
「このクロームの輝きを持つワウが、レコードで聴き狂ったあの『鳴き』の発信源か……」
1960年代、ジミ・ヘンドリックスやエリック・クラプトンが世界を熱狂させた、あの官能的な「ワウ・サウンド」に夢中になった人も多いのでは?
1967年、世界初のワウペダルを世に送り出したVOX。そのオリジナルの設計思想を、現代の熟練した職人の手による丁寧な「手配線(ハンドワイヤード)」で蘇らせたのが、このV846-HWです。
それでは早速、レギュラーモデル(量産モデル)とは明らかに違う、ハンドワイヤードならではの立体的で品格の高い音色の正体を解剖していきましょう!
使用レビュー:ハンドワイアードならではの『立体的な音像』にうっとり
1音に宿る「禅」の精神。大人のためのVOX V846-HW
このワウを「派手に暴れさせる道具」と考えているなら、まだ、お子ちゃまかもしれません。V846-HWの真髄は、無駄を削ぎ落とし、音の核心に迫る「禅」にも似た静謐な品格にあります。
耳を突く下品な高域は存在せず、あるのは熟練の職人が手配線で紡いだ、深くて厚みのある響きのみ。ペダルを操作する一瞬一瞬が、自らの内面と向き合う呼吸のようなダイナミクスを生みます。
ガチャガチャと踏み散らかすのではなく、一音の「間」や「半止め」を慈しみ、最小限の動きで音の景色を変える……そんな「引き算の美学」を解する大人にこそ相応しいワウ・ペダルですよ!
究極の純度を誇る「タレットボード・ハンドワイヤード」
V846-HWの最大のアイデンティティは、プリント基板を一切使用しない、昔ながらの「手配線」構造にあります。内部を開けると、整然と並んだタレットボードと、職人の手で美しく這わされた配線が現れます。
これにより、信号のロスを極限まで抑え、ピッキングの強弱やギターのボリューム操作に対する「追従性」が劇的に向上。弾き手の感情をダイレクトに回路へ伝える、文字通りの「アナログの極致」がここにあります。
特注の「Haloタイプ・インダクター」が語る歌声
ワウの心臓部といえるインダクター。V846-HWには、ヴィンテージ・ワウの象徴である「Halo」タイプを忠実に再現した特注インダクターが搭載されています。
このパーツが、あの「クワッ」という鼻にかかったような、それでいて芯の太い、歌うようなトーンを生み出します。安価なワウにありがちな耳を刺すような不自然な高域の痛さがなく、全帯域で音楽的な響きを維持します。
カーボンコンポジット抵抗が醸し出すヴィンテージの熱量
回路の細部にまでこだわり、ノイズが少なく音楽的な歪み成分を持つ「カーボンコンポジット抵抗」を採用。これが、音に独特の「粘り」と「温かみ」を与えています。
単にクリアなだけではない、ヴィンテージアンプをドライブさせた時のような「ジリッ」とした熱を帯びたトーン。これがアンサンブルの中での圧倒的な存在感に繋がります。
完全なトゥルーバイパス仕様によるトーンの保護
ヴィンテージ・ワウの最大の弱点であった「エフェクトOFF時の音痩せ」。V846-HWはこの問題を完璧にクリアしています。
トゥルーバイパス設計により、エフェクトをオフにしている間、ギター信号は一切の回路を通らず直通します。愛用のギターとアンプが持つ本来のトーンを、1ミリも損なうことはありません。
高い耐久性を誇る高級ポテンショメータ
激しいアクションに晒されるポテンショメータ(可変抵抗器)には、VOXがこのモデルのために磨き上げた専用パーツを採用。
滑らかなカーブ(変化の度合い)を実現しており、少しずつ踏み込んでいく際のスウィープ感が非常にリニアです。狙った帯域でピタリと止める「半止め」の操作も、思いのままにコントロール可能です。
堅牢なダイキャスト・ボディと優雅なクローム仕上げ
手にした瞬間に伝わる、ズッシリとした重量感。過酷なツアーや連日のステージにも耐えうる頑丈なダイキャスト製エンクロージャーに、美しいクロームメッキが施されています。
見た目の美しさはモチベーションを高め、その自重によってペダル操作時の安定感も抜群。風格をもった機能美と堅牢性が高次元で融合しています。
厳選された低ノイズ・トランジスタ
使用されるトランジスタは、一つひとつ厳格に選別されたもの。ワウ特有の「サー」というノイズを最小限に抑えつつ、豊かな倍音を確保しています。
ハイゲインなディストーションと組み合わせても、ノイズに埋もれることなく、鋭く、ズ太い「叫び」をアウトプットしてくれます。
