへの追従性を高く評価しています。
低域の魔術師たち:ベースにおける「芯」の維持
「Bass Filter」機能があるため、ベーシストにとってはM134こそが「正解」とされることが多いです。
- Cliff Burton(クリフ・バートン / Metallica)
- 詳細: 初期の名曲「Anesthesia (Pulling Teeth)」などの幻想的なベースソロにおいて、その揺らぎを支えていました。
- Robert Trujillo(ロバート・トゥルージロ / Metallica)
- 詳細: クリフの意志を継ぐかのように、彼の重厚なベースサウンドの核としてM134が組み込まれています。
- Juan Alderete(ホァン・アルデレッテ / The Mars Volta)
- 詳細: 「ヴィンテージも良いが、現行のM134も非常に有能」と断言。ベースにコーラスをかける際、最も信頼できる一台として挙げています。
洗練された空間を作る名手たち
リッチで高級感のある「面」の広がりを求める、職人気質のギタリストたちです。
- Eric Johnson(エリック・ジョンソン)
- 詳細: TC SCFに切り替える前(80年代)、あの究極のクリーントーンを支えていたのはM134でした。
- Adam Hann & Matty Healy(The 1975)
- 詳細: 現代的なポップ・アンビエントにおける、あのキラキラとした「壁」のようなコーラスサウンドの正体です。
- Jamie West-Orram(The Fixx)
- 詳細: 80年代ニューウェーブ特有の、深く、かつ音楽的な揺らぎを現在もM134で表現し続けています。
現場の証言:アナログを愛するプロたちの言葉
セッションギタリスト K氏の証言
「スタジオワークでMXR M134を使い始めてから、ディレクターからのOKが早くなりました。特にバラード系の楽曲で、コーラスの『自然な広がり』が求められる場合、このペダル一発で理想のトーンが作れます。
デジタルコーラスだと、どうしても『エフェクトをかけている感』『あと付け感』が出てしまうんです。でもM134は、まるで元々そういう音色の楽器かのように、自然に音楽に溶け込みます。これがアナログBBDの魔法なんでしょうね。
ステレオ録音時の定位感も素晴らしい。2つのマイクで録ると、ギターがトラック全体に広がって、ミックス時のパン振りがほとんど不要になります」
プロ・ブルースギタリスト H氏の言葉
「本来、コーラスなんてチャラチャラしたもんは嫌いだった。でも、M134だけは別。
18V駆動の余裕があるからか、自分のタッチを全く殺さない。強く弾けばその通りに反応し、弱く弾けば囁くように揺れる。音が『太い』だけじゃなく、『深い』んだよね。今では、バラードのリードでは欠かせない俺の相棒です。」
ライバル機との比較:なぜM134が「永遠のクラシック」なのか
vs BOSS CE-2W
BOSSは「コーラスの教科書」のような中域の甘さが魅力ですが、音の太さとレンジの広さ、そしてEQによる補正能力ではM134が圧倒します。よりクラシックで、よりプロフェッショナルな音色調整を求めるならM134一択です。
vs TC Electronic SCF Gold
SCFは非常にクリアで透明感のあるサウンドですが、M134のような「アナログの粘り」「音の太さ」とは対照的です。ハイファイさを求めるならSCF、ギタリストとしての「色気」と「肉厚なトーン」を求めるならM134でしょう。
まとめ:M134が教えてくれる「本物のコーラス」の深みと質量感
最近の「小さくて器用な」ペダルに少し飽き飽きしていませんか?
もしあなたが、自分のトーンに「本物の深み」と「圧倒的な存在感」を求めているなら、M134を試してみてください。
今まで聴いたこともないような、濃密さ、美しさ、そしてどこまでも深いアナログの貫禄の虜になるはずです。
最終評価:★★★★★(5.0/5.0)
推奨度:
- 「音が細い」と悩んでいる人: 120%
- 70s・80sサウンドの信奉者: 100%
- ステレオ環境で空気を震わせたい人: 90%
- 反ミニマリストな人: 100%(デカいです。でも、その価値はあります。)
こんな人に特におすすめ:
- アナログ回路の「温かみ」と「湿り気」を信じている人
- EQを使って、自分だけの完璧なコーラスを作りたい人
- Bass Filterで低域の解像度を保ちたい多弦・ダウンチューニング使い
- 一生使える「本物の道具」を手に入れたい人





