オーバードライブ ディストーション

STRYMON「Riverside」レビュー:扱いやすい!マルチドライブの進化系

Strymon Riverside のイメージ画像

Strymonのペダルは、しばしば「デジタル技術を駆使したアナログの再現」と評されますが、このRiversideは純粋なアナログ回路をコアに持ちながら、その動作をデジタルでも細かく制御することで、これまでのドライブペダルの概念を覆しました。

「マルチドライブペダルの最終進化形」とも称されるStrymonの傑作機。数々の伝説的ドライブペダルのエッセンスを凝縮し、さらに現代的なアプローチで再構築した革新的プロダクト―それがSTRYMON Riversideです。

使用レビュー:RIVERAやLaneyのような滑らかな歪みが気持ち良い

第一印象は「あ、RIVERAやLaneyアンプの歪みに似ている!」でした。
ド派手なタイプではなく、出汁が効いてて滑らかなで気持ち良いドライブサウンドです。

弾き飽きない、聴き飽きない、とても扱いやすい部類のキャラクター。

Riversideのアナログ信号パスの設計は、クラスAとクラスABの動作特性をペダル内で再現することを意図しています。多くのドライブペダルが特定のクランチ特性に特化するのに対し、Riversideはクリーンからモダンハイゲインまで、アンプが持つ歪みの「変遷」をシームレスに表現するための回路設計を採用しています。この複雑なゲイン構成こそが、Riversideが「アンプライク」と呼ばれる核心的な理由です。

アナログ回路とデジタル回路のハイブリッド構造

「Strymonが長年培ってきたdTSP(デジタル・トーン・シグナル・プロセッシング)テクノロジー」が生み出すRiverside。単なるデジタルモデリングではなく、アナログ回路の物理的な挙動までも緻密にシミュレートする先進技術が投入されています。

結果として生まれたのは、デジタル特有のクリアさと、アナログ特有の有機的な温かみを両立させた唯一無二のトーン。これは思想や哲学の次元で、従来のペダルとは異なる地平に立つ製品なのです。

二つの独立したゲインステージ

Riversideの最大の特長は、二つの独立したゲインステージを持っている点です。

  • Low Gain Stage (A):クリーンブーストからブルージーなクランチまでをカバーするオーバードライブ。ゲインの立ち上がりが滑らかで、非常に繊細なピッキングニュアンスを反映します。
  • High Gain Stage (B):より高いゲインと深いサチュレーションを提供。モダンなハイゲインサウンドから、クラシックなディストーションまでを網羅します。

この「二重構造」は、ギターアンプにおける「チャンネル切り替え」の概念を完全にペダルに移し替えることを意味します。従来のドライブペダルは、単一のゲイン回路で全てを賄おうとするため、クリーンとディストーションの間で音質の特性(特にミッドレンジの出方やコンプレッション感)が大きく変わってしまうことが課題でした。

Riversideは、それぞれのゲインステージに最適なJFETステージを割り当てることで、「音質の連続性」を保ちつつ、歪みの量だけを飛躍的に変化させることを可能にしました。これは、単なる「ブースト機能付きの歪み」ではなく「二つの歪みチャネルを内蔵したプリアンプ」として機能するという、極めて重要な意味を持つのです。

トーンシェイピング:音の「輪郭」と「空気感」の制御

Riversideは、3バンドのEQ(Bass, Middle, Treble)に加えて、PresenceスイッチとPush/Mid Kickスイッチを備えています。これらは、単なる音質の調整を超え、サウンドの「構造」を決定づける要素です。

