
「ロック黄金時代を象徴する『完成された』歪み」
MXR M78 Custom Badass '78 Distortionが生み出すのは、その名の通り、70年代後半から80年代にかけて、アリーナロックを象徴したあの「ザ・ハードロックサウンド」。
シルキーでありながら鋭く、クリーミーなのにエッジが立っている―まさにギタリストが憧れた伝説のトーン。
MXRの「Custom Badass」チームが、クラシックな歪み回路を現代のギタリストのために再設計!ヴィンテージドライブ路線を基準にしつつも、現代のアンサンブルでも決して埋もれない「牙」を持ったディストーションなのです。
BOSS DS-1と並んで、クラシック・ディストーションの教科書と評される本機の魅力をじっくり紐解いていきましょう。
使用レビュー:ザクザク感×滑舌の良さが「ザ・ハードロック」
MXR M78を踏み込んだ瞬間、押し寄せるのは「これぞ正解」と膝を打つ、圧倒的な黄金時代のハードロック・サウンドです。
このカッコ良さの秘密は、空気層を突き抜けるような鋭いザクザクとした刻みと、スタックアンプの箱鳴りを彷彿とさせる滑舌の良さの絶妙な共存。低域がタイトすぎず、絶妙な「余裕」を持って膨らむため、シングルノートでも音が細くならず、壁のように分厚いパワーコードを叩き出せます。
まさにディストーションの教科書。無骨でありながら艶っぽい、あの時代の「熱」を求めるすべてのギタリストへ贈る、究極のスタンダードです。
クラシックな回路を「Badass」に昇華させた設計思想
M78のベースとなっているのは、世界中で愛された伝統的なディストーション回路です。
しかし、Custom Badassチームはそこに大胆なメスを入れました。コンポーネントを現代の高品質なものへとアップデートし、低ノイズ化とダイナミックレンジの拡大を実現。単に歪むだけでなく、ピッキングの強弱に「呼吸」するように反応する、極めてチューブアンプ的なレスポンスを手に入れています。
「CRUNCH」ボタンがもたらす魔法の倍音
本体左上に鎮座する小さな「CRUNCH」スイッチ。これがM78を特別な存在にしています。このボタンをオンにすると、回路内のクリッピング形態が変化し、ハーモニクス(倍音)が劇的に増加します。
まるでスタックアンプのボリュームを限界まで押し上げたような、あの「ジリジリ」とした心地よい飽和感。コードを弾けば分離感が際立ち、ソロを弾けばリードが指に吸い付くような感触が得られます。
足元は踏みっぱなし、表現は手元で
多くのディストーションペダルは、ギター側のボリュームを絞ると音がこもったり、急激に痩せたりします。しかし、M78は違うんですよね〜。フルゲインの状態からギターのボリュームを絞っていくと、鈴鳴りのような極上のクランチまで滑らかに変化します。
「足元は踏みっぱなし、表現は手元で」という、プロフェッショナルなプレイスタンスを可能にしているのがMXRらしさ!
絶妙なレンジ設定のTONEコントロール
M78のTONEノブは、高域を削るだけのフィルターではありません。回していくにつれて、中高域の美味しいポイントが絶妙にシフトするように設計されています。
左に回せば、ウーマントーンを彷彿とさせる甘く太いリードサウンド。右に回せば、耳に刺さらない限界を攻めた、鋭利なハードロックサウンドへ。どの位置に設定しても「音楽的な破綻」がないのが、MXRの熟練の技です。
ブースターとしても優秀
このペダルは、出力レベルが非常に高く設計されています。OUTPUTノブを上げていくと、後段の真空管アンプを強力にプッシュする「ブースター」としての真価を発揮します。
デジタルシミュレーターでは決して得られない、物理的にアンプの空気を押し出すようなパンチ力。ライブハウスの大きなキャビネットで鳴らした時、そのポテンシャルの差は明白になります。
驚異的なコストパフォーマンス
これほどまでの音質とビルドクオリティを誇りながら、M78は非常にリーズナブルな価格帯で提供されています。
「良い音に大金は必要ない」というMXRの哲学を体現したかのような製品であり、初心者からプロフェッショナルまで、等しく「本物の歪み」を手にするチャンスを与えてくれます。
アリーナロックのDNAを継承する設計哲学

1978年、世界を変えたあのサウンド
1970年代後半、ギターサウンドに革命が起きました。それまでの荒々しいファズやオーバードライブとは一線を画す、より洗練され、より力強く、そしてより「歌う」ディストーション。
