
エフェクターボードにその鮮やかな「ドット・ブルー」のペダルが収まった瞬間、あなたのギターはもはや弦楽器ではなくなります。
「これが、本当にピックアップから送られた信号だけで鳴っているの!?」
BOSS SY-1を初めて鳴らしたとき、一瞬自分の耳を疑うかもしれません。レイテンシー(音の遅延)は皆無。専用ピックアップも不要。ただケーブルを繋ぐだけで、目の前の空気が重厚なアナログシンセの脈動や、煌びやかなシーケンスサウンドで塗り替えられていく――。
かつて、ギターでシンセ音を出すには、ギターに特殊なピックアップを取り付け、巨大な専用ユニットに接続する「大がかりな儀式」が必要でした。しかし、BOSSはその歴史をこの一台で塗り替えました。
しかも!SY-1には、最新のDSP技術によって凝縮された「121種類の音色」と「無限のインスピレーション」が宿っています。
これは、子供だましの飛び道具ではありません。ギタリストの表現力を数十年分、一気に加速させるドリームペダルなのです。
使用レビュー:ポリフォニック対応!入門機レベルではなく超実践機
ストレスフリーな「ゼロ・レイテンシー」と究極の追従性
SY-1の最大の強みは、その反応速度です。ピッキングした瞬間に音が立ち上がる。
当たり前のように聞こえますが、これまでのギターシンセでは「弾いてから音が出るまでの僅かなラグ」が演奏のストレスとなっていました。
SY-1は、デジタル処理を感じさせない有機的なレスポンスを実現。高速な速弾きから繊細なアルペジオまで、あなたのタッチを完璧にシンセ・エンジンへと伝えます。
専用ピックアップ不要。シールド一本で完結する手軽さ
かつての「GKピックアップ」をギターにネジ止めする時代は終わりました。
SY-1は、標準的なギター/ベースの出力をそのまま解析します。お気に入りのヴィンテージ・ストラトでも、多弦ベースでも、シールドを挿すだけで即座に多種多様なシンセサウンドへアクセス可能です。この「手軽さ」こそが、ギタリストの創造性のハードルを劇的に下げました。
11タイプ、121音色という圧倒的なサウンド・ライブラリ
中央のノブを回すだけで、以下の11種類のカテゴリーから音色を選択できます。
- LEAD / STR / ORGAN / BELL / SFX / BASS / PAD / SEQ (1&2) / ARP (1&2)各カテゴリーには11種類のバリエーションが用意されており、合計121音色。
重厚なベースシンセから、幻想的なパッド、8ビット風のSEまで、およそ音楽に必要なシンセ音のすべてがこの小さな箱に収まっています。
直感的な「トーン・シェイピング」コントロール
シンセサイザー特有の複雑なパラメーターを弄る必要はありません。SY-1には、2軸のスタック・ノブが搭載されています。
- TONE/RATEノブ: 音の明るさや、シーケンスのスピードを直感的に変化させます。
- DEPTH/VARIATIONノブ: 音の深みやキャラクターの切り替え。
これらを回すだけで、瞬時に「使える音」へと追い込める設計は、ライブパフォーマンスを重視するBOSSならではの美学です。
サウンドをレイヤーする「エフェクト・ループ」の搭載
SY-1にはSEND/RETURN端子が備わっています。ここに歪みペダルやモジュレーションを繋ぐことで、「シンセサウンド」と「エフェクトを加えたギターサウンド」を並列でミックスし、出力することができます。
例えば、ループにファズを繋げば、壁のような厚みを持つ「ギター+シンセ」のハイブリッド・トーンが完成します。
表現力を爆発させる「HOLD機能」と外部ペダル対応
本体のペダルを長押しするだけで、今鳴っているシンセ音を「持続(ホールド)」させることができます。その持続音の上で、ギターのクリーントーンでソロを弾くといった一人二役の演奏が可能。
また、外部エクスプレッション・ペダルを接続すれば、フィルターの開閉を足元でリアルタイムに操り、シンセサイザー特有のダイナミックな音色変化を演出できます。
ギター/ベースの切り替えスイッチによる最適化