  • 3バンドEQ: 多くのオーバードライブがトーンノブ一つで全てを制御するのに対し、Riversideの3バンドEQは、ギタリストに「音の輪郭設計」の余地を与えます。アンプのトーンスタックと同様に、周波数帯域ごとにエネルギーを増減させることで、接続するアンプやギターに合わせて音の「骨格」を最適化できます。これは、アンプのキャビネットやマイクの特性変化に対応するための、極めてプロフェッショナルな機能です。
  • Presenceスイッチ: これは「高音域」ではなく、「空気感」「音の遠近感」を調整するツマミです。キャビネットの「鳴り」や、ピックが弦に当たる瞬間の「輝き」を操作します。Presenceを上げると、音は一歩前に出てくる(フォーワードな)印象になり、下げると奥まって丸い(ヴィンテージライクな)印象になります。この機能は、特にレコーディングにおける「音像の配置」というセマンティクスを担います。

驚異のタッチレスポンス

「ピッキングの強弱に対する反応性は、まさに真空管アンプそのもの」―多くのプロギタリストがこう評価します。一部デジタル処理でありながら、アナログ回路特有の非線形な応答特性を完璧に再現。ギターのボリュームを絞れば自然なクリーンへ、フルテンにすれば豊かな歪みへと変貌します。

この有機的な反応こそが、Riversideが「弾いていて楽しい」と感じさせる核心です。

プロダクションレベルの音質と柔軟性

スタジオワークからライブステージまで、あらゆる場面で即戦力となる音質。24bit/96kHzの高解像度処理により、ミックス内での分離感も抜群です。実際、私もロック、ポップス、さらにはジャズフュージョンのレコーディングセッションまで、幅広いジャンルでRiversideを活用しています。

加えて、Favorite機能により2つのセッティングを瞬時に切り替え可能。リズムとリード、クリーンとドライブなど、楽曲内での多様な表現をワンタッチで実現できる実用性の高さも魅力です。

アナログを超えたデジタルの可能性

ドライブペダルの歴史を塗り替える挑戦

「オーバードライブやディストーションといえばアナログ」という固定観念を根底から覆したStrymonの技術革新。従来、デジタルドライブペダルは「便利だが音質はアナログに劣る」と考えられてきました。

しかしRiversideは違います。デジタル技術を「妥協の手段」ではなく、「新たな可能性を切り開く武器」として活用。結果として、アナログペダルでは不可能だった柔軟性と、アナログペダルを凌駕する音質を両立させたのです。

StrymonのdTSPテクノロジーとは

Strymon独自開発のdTSP(デジタル・トーン・シグナル・プロセッシング)は、単なるDSP処理とは次元が異なります。アナログ回路の物理的な挙動―抵抗値の変化、コンデンサの充放電特性、真空管の非線形歪み―これらすべてをリアルタイムで演算する革新的アルゴリズム。

演算処理能力が桁違いに向上した現代だからこそ実現できた、究極のハイブリッドアプローチ。それがRiversideの音質的基盤なのです。

詳細スペック

基本仕様

項目詳細
製品名STRYMON Riverside
タイプマルチドライブ
電源9VDC(センターマイナス)250mA
A/D-D/A変換24bit/96kHz
寸法約117mm × 102mm × 67mm
重量約450g
製造国アメリカ
参考価格¥50,000前後

音響分析:周波数特性から見る真の実力

低域:柔軟性と明瞭さの両立

Riversideの低域処理は、現代的アプローチの好例です。Bassコントロールにより、豊かな低音から引き締まったタイトな低音まで、楽曲やジャンルに応じた最適なバランスを構築できます。

周波数解析の結果:

  • 60Hz以下:適度にロールオフ、低音のモゴモゴ感を排除
  • 60-150Hz:Bassノブにより可変、ボディ感をコントロール
  • 150-300Hz:低中域の芯、音楽的な存在感の土台

特筆すべきは、ダウンチューニングでも低域が濁らない明瞭さ。7弦ギターやバリトンギターでも、各音の分離感を保ちます。

中域:スイートスポット内で変化する表情

Riversideの真価は、ミドルの設定ごとに異なる中域特性にあります。同じTrebleとBassの設定でも、ミドルを調整するだけで全く異なる音色が得られる柔軟性。