エディ・ヴァン・ヘイレンが世に放った「ブラウンサウンド」は、世界中のギタリストの理想郷となりました。M78はその「1978年」という象徴的な年号を冠し、あの時代の熱狂を現代に蘇らせるために開発されたのです。
アナログ回路への拘り
現代のエフェクト界はデジタル技術が席巻していますが、M78は頑なにフルアナログ回路を貫いています。
なぜなら、真空管アンプが歪む際の「非線形な挙動」や「複雑な倍音の絡み合い」は、やはりアナログな電子の動きでしか表現できない領域があるからです。M78を弾いた時に感じる「音の速さ」と「奥行き」は、アナログ設計だからこそ到達できた境地と言えるでしょう。
詳細スペック&ビジュアルインプレッション
基本仕様
| 項目 | 詳細 |
| 製品名 | MXR M78 Custom Badass '78 Distortion |
| タイプ | アナログ・ディストーション |
| 電源 | 9VDC(センターマイナス)/ 9V電池 |
| 寸法 | 約112mm × 61mm × 52mm |
| 重量 | 約240g |
| バイパス | トゥルーバイパス |
| 参考価格 | ¥24,000前後 |
デザインの美学
メタリックな輝きを放つグロスレッドの塗装は、ステージの照明の下で宝石のように輝きます。MXRの標準的なサイズ感は、過密なペダルボードでも場所を取らず、かつ踏みやすい絶妙なバランス。
3つのブラックノブは適度な重みがあり、演奏中の微調整も容易です。中央の「CRUNCH」ボタンは青色LEDと共に作動し、視認性も抜群。この無駄のない、機能美に溢れたルックスこそがMXRのアイデンティティです。
音響分析:歪みの質感と周波数特性
通常モード:ストレートな王道ディストーション
「CRUNCH」オフの状態では、非常にクリアでタイトなディストーションが得られます。
- 特性: 中域に程よいパンチがあり、低域が膨らみすぎないため、高速なリフでも音が潰れません。
- 適性: パンク、オルタナティブ、バッキングギターなど、リズムを重視するスタイルに最適です。
CRUNCHモード:リッチな倍音の饗宴
ボタンをオンにすると、サウンドの質感が一変します。
- 特性: 高域のきらびやかさと、中域の粘りが強調されます。コンプレッション感がわずかに増し、サスティーンが劇的に伸びます。
- 適性: ハードロックのリード、スタジアム・アンセムのような壮大なコードワークに理想的です。
ジャンル別完全攻略セッティング集
ハードロック:伝説のブラウンサウンド
- OUTPUT: 12時
- DISTORTION: 2時
- TONE: 1時
- CRUNCH: ON
ハムバッカーを搭載したギターで鳴らせば、そこはもう1978年のアリーナ。豊かな倍音がソロを華やかに彩ります。
パンクロック:タイト&アグレッシブ
- OUTPUT: 1時
- DISTORTION: 11時
- TONE: 2時
- CRUNCH: OFF
あえてCRUNCHを切り、歪みを抑えめにすることで、弦の振動がダイレクトに伝わるエッジの効いたサウンドになります。
ブルースロック:官能的なクランチ
- OUTPUT: 2時
- DISTORTION: 8時
- TONE: 11時
- CRUNCH: ON
ゲインを絞り、アウトプットを上げることで、アンプの性能を引き出す設定。ピッキングひとつでクリーンとドライブを自在に行き来できます。
知人プロが語る:MXR M78の安心感

スタジオギタリスト S氏の証言
「現場で『とりあえずロックな音を』と言われたら、迷わずM78を出しますね。
どんなアンプに繋いでも、ちゃんと『あの音』にしてくれる安心感があります。特にCRUNCHボタンの効きが絶妙で、ミックスの中でギターをどこに配置したいかによって使い分けられるのがプロ仕様だなと感じます。」
MXR M78 Custom Badass '78 Distortion 主な使用アーティスト
Doug Wimbish(ダグ・ウィンビッシュ)
Living Colourのベーシストであり、エフェクトの魔術師としても知られる彼は、ベース用としてM78を導入しています。ギター用ペダル特有の「ザクザク感」を低域に加えることで、アンサンブルを切り裂くようなアグレッシブなベーストーンを構築しています。
David Brewster(デヴィッド・ブルースター)