筐体側面のスイッチ一つで、入力信号の最適化モードを切り替え可能。ベース・モードに設定すれば、低域の検知精度がさらに向上し、ベーシストにとっても最強の相棒となります。
ギターシンセの歴史を塗り替えた革命
伝統の「SYシリーズ」のDNAを継承
BOSSは1970年代からギターシンセの研究を続けてきました。名機「GR-500」から始まり、近年ではフラッグシップの「SY-300」や「SY-1000」で培われた高度なアルゴリズム。それらを一切の妥協なく、この「コンパクトペダル・サイズ」に落とし込んだのがSY-1です。
「ポリフォニック(多声)」対応という革命
SY-1は完全ポリフォニック対応です。単音だけでなく、コード(和音)を弾いても音が濁ることなく、美しくシンセサイズされます。ストリングス・モードでコードを鳴らせば、まるでオーケストラをバックに背負っているかのような広がりを得られます。
詳細スペック&ビジュアルインプレッション
基本仕様
| 項目 | 詳細 |
| 製品名 | BOSS SY-1 Synthesizer |
| タイプ | ギター/ベース用シンセサイザー |
| 音色数 | 121 (11タイプ × 11バリエーション) |
| 端子 | INPUT, OUTPUT, SEND/RETURN, EXP/CTL |
| 電源 | 9V DC (ACアダプター or アルカリ電池) |
| 外形寸法 | 73(幅) × 129(奥行) × 59(高さ) mm |
| 重量 | 450g |
機能美に溢れるインターフェース
BOSS特有の堅牢なアルミダイキャスト製ボディは、過酷なツアーにも耐えうる信頼の証。ノブの重み、クリック感、そして視認性の高いLED。
特に11ポジションのセレクトノブは、カチカチと小気味よく決まり、ステージの暗闇でも現在のモードを指先の感覚で把握できます。青い筐体は、足元で「未来」を主張しているかのようでスタイリッシュ!
ジャンル別:SY-1を使いこなす究極のセッティング集
モダン・プログレッシブ:宇宙的リードサウンド
- TYPE: LEAD (1)
- VARIATION: 1~3
- TONE: 2時 / DEPTH: 12時
ディレイと組み合わせることで、ピンク・フロイドのような壮大な空間を構築。ロングサステインを活かし、エクスプレッションペダルでワウのようにフィルターを動かすのがコツです。
シティーポップ/ファンク:キレのあるオルガン
- TYPE: ORGAN
- VARIATION: 4
- TONE: 10時 / DEPTH: 3時
カッティングに合わせてオルガンのパーカッシブな音が追従します。ミックス・ノブで直系ギターの音を30%ほど混ぜると、アンサンブルに馴染みやすくなります。
80's ニューウェイヴ:幻想的なパッド
- TYPE: PAD
- VARIATION: 6
- TONE: 12時 / DEPTH: 2時
ボリューム奏法(バイオリン奏法)のように音を立ち上げると、ギターであることを忘れるような美しい持続音が広がります。リバーブを深めにかけるのが鉄則です。
EDM / インダストリアル:攻撃的なシーケンス
- TYPE: SEQ (1)
- VARIATION: 11
- RATE: 曲のBPMに合わせる
ピッキングするだけで、16分音符のシーケンスフレーズが自動的にトリガーされます。ミュート奏法を織り交ぜることで、機械的なビートの中に人間味のあるグルーヴを生み出せます。
知人プロが語る:BOSS SY-1の真実
スタジオ・ミュージシャン K氏の談
「これまではシンセの音が必要な現場には、キーボーディストを呼ぶか、DAWで後から足していました。でもSY-1があれば、その場で『こんな感じ?』と提案できる。
特にBELLやSFXのモードは、楽曲の隙間を埋めるスパイスとして最高です。ポリフォニックの精度がとにかく高いので、複雑なテンションコードを弾いても音が破綻しないのが素晴らしい。」
ライブエンジニア S氏の視点
「SY-1の出力信号は非常にクリアで、PA側でのハンドリングが楽ですね。