黄金時代のドラマチックさを贅沢に再現
ロックの夜明けを象徴するサウンド
1960年代後半、ギターという楽器を「叫ばせる」ことに成功したワウペダル。VOX V846はその中心にいました。
ジミ・ヘンドリックスが「Voodoo Child (Slight Return)」で見せた、あの波打つようなカッティング。エリック・クラプトンが「White Room」で聴かせた、むせび泣くようなソロ。それらはすべて、この回路設計の系譜から生まれました。
V846-HWは、それらの伝説的な演奏を再現するために、回路定数の一つひとつに至るまでヴィンテージの個体を徹底的に解析して作られています。
手配線という「贅沢」の合理性
なぜ今、あえて手間のかかるハンドワイヤードなのか?それは単なるノスタルジーではありません。
プリント基板には、目に見えない「浮遊容量(コンデンサ成分)」が発生し、これが高域の鮮明さを奪うことがあります。ハンドワイヤードは、パーツ間の距離を最適に保ち、理想的な信号経路を確保できる「最も贅沢で合理的な」手法なのです。
詳細スペック&ビジュアルインプレッション
基本仕様
| 項目 | 詳細 |
| 製品名 | VOX V846-HW (Hand-Wired) |
| タイプ | アナログ・ワウペダル |
| 接続端子 | インプット × 1、アウトプット × 1 |
| 消費電流 | 約0.5mA |
| 寸法 | 102 (W) x 253 (D) x 80 (H) mm |
| 重量 | 約1.3 kg |
無垢なまでの操作感
V846-HWのルックスは、まさに「王道」。しかし、その質感は通常のV847とは一線を画します。ペダルの踏み心地は適度な重みがあり、慣れたらミリ単位のコントロールを可能にします。
あえて「電池駆動のみ」という仕様も、ACアダプターからのノイズ混入を嫌い、ピュアな直流電圧で回路を動作させるという、音質至上主義の現れ。裏蓋を開けるための大型のゴム足も、工具なしで電池交換ができる機能性を備えています。
他のVOXワウペダル(V847、V847Aなど)との違いは?
V846-HWは完全ハンドワイヤード構造、Haloインダクター、BC108Cトランジスタなど、オリジナルV846の仕様を忠実に再現した上位モデルです。
音の太さ、奥行き、ノイズの少なさ、そして「ハンドワイヤード」というクラフトマンシップにおいて、完全に別次元の製品です。
※V847/V847Aは量産型で、コストを抑えた仕様。音質面では明確な差があります。
音響分析:帯域ごとのダイナミクスと質感
ローからミッドへの力強い押し出し
ペダルを戻した(ヒール)状態では、音がこもるのではなく、豊かな低域のレゾナンスが強調されます。ここから徐々に踏み込んでいくと、中域の「密度」がギュッと濃縮され、ギターが喉を鳴らすようなサウンドへと変化します。
抜けが良く、痛くないハイエンド
ペダルを完全に踏み込んだ(トゥ)状態でも、音が細くなりすぎることはありません。特注インダクターの効果により、非常にシルキーで太い高域が維持されます。チョーキングと合わせた時の「泣き」の深さは、他のワウでは味わえない快感です。
ジャンル別完全攻略セッティング・ガイド
サイケデリック・ロック:ジミ・ヘンドリックス・スタイル
- ペダル操作: 大きく、ゆったりとしたストローク
- 歪みとの組み合わせ: ファズ(Fuzz Face系)の前段に配置
- ポイント: ギターのボリュームを少し絞り、ワウの可変範囲で音色をコントロール。
- 推奨曲: 「Voodoo Child (Slight Return)」
1970's ファンク:パーカッシブ・ワウ
- ペダル操作: 16分音符に合わせたクイックな刻み
- 歪みとの組み合わせ: 軽いオーバードライブ、または完全なクリーン
- ポイント: ペダルの中間域(スウィートスポット)を重点的に使い、パーカッシブな「チャカポコ」音を強調。
- 推奨曲: 「Theme from Shaft」(アイザック・ヘイズ)
ハードロック:泣きのソロ・スタイル
- ペダル操作: ロングトーンに合わせてじっくりと踏み込む
- 歪みとの組み合わせ: ディストーション、またはアンプのドライブ
- ポイント: チョーキングの頂点でペダルをフルに踏み込み、音を「叫ばせる」。
- 推奨曲: 「White Room」(クリーム)