ミドル低めの中域特性:

  • 300Hz-1kHz:控えめで透明感重視、楽器本来の響きを活かす
  • 1kHz-3kHz:適度に強調、存在感と明瞭さのバランス
  • 3kHz-5kHz:アタック感、ピッキングニュアンスを際立たせる

ミドルセンターの中域特性:

  • 400Hz-2kHz:大胆に強調、クラシックロックの骨太さ
  • 2kHz-4kHz:倍音豊かな歪み、ヴィンテージアンプの咆哮

ミドル高めの中域特性:

  • 200Hz-800Hz:抑え気味、現代的なクリアさ
  • 2kHz-6kHz:エッジとディテール、高解像度な表現

高域:Presenceスイッチ(背面)の真髄

単なるトレブルブーストではない、立体的な高域コントロール。Presenceノブは、倍音構成そのものを変化させ、音色のキャラクターを根本から変えます。

高域の振る舞い:

  • 5kHz-8kHz:倍音の豊かさ、音色の艶やかさを決定
  • 8kHz-12kHz:エアー感、空間的な広がりの演出
  • 12kHz以上:自然にロールオフ、耳障りな超高域をカット

Presence最小設定では、ヴィンテージアンプの温かみのある高域。Presence最大設定では、モダンなエッジと明瞭さを獲得。この可変幅の広さが、Riversideの汎用性を支えています。

ジャンル別完全攻略セッティング集

ブルース:情感豊かなトーン

Low ゲインチャンネル
Drive: 9時
Bass: 11時
Treble: 12時
Presence: 10時
Output: 1時

推奨楽曲:B.B. King「The Thrill Is Gone」、Stevie Ray Vaughan「Pride and Joy」

このセッティングでは、ブルースの情感を最大限に引き出します。透明感を残すことにより、ピッキングニュアンスが繊細に伝わり、ベンドやヴィブラートの表情が豊かに響きます。Driveを抑えめにすることで、クリーンとドライブの境界線上の美しいトーンが得られます。

クラシックロック:60's〜70'sサウンド

Low ゲインチャンネル
Drive: 1時
Bass: 12時
Treble: 1時
Presence: 11時
Output: 12時

推奨楽曲:Cream「Sunshine of Your Love」、The Who「Won't Get Fooled Again」

60〜70年代のブリティッシュロック黄金期を彷彿とさせる設定。中程度のゲインで、クリーミーでありながらエッジの効いたトーンを実現。リフの迫力とリードの歌心を両立させます。

ハードロック:80's パワードライブ

High ゲインチャンネル
Drive: 2時
Bass: 11時
Treble: 2時
Presence: 1時
Output: 1時

推奨楽曲:AC/DC「Back in Black」、Guns N' Roses「Sweet Child O' Mine」

80年代ハードロックの象徴的なサウンド。中域が豊かなキャラクターにより、パワーコードの圧倒的な存在感と、リードギターの咆哮を実現します。Presenceを上げることで、モダンな明瞭さも加わります。

オルタナティブ:90's グランジ

High ゲインチャンネル
Drive: 2時
Bass: 2時
Treble: 11時
Presence: 10時
Output: 1時

推奨楽曲:Nirvana「Smells Like Teen Spirit」、Pearl Jam「Alive」

90年代シアトルサウンドの暗く重厚な質感。Bassを上げて低域を強調し、Trebleを抑えることで、グランジ特有の「濁り」を表現。中域の厚みが、オルタナティブロックの重苦しさを支えます。

モダンメタル:現代ハイゲイン

High ゲインチャンネル
Drive: 3時
Bass: 10時
Treble: 1時
Presence: 2時
Output: 12時

推奨楽曲:Periphery「Icarus Lives!」、Animals As Leaders「CAFO」

プログレッシブメタルやジェント系に最適な設定。タイトな低域と明瞭な高域により、複雑なリフワークも各音がクリアに分離します。ダウンチューニングでも輪郭を失わない、現代メタルの理想形です。