ギターアンプから鳴らしても良いですが、もし可能ならSEND/RETURNからシンセ音だけをラインでPAに送ってみてください。ライブハウスのスピーカーから、地響きのようなサブベースが鳴り響き、観客を圧倒できますよ。」
ライバル機との徹底比較分析
vs EHX Synth9:ヴィンテージ・モデリングの雄との比較
| 項目 | BOSS SY-1 | EHX Synth9 |
| 価格 | ¥25,000前後 | ¥40,000前後 |
| 音色コンセプト | 現代的・汎用シンセ | 特定の名機(Moog等)の再現 |
| バリエーション | 121種類(膨大) | 9種類(厳選) |
| ポリフォニック | 非常に優秀 | 優秀だがやや発音に癖あり |
| エフェクト・ループ | あり | なし |
| 用途 | 幅広い音作り・実験的演奏 | 特定の「あの音」を狙い撃ち |
EHX Synth9は「名作シンセの音をシミュレートする」ことに特化したスペシャリストです。特定のヴィンテージサウンドを求めるならSynth9ですが、SY-1は圧倒的な音色数と「ギターとシンセを混ぜる」ためのセンド・リターン端子を備えており、システムの中核としての汎用性ではSY-1が圧倒します。
vs Source Audio C4 Synth:究極のカスタマイズ機との対決
| 項目 | BOSS SY-1 | Source Audio C4 |
| 価格 | ¥25,000前後 | ¥45,000前後 |
| 操作性 | 直感的(ノブのみ) | PC/スマホ連携が前提 |
| プリセット保存 | 不可(その場で作る) | 可能(128個まで) |
| トラッキング | ポリフォニック(和音OK) | 基本モノフォニック(単音) |
| 音色設計 | プリセット選択式 | ゼロからのパッチ構築 |
C4 Synthは「自分だけのシンセ音をプログラミングしたい」というDTM的な思考を持つプレイヤーには最高の一台です。一方、SY-1はポリフォニック(和音)に対応しており、なおかつデバイスを繋がずとも本体だけで完結する「即戦力」を重視しています。ライブでの使い勝手と和音の美しさならSY-1に軍配が上がります。
vs DigiTech Dirty Robot:個性派デジタル・シンセ比較
| 項目 | BOSS SY-1 | DigiTech Dirty Robot |
| 価格 | ¥25,000前後 | 中古 |
| モード | 11カテゴリの多様なシンセ | シンセ/ボコーダーの2モード |
| 音質傾向 | クリア・Hi-Fi | ザラついた・アナログ的質感 |
| ホールド機能 | あり | なし |
| 特徴 | どんなジャンルにも対応 | 70s〜80sの汚れた質感が得意 |
Dirty Robotはボコーダー的なうねりや、LO-FIで「汚れた」シンセサウンドを得意とする個性派です。対するSY-1は、ベルやストリングス、壮大なパッドといった「綺麗でモダンな音」から過激なSEまで網羅。SY-1はDirty Robotが持つようなクセを抑えつつ、より現代の音楽シーンに適合する洗練されたトーンを追求しています。
まとめ:最も手軽で、最もエキサイティングな革命
確かに、シンセサイザーの音をギターで出すことに「抵抗」を感じる純粋主義者もいるでしょう。しかし、一度このスイッチを踏み、全身を貫くような電子音を体験すれば、その懸念は雲散霧消してしまうでしょう。
1960年代のロックレジェンドたちがトレモロやファズで世界を驚かせたように、現代のギタリストはこのSY-1を手に、まだ誰も聴いたことのない音のフロンティアを目指すことができます。
- インスピレーションの枯渇を打破したい。
- バンドのアンサンブルに厚みを持たせたい。
- 一人でのパフォーマンスをプロレベルに引き上げたい。
その答えは、この青い小さなコンパクトエフェクターの中にあるかもしれません!
SY-1を手に入れるということは、ギターという楽器の限界を突破するということ。それは、最も手軽で、最もエキサイティングな革命なのです。