ジャズ・フュージョン:半止めによるトーン・シェイピング
- ペダル操作: 特定の位置で固定(スタティック・ワウ)
- 歪みとの組み合わせ: ナチュラルなドライブ
- ポイント: ソロのフレーズに合わせて、鼻にかかったような独特のフィルター感を付加。
- 推奨曲: マイルス・デイヴィス「Bitches Brew」以降のギターサウンド
知人プロが語る:VOX V846-HWの真価
スタジオ・ミュージシャン K氏の証言
「仕事柄、多くのワウを使ってきましたが、最終的にV846-HWに戻ってきました。
理由は単純、『音の太さ』です。デジタル全盛の今だからこそ、この生々しいアナログの響きがレコーディングで際立つ。ミックスした時にギターのラインがくっきりと浮き出てくるんです。また、電池駆動のみというのも、実はノイズ対策として現場では信頼されています。」
ギター講師 T氏の体験談
「生徒に『本当のワウの音』を教える時は、必ずこのペダルを勧めます。
操作に対して音が正直に反応するので、ごまかしが効かない。でも、上手く操れた時の快感は代えがたいものがあります。一生モノの相棒を探しているなら、これ以上の選択肢はないでしょう。」
VOX V846-HW:愛用アーティスト
Gary Clark Jr.(ゲイリー・クラーク・Jr)
- 背景: 現代ブルース・ロックの救世主。彼はライブボードにV846-HWを常設しています。ファズとの相性が非常にシビアな彼のトーンにおいて、ハンドワイヤード回路によるインピーダンスの「絶妙な緩さ」と、トゥルーバイパスによる音痩せのなさが、彼の太く生々しいサウンドを支えています。
Jake Shimabukuro(ジェイク・シマブクロ)
- 背景: ウクレレの限界を超える彼が、その繊細な弦の響きを損なわずにワウをかけるために選んだのがV846-HWです。ウクレレはギター以上に「音痩せ」が目立ちやすい楽器ですが、ハンドワイヤードならではの純度の高い信号経路が、彼のマジカルなトーンを濁らせることなくフィルタリングしています。
Mateus Asato(マテウス・アサト)
- 背景: 「ギターの歌わせ方」において世界最高峰の感性を持つ彼は、ボードビルドの変遷の中でV846-HWを使用。特に彼のような「ネオ・ソウル」的なクリーントーン主体のプレイでは、ワウが全開の時でも耳が痛くならないV846-HWの上品なトーンが重宝されています。
Richie Kotzen(リッチー・コッツェン)
- 背景: 超絶技巧とソウルフルな歌声を併せ持つ彼は、一時期ボードにV846-HWを組み込んでいました。指弾きを多用する彼のスタイルにとって、ピックを使わない繊細なタッチのニュアンスを拾い上げるタレットボード回路の反応速度は、代えがたい武器となります。
ライバル機との徹底比較分析
| 項目 | VOX V846-HW | Jim Dunlop GCB-95F | Xotic XW-1 |
| 価格 | 35,000円前後 | 26,000円前後 | 42,000円前後 |
| 構造 | ハンドワイヤード | プリント基板 | プリント基板 |
| 音色 | 芳醇・ヴィンテージ | 定番・ロック | 多機能・モダン |
| 電源 | 電池のみ | 電池・ACアダプター | 電池・ACアダプター |
| 一言 | 究極の再現度 | コスパの王道 | 万能な調整能力 |
まとめ:職人の手作業が、音に熱量を帯びさせる
VOX V846-HWは、「物理的な信号の理想の躍動」を形にしたものです。
バッテリーカバーを開けると、まるで高級腕時計のムーブメントのような、整然としたハンドワイヤードの世界が広がります。
各コンポーネントは最短距離で結線され、無駄な配線長は一切ありません。はんだ付けの美しさは、職人の技術レベルを雄弁に物語ります。均一で光沢のある接合部は、長期的な信頼性と音質安定性の証です。
中央に鎮座するHaloタイプインダクターは、まるで心臓のように回路全体にエネルギーを供給。そのコイル巻き数と線径は、オリジナルV846の分析データに基づいて精密に再現されています。
熟練の職人が一本一本、魂を込めて配線した回路。そこを通るあなたのギターの音は、かつてないほどの熱量を持ってスピーカーから放たれます。
「たかがワウ一つで、ここまでギターを弾くのが楽しくなるのか」
その驚きこそが、このペダルを手にする最大の価値です!