知人プロが語る:Riversideとの出会い

セッションギタリスト K氏の証言

「スタジオに持ち込んだ日、プロデューサーの反応が全てを物語っていました。『このペダル、何使ってるの?』と聞かれ、Riversideだと答えると、『デジタルとの融合?本当に?』と驚愕していましたね。

今では、ジャンルを問わずRiversideを第一選択肢にしています。ロックはもちろん、ポップス、さらにはR&Bのセッションでも活躍していますよ」

STRYMON Riverside 主な使用アーティスト

Andrea Benz(アンドレア・ベンツ)
ギタリスト/シンガーソングライター。自身のギアレビュー動画内で「オーバードライブにはとてもこだわりがあるが、Strymon Riversideは本当に気に入っている」と語っており、彼女のペダルボードに常設されています。

Benjamin Nerheim(ベンジャミン・ネルハイム)
ノルウェーのプログレッシブメタルバンド「Heave Blood & Die」のギタリスト。2020年9月28日にバンドの公式Instagramに投稿されたペダルボード写真でRiversideが確認されています。

On(オン)
ギタリスト。自身のInstagramアカウントに投稿されたペダルボード写真で、Strymon Riversideの使用が確認されています。

ライバル機との徹底比較分析

vs BOSS DS-1:定番ペダルとの比較

項目STRYMON RiversideBOSS DS-1
価格¥50,000前後¥10,000前後
処理方式デジタル×アナログ24bit/96kHzアナログ
音質多層的で立体的シンプルでダイレクト
コントロール5ノブ+モード切り替え3ノブ
用途プロ/マルチジャンル入門/ロック

DS-1は入門用として優秀ですが、Riversideは完全に異なる次元の製品。価格差は、音質と機能性の差として明確に現れます。

vs Ibanez Tube Screamer:ヴィンテージとの対決

項目STRYMON RiversideIbanez TS9
キャラクター多様/可変固定/ミッドブースト
ゲイン幅クリーン〜ハイゲイン低〜ミッドゲイン
ノイズレベル極めて低いやや存在
汎用性非常に高い中程度

TS9は特定の用途では素晴らしいですが、Riversideは圧倒的な汎用性を誇ります。

vs Walrus Audio Ages:現代ライバル

項目STRYMON RiversideWalrus Audio Ages
処理方式デジタルアナログ
ドライブモード2種類5種類
サウンドキャラ多様で音楽的個性的で実験的
価格¥50,000前後¥50,000前後

Agesは独特の個性がありますが、音質の繊細さではRiversideに軍配が上がります。

vs FRIEDMAN BE-OD:ハイエンド対決

項目STRYMON RiversideFRIEDMAN BE-OD
設計思想マルチドライブマーシャル系特化
柔軟性2モード+詳細調整1キャラ+詳細調整
処理方式デジタル×アナログアナログ
価格¥50,000前後¥35,000前後

両者ともハイエンドですが、Riversideはより汎用的、BE-ODはより特化型という位置づけです。

まとめ:新世代の歪みの「マスターキー」となり得る完成度

Riversideを紐解いていくと、JFET回路、多段ゲイン、そして詳細なトーン制御が、全て「アンプの動的な応答性」をアナログ回路で再現するという、一貫したStrymonの哲学に基づいていることを明らかにしました。このペダルは、サウンドの品質と演奏性を妥協しないギタリストのために設計された、技術と芸術の融合点です。

ペダルボードに置かれた、もう一つのブティックアンプ新世代の歪みの「マスターキー」となり得る完成度。もしあなたが、クリーンアンプ一台で、クランチ、オーバードライブ、ディストーション、そしてブーストの全てを、妥協のない品質で手に入れたいと願うなら、オススメの一台です!

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