
「おお、明らかに質感が違う!これが、伝説のエンジニアが見ていた景色か」
音符一つひとつが立体的に浮かび上がり、倍音が虹のように広がり、形容しがたい美しいサステインが永遠に続くかのような錯覚。
ロジャー・メイヤー―この名前を知らずして、ロック史を語ることはできません。1960年代、ジミ・ヘンドリックス専属のサウンドエンジニアとして、数々の伝説的なファズペダルを開発した天才。彼が作り上げたOctavia、Axis Fuzz、そしてClassic Fuzzは、エレクトリックギターの可能性を無限に拡張しました。
VooDoo-1 Classicは、そのロジャー・メイヤーの設計哲学を現代に継承した、究極のファズライクなディストーションペダルです。
使用レビュー:オーケストラのストリングスを彷彿とさせる重層感
VooDoo-1 Classicの歪みを一言で表すなら、計算し尽くされた「倍音のシンフォニー」です。
多くのドライブペダルが音を潰して平坦にしてしまうのに対し、この機材は逆に基音に対して奇数次・偶数次の倍音を、まるでミルフィーユのように折り重ねていきます。
弦を弾いた瞬間に立ち上がる音の壁。そこには、オーケストラのストリングスを彷彿とさせるような、重層的で立体的な響きが宿っています。特に高域へと伸びゆく倍音の余韻は美しく、シルクのような滑らかさで減衰していく様は、正にアナログ回路の至宝と言えるでしょう。
そして、この豊かな倍音構造は、実戦において圧倒的な武器となります。ドラムやベースが激しく主張するアンサンブルの中でも、ギターは決して埋もれることはありません。無理に音量を上げずとも、「音の粒子」が空間を支配し、常に鮮明な輪郭を持って存在し続ける。
この「虹色に広がる倍音」こそが、ロジャー・メイヤーが現代に提示した、音楽的ディストーションの完成形なのです。
「バッファード」の概念を覆す、音楽的なアクティブ・スプリット
VooDoo-1 Classicの最大の特徴は、ロジャー・メイヤー独自の思想で設計された高品質なバッファー回路にあります。スイッチを切っている時ですら、あなたのトーンはより瑞々しく、力強くなる。
これは、長いケーブルを引き回すプロのステージにおいて、音質の劣化を最小限に抑えるための「エンジニアリングの極致」です。ギター本来のキャラクターを殺すことなく、むしろ引き立てるその回路は、もはやプリアンプと呼ぶに相応しいものです。
極めてフラットかつワイドな周波数レスポンス
多くのオーバードライブが特定の帯域(ミッドレンジなど)を強調する中で、VooDoo-1は驚くほどワイドレンジです。
低域は程よくタイトで濁らず、高域は耳に痛くない絶妙な空気感を持っています。(実際は、非常に美しい倍音成分を伴うので、周波数のレイヤーが複数重なっている)これにより、ストラトキャスターの煌びやかさも、レスポールの重厚な唸りも、楽器が持つポテンシャルを100%引き出すことができます。
ピッキングに対する「餅のような」弾力と追従性
弦に触れた瞬間に感じるつきたての餅のような粘り強い弾力感が強力です。ピッキングした瞬間に音がパッと立ち上がる速さがありながら、その芯には柔らかい食いつきがあり、指先に音が吸い付いてくるような心地よい抵抗感を与えてくれます。
この絶妙な「粘りと弾力」があるおかげで、Gainを深めに設定していても、右手のタッチを弱めるだけで「モチッ」とした密度の高いクリーンへ、強く叩けば瞬時に爆発的なドライブへと自在に行き来できるのです。まるでアンプの回路と自分の指が、一本の筋肉繊維で直結されているかのようなダイレクト感。
この、硬すぎず柔らかすぎない「音楽的な手応え」は、数値化されたデジタル・シミュレーションでは決して到達できない、アナログ回路の最高到達点と言えるでしょう。
ギターボリュームへのリニアな反応
「手元のボリュームで歪みをコントロールする」ギタリストにとって、VooDoo-1は最高の相棒です。