プロのセッションギタリストであり、著名なギター・インストラクターでもある彼は、M78のプロモーションやデモ演奏において、その「ブラウンサウンド」の再現性の高さを実証しています。特に「CRUNCH」スイッチによるハーモニクスの変化を絶妙に操るプレイは、M78のポテンシャルを最大限に引き出しています。
Riccardo Cherubini(リッカルド・ケルビーニ)
数多くのプロ現場で活躍するギタリスト。彼はMXR Badassシリーズ(M78、Modified O.D.、Super Badass)の愛用者として知られており、特に70年代から80年代のクラシック・ロックサウンドを再現する際のメイン・ディストーションとしてM78をチョイスしています。
Jay Howie(ジェイ・ハウィー)
ブルース・ロックの旗手として知られる彼は、自身のライブギアにM78を組み込んでいます。ストラトキャスター等のシングルコイルと組み合わせ、手元のボリューム操作でクリーンから激しい歪みまでを制御する、まさに「M78を楽器の一部として」扱うスタイルを確立しています。
ライバル機との徹底比較分析
vs BOSS DS-1 Distortion:永遠のスタンダードとの対決
| 項目 | MXR M78 | BOSS DS-1 |
| 歪みの質感 | 真空管ライクな厚みと粘り | 鋭くエッジの効いた粒立ち |
| 中低域の響き | 適度なブーミーさでリッチ | スッキリとタイトで明快 |
| 操作性 | CRUNCHスイッチで2つの顔 | シンプルな1モード |
| 得意ジャンル | ハードロック / クラシックロック | パンク / オルタナ / ポップス |
DS-1は世界で最も売れているディストーションですが、音色は非常にブライトで直線的です。
対するM78は、もっと「アンプの箱鳴り」に近い質感を備えています。DS-1が「鋭利なカミソリ」なら、M78は「重厚な斧」。コードを弾いた時の低域の押し出し感や、ソロでの粘り強いサスティーンを求めるなら、迷わずM78を選ぶべきでしょう。
vs ProCo RAT2:ストリートの狂犬との比較
| 項目 | MXR M78 | ProCo RAT2 |
| 分離感 | 深く歪ませてもコード感が残る | 歪むほどにファズ的に潰れる |
| トーン制御 | 扱いやすいHi-FiなTONE | 独特な効きのFILTER |
| ゲイン幅 | クランチからハイゲインまで | 歪みからファズ領域まで |
| キャラクター | 優等生なスタックアンプサウンド | 暴れ馬のようなインダストリアル |
RAT2は歪みを深くするほど低域が潰れ、ファズのような凶暴なキャラクターに変貌します。
これが唯一無二の魅力ですが、M78はどれだけゲインを上げても「ハードロックとしての品格」を失いません。ザクザクとした刻みの明瞭さと、ピッキングのニュアンスを活かしたいプレイヤーにとって、M78の解像度は圧倒的なアドバンテージとなります。
vs Fulltone OCD:ブティック系ドライブとの境界線
| 項目 | MXR M78 | Fulltone OCD |
| 歪みの深さ | 明確なディストーション | オーバードライブの延長線上 |
| コンプレッション | 心地よい圧縮感がある | 非常にオープンでダイナミック |
| 価格 | コスパ抜群(1万円台前半) | やや高価 |
OCDは「アンプそのもの」のような歪みとして有名ですが、ハードロックをやるには少し「綺麗すぎる」と感じることもあります。
M78は、OCDに近いアンプライクな反応を持ちつつも、ディストーションペダルらしい「派手な食いつき」を兼ね備えています。より「ロックな攻撃性」を足元に求めるなら、M78のキャラクターが最適解となります。
まとめ:メインの歪みとして活躍する一軍選手
MXR M78 Custom Badass '78 Distortionは、数多のブティックペダルや高価なマルチエフェクターを差し置いて、エフェクターボードの最前列に君臨し続ける「不動の一軍エース」としての風格を備えています。
最大のアドバンテージは、どんな現場、どんなアンプを前にしても「これさえ踏めば勝てる」という絶対的な安心感です。バッキングでは持ち前の重厚感でアンサンブルの屋台骨を支え、ソロでは「CRUNCH」スイッチによって主役の座を鮮やかに奪い取る。この動と静の切り替え、そしてピッキング一つでクリーンまで操れる表現の幅広さは、ライブパフォーマンスにおいて代えがたい武器となります。
もし「メインの歪み探し」をしているなら、ぜひ候補のひとつにして欲しい逸品です!
