
フェイザーエフェクトに市民権を与え、全ギタリストを「サイケの渦」の虜にした立役者と言えば、このペダル!
深く、濃密で、まるで宇宙の深淵から響いてくるような液状のモジュレーション。ジェットプレーンのような鋭い「シュワーッ」というスイープ、ピークが強調されたドラマティックで存在感のある音色は、もはや70年代ロックの象徴的トーンのひとつとなっています。
1970年代にニューヨークで誕生し、バッド・フィンガー、デヴィッド・ギルモア、そしてケヴィン・パーカーといった時代を象徴するアーティストたちの足元を支えてきたSMALL STONE。今回レビューするのは、その伝統を完璧に継承しつつ、現代のボードに収まりやすいサイズへと進化した現行品の「Small Stone」です。
そのシンプルさゆえ、ほとんど気づかないサブリミナルなモジュレーションから、ジェット機の離陸音のような激しいフェイズ効果まで、一台で網羅!
当記事では、この未知の次元へ誘ってくれる「ワープ・デバイス」が長年愛され続ける秘密にスポットを当ててみましょう。
使用レビュー:渦潮のような強烈な求心力に血が騒ぐ
「COLOR」スイッチを跳ね上げた瞬間、理性が剥ぎ取られる。目の前の景色が歪み、音の奔流が巨大な渦潮となって、聴き手の意識をその中心へと引きずり込んでいく。
このペダルが放つのは、全帯域をえぐり取るような深いスイープと、猛り狂う倍音のうねり。それは、まるで宇宙の特異点に触れた時のような、抗いようのない求心力!
その荒々しくも超自然的な揺らぎに触れた時、眠っていた本能が目覚め、静かに血が騒ぎ出す。整いすぎた現代の音を破壊し、未だ見ぬサイケデリックな次元へと意識を飛ばす伝説のトリップ装置。
この渦に一度飲み込まれたら最後、二度と平凡なサウンドには戻れないですよ(笑)
唯一無二の「OTA方式」が産む有機的なうねり
多くのフェイザーがフォトカプラやFETを使用する中、SMALL STONEは伝統的にOTA(Operational Transconductance Amplifier)チップを採用しています。これがSMALL STONE特有の「水が流れるような」滑らかさの秘密です。
カチカチとした機械的な切り替わりではなく、まるで生き物が呼吸しているかのような、あるいは太陽の黒点が蠢いているかのような、有機的でリッチな倍音成分。これこそが、世界中のマニアが「これじゃないとダメだ」と断言する理由です。
「COLOR」スイッチによる二面性
このペダルの核心は、中央に配置された小さな「COLOR」スイッチにあります。
スイッチが下(OFF)の時、SMALL STONEは非常に音楽的で温かみのある、上品なフェイズ・シフトを奏でます。カッティングやアルペジオに彩りを添える、極上のスパイスです。
しかし、スイッチを上(ON)にした瞬間、世界は一変します。フィードバックが増強され、中音域が強烈に削ぎ落とされた「ジェットサウンド」へと変貌。低域から高域までをえぐり取るような深いスイープは、まさにサイケデリックの極致です。
Rateノブ一つで完結する操作の美学
コントロールは「Rate」ノブが一つだけ。一見すると機能不足に感じるかもしれませんが、これこそが完成された回路の証です。
時計の8時方向に設定すれば、1970年代のメロウなソウルやファンクで聴ける、ゆったりとした空間の広がりを演出。12時を過ぎればサイケデリックなうねりが加速し、全開にすればリングモジュレーターに近い、実験的でカオスな高速フェイズへと到達します。
どのポジションでも「使える音」が用意されている設計は、まさに天才的です。
圧倒的な「立体感」と音の奥行き
SMALL STONEは、モノラル接続でありながら、聴き手にステレオのような錯覚を与えます。
フェイズ・シフトによって発生する周波数のピークとディップ(谷間)が、ギターの音像を前後に揺らし、空間を三次元的に演出します。空間系エフェクトを介さずとも、このペダル一台で音に「奥行き」が生まれるのです。
ダイナミクスを殺さない「生命体」としての反応
安価なデジタルフェイザーにありがちな「音が平坦になる」現象。SMALL STONEには無縁の話です。
ピッキングの強弱に対して、フェイズのうねりが繊細に反応します。優しく弾けば水の波紋のように、強く叩けば渦潮のように。プレイヤーの感情をそのまま音の揺らぎへと変換してくれる、まさに「自分の一部」と呼ぶにふさわしいレスポンスです。
ノーリスク・ハイリターンの実用性
かつての「Big Box」モデルは、その巨大なサイズと特有のノイズでボードの占有者となっていました。しかし、現在のNanoシリーズは、BOSSペダルよりも一回り小さいコンパクトな筐体を実現。
さらに、トゥルーバイパス仕様により、エフェクトオフ時の音痩せを完全に解消。ヴィンテージの「あの音」を、現代のクリーンなシステムにノーリスクで組み込めるようになったのです。
ニューヨークの伝統を受け継ぐアイデンティティ
1968年の創業以来、常にエキセントリックで革新的なエフェクターを世に送り出してきたElectro-Harmonix。SMALL STONEには、その創設者マイク・マシューズの遊び心と、ニューヨークの湿った地下室で生まれたような独特の「泥臭さ」が宿っています。
洗練されすぎない、どこか「危うさ」を秘めたサウンド。これこそがロックンロールに必要な重要成分です。
宇宙感を引き起こすフェイズ・シフト
サイケデリック・ムーブメントの象徴
1970年代、音楽シーンはより実験的な響きを求めていました。そこで誕生したSMALL STONEは、従来のフェイザーが持っていた「シュワー」という薄い効果ではなく、より深く、より暗い、宇宙の静寂を切り裂くような揺らぎを実現しました。
デヴィッド・ギルモアがPink Floydの名盤で聴かせた、あの「浮遊感」。それは、このペダルが持つ独特のフェイズ・ステージがもたらしたものでした。
4ステージ・フェイザーの真髄
SMALL STONEは、4つのフェイズ・ステージ(位相をずらすセクション)を通過させることで、滑らかでありながら主張の強いサウンドを作り出します。
特筆すべきは、その周波数特性の広さです。低域から高域までを余すところなくカバーするため、ギターだけでなく、シンセサイザーやエレピ(Rhodes等)の愛好家からも「聖杯」として崇められています。
アナログ・フィードバックの恩恵
「COLOR」スイッチをONにした際のサウンドは、信号の一部を再び回路に戻す(フィードバック)ことで生まれます。このとき、特定の周波数が強調され、同時に打ち消されることで、まるで生き物が叫んでいるような強烈な個性が生まれます。
これはデジタル・シミュレートでは決して再現できない、アナログ部品の「誤差」が産む奇跡の響きなのです。
詳細スペック&ビジュアルインプレッション
基本仕様
| 項目 | 詳細 |
| 製品名 | Electro-Harmonix Small Stone |
| タイプ | アナログ・フェイザー(4ステージ) |
| 電源 | 9V DC(センターマイナス)/ 9V電池 |
| 寸法 | 72mm (W) x 110mm (D) x 50mm (H) |
| 製造国 | アメリカ(ニューヨーク)or時期により異なる |
| 参考価格 | ¥14,000前後 |
70年代を全面に打ち出したデザイン
まず、オレンジとブラックのツートーンカラー!70年代の大胆なグラフィックデザインを彷彿とさせ、ペダルボード上で強い存在感を放ちます。
大きなRateノブは、(熟練者にとっては)足先での操作も考慮されたデザイン。エレハモらしい、男ゴコロをくすぐるルックスで、使うたびに愛着が湧いてきます。
ジャンル別完全攻略セッティング集
サイケデリック・ロック:幻想のトリップ
- Rate: 10時
- Color: ON (Up)
- 推奨楽曲: Tame Impala「Elephant」, Pink Floyd「Breathe」
「宇宙」を感じたいならこの設定。ColorスイッチをONにすることで、フィルターが深くえぐり取られ、重厚なうねりが生まれます。歪みペダルの「前」に配置すれば、より荒々しく凶暴なフェイズサウンドに、リバーブを足せば銀河の果てまで飛ばされるような浮遊感が得られます。
ファンク/R&B:極上のリズム・カッティング
- Rate: 2時
- Color: OFF (Down)
- 推奨楽曲: Earth, Wind & Fire「Shining Star」
ColorをOFFにすることで、原音の芯を残したまま、キラキラとした位相の変化を付加。速めのRate設定により、16ビートのカッティングに弾むような躍動感を与えます。ワウペダルの半止めと組み合わせると、さらに濃厚なミッドレンジを演出可能です。
アンビエント/シューゲイザー:深海の揺らぎ
- Rate: 8時(最小付近)
- Color: OFF (Down)
- 推奨楽曲: Slowdive「Alison」
耳を凝らさないと気づかないほどの、ゆったりとしたスイープ。しかし、これがあるだけでサウンドに「湿度」が生まれます。ロングディレイのフィードバックと組み合わせれば、音が何層にも重なり、光の屈折のように美しく変化する音響空間を構築できます。
クラシック・ロック:70's スタジアム・トーン
- Rate: 12時
- Color: OFF (Down)
- 推奨楽曲: Led Zeppelin「The Rover」
適度なスピード感と、アナログ特有の温かみが混ざり合う設定。オーバードライブさせたアンプと組み合わせることで、リフに力強い「押し」を与えます。単なる揺らし物ではなく、トーンに厚みを出すための「エンハンサー」として機能します。
職人が語る:SMALL STONEという存在

スタジオ・ミュージシャン K氏の証言
「ペダルボードに常駐させているエフェクトの一つがSMALL STONEです。理由はシンプル―『使いやすさ』と『音の良さ』のバランスが完璧だから。
複雑なコントロールがないので、リハーサル中でもステージ上でも、瞬時にセッティング変更できます。Rate一つで表情が劇的に変わるので、同じ曲でも演奏するたびに違うアプローチが可能。
Color switchの存在も絶妙です。クリーンパートとソロパートで切り替えるだけで、音楽的に意味のあるダイナミクスが生まれます。これは『シンプルだからこそできる』芸当なんです。」
ライブエンジニア S氏の体験談
「外音をミックスする側からすると、SMALL STONEは非常に『扱いやすい』エフェクターです。安っぽいフェイザーは特定の帯域が飛び出したり、急に音量が下がったりして困ることが多いのですが、SMALL STONEは一貫してリッチな低域をキープしてくれる。
特にColor ON時のサイケなサウンドは、PAを通すと本当に巨大な壁のように聴こえます。あの立体感は、デジタルのマルチでは出せない迫力がありますよ。」
ライバル機との徹底比較分析
vs MXR Phase 90:二大巨頭の対決
| 項目 | SMALL STONE | MXR Phase 90 |
| キャラクター | 液状・ウェット・ディープ | 乾いた・パーカッシブ・明快 |
| 操作性 | Rate + Colorスイッチ | Rateのみ |
| 得意分野 | サイケ、アンビエント | ハードロック、ファンク |
| 音色 | 暗く深い | 明るく抜ける |
Phase 90が「ギターの輪郭を強調する」のに対し、SMALL STONEは「ギターを空間に溶け込ませる」イメージ。好みの問題ですが、よりドロっとした深い揺らぎを求めるならSMALL STONE一択です。
vs Strymon Zelzah:現代ハイエンドとの比較
| 項目 | SMALL STONE | Strymon Zelzah |
| 回路・方式 | 4ステージ・アナログ (OTA) | 多段デジタル・モデリング |
| 音色キャラクター | 液状でダーク、泥臭い質感 | 透明感のあるHi-Fi、洗練された音 |
| カスタマイズ性 | Rateとスイッチ1つ(直感的) | Stage切り替え、多彩なノブ |
| サウンドの核 | 荒々しいサイケデリックな「渦」 | 現代的で美しい「フェイズ・ダンス」 |
| 価格帯 | ¥14,000前後 | ¥57,000前後 |
Strymonは多機能で非常にクリアですが、SMALL STONEが持つ「粗さ」や「磁気のような粘り」は、デジタルでは完全には再現できません。シンプルに「あの頃の音」を求めるプレイヤーにとって、価格が4分の1以下のSMALL STONEが勝利する場面も多々あります。
SMALL STONE:主な使用アーティスト
Kevin Parker (Tame Impala)
現代のサイケデリック・ロックの旗手であるケヴィン・パーカーにとって、SMALL STONEは「替えのきかない」最重要ペダルです。
- 特徴: 歪みの前に配置し、強烈なモジュレーションを加えることで、あの「溶け出すような」浮遊感を生み出しています。ライブボードでの使用が多数確認されています。
David Gilmour (Pink Floyd)
「ピンク・フロイドのサウンド=フェイザー」という印象を決定づけた一人です。
- 特徴: 1975年のアルバム『Wish You Were Here(炎〜あなたがここにいてほしい)』、特に「Shine On You Crazy Diamond」のレコーディングで使用されたと言われ、1970年代のメイン機材として挙げられています。
Jean-Michel Jarre(ジャン・ミッシェル・ジャール)
フランスの電子音楽の巨匠。シンセサイザーにおけるフェイザーの有効性を世界に知らしめました。
- 特徴: 代表作『Oxygène(幻想の惑星)』において、ストリング・マシン「Eminent 310」にSMALL STONEを通し、あの濃密な宇宙空間のようなサウンドを構築。
Jonny Greenwood (Radiohead)
実験的なギターサウンドを追求するジョニー・グリーンウッドも、長年の愛用者です。
- 特徴: 1990年代の活動初期からボードに組み込まれており、繊細なアルペジオに独特の「揺らぎ」を与えています。1997年の機材紹介や、写真にて確認。
Kurt Cobain (Nirvana)
カート・コバーンも、フェイザーを語る上で欠かせないアーティストです。
- 特徴: 1992年の「Curmudgeon」のレコーディングセッションで、自前のSMALL STONEを持ち込んだことが記録されています。(スタジオエンジニアのバレット・ジョーンズによる証言)
その他の主な愛用アーティスト
- J Mascis (Dinosaur Jr.): オルタナティブ・ロック界の巨匠。轟音ファズと組み合わせた使用で有名。
- Billy Corgan (Smashing Pumpkins): 初期(Gish時代)のライブで、目撃されています。
- Tom Morello (Rage Against the Machine): スタジオでの音作りにおいて、特定のテクスチャーを得るために使用。
- Cliff Burton (Metallica): 初代ベーシスト。ベースにフェイザーをかける独自のスタイルに使用。
まとめ:50年以上にわたり、選ばれ続けてきた信頼性
1974年の発売開始から半世紀近く。SMALL STONEは、単なる流行に左右されない「不変の音」として、音楽史の最前線に君臨し続けてきました。
ニューヨークの湿った空気の中で産声を上げたこのペダルは、ジャン・ミッシェル・ジャールの壮大な電子音から、ケヴィン・パーカーの現代サイケデリアまで、常に時代の核心を揺らし続けてきたのです。
デジタル技術がどれほど進化し、安価な模倣品が溢れようとも、プロたちが結局この無骨な筐体に戻ってくる理由。それは、50年以上の歳月が証明した「音」への絶対的な信頼に他なりません。 シンプルゆえに壊れない、そして唯一無二の揺らぎを持つ。このペダルを手にするということは、世界中のレジェンドたちが愛した「本物の歴史」を、自身の足元に招き入れるということなのです。
「一度踏めば、もう元の音には戻れない。」
そんな贅沢な中毒性を、ぜひあなたの指先で、そして耳で体験してください!