ボリュームを「7」に絞れば、鈴鳴りのような極上クランチに。「10」にフルアップすれば、突き抜けるようなファジーなドライブに。この変化のグラデーションが極めて滑らかで、演奏中に「音色の物語」を紡ぐことを可能にします。
多彩な出力を可能にするデュアル・アウトプット
本体には「HW(ハードワイヤー)アウト」と「BF(バッファード)アウト」の2系統を装備。
伝統的なトゥルーバイパス的な挙動を求めるならHWを、長いケーブルを使用し、常に安定したインピーダンスを維持したいならBFを選択。さらに、2台のアンプに同時に信号を送るスプリッターとしても機能します。現場の状況に合わせた柔軟なシステム構築が可能です。
天才エンジニアが描く「宇宙感」のあるトーン
ジミ・ヘンドリックスと共に歩んだ歴史
1960年代半ば、まだ無名だったジミ・ヘンドリックスとロジャー・メイヤーが出会った時、エレクトリックギターの歴史が動き始めました。ロジャーは海軍で音響工学を学んだ技術者であり、同時に音楽への深い理解を持つ稀有な存在でした。
ジミが求めていたのは、「宇宙の音」「色彩のある音」「感情を直接伝える音」。ロジャーはその要求を、科学的アプローチと芸術的感性で実現していきました。Octavia、Axis Fuzz、そして数々のカスタムエフェクト。これらはすべて、二人の創造的対話から生まれたのです。
ギター信号を「波形」として捉える視点
VooDoo-1の設計において、ロジャーは音を「歪ませる」こと以上に「波形の対称性をどう保つか」を重視しています。
一般的な歪みペダルが音を潰して「矩形波」に近づけるのに対し、VooDoo-1は真空管アンプが限界までドライブした際に見せる、音楽的で複雑な倍音構成をシミュレートしています。これが、聴感上の「暖かさ」と「音の太さ」の正体です。
詳細スペック&ビジュアルインプレッション
基本仕様
| 項目 | 詳細 |
| 製品名 | ROGER MAYER VooDoo-1 Classic |
| タイプ | ディストーション/ファズ |
| 電源 | 9VDC(センターマイナス)/ 9V電池 |
| 出力端子 | 2系統(HW Out / BF Out) |
| 製造国 | イギリス |
| 参考価格 | ¥93,000前後 |
コントロールの操作感
- Gain: 最小ではクリーンブースター、最大ではクラシック・ロックの咆哮。
- Tone: 高域の明瞭度を調整。どの位置にしても音が細くならないのがVooDooらしい。
- Output: 非常に大きな出力を持っており、アンプのプッシュに最適。
ずっしりとした重量感(約340g)は、内部に詰まった高品質なパーツと堅牢な筐体の証。足裏に伝わるスイッチのクリック感は、確実な動作をプレイヤーに約束します。
ジャンル別完全攻略セッティング集
クラシック・ロック:70's スタジアム・トーン
- Gain: 2時
- Tone: 12時
- Output: 11時
- ピックアップ: リア・ハムバッカー
- 推奨楽曲: Led Zeppelin「Whole Lotta Love」、Free「All Right Now」
この設定では、マーシャル・スタック・アンプをフルアップしたような、乾いた飽和感が得られます。コードを弾いた時の分離感が素晴らしく、パワーコードが塊となって飛んでくる感覚を味わえます。
ガレージロック:ローファイな荒々しさ
- Gain: 12時
- Tone: 10時
- Output: 3時(プッシュ気味に)
- ピックアップ: フロント・シングルコイル
- 推奨楽曲: The White Stripes「Seven Nation Army」、The Black Keys「Lonely Boy」
Toneを低めに設定することで、ヴィンテージファズ特有の「ベルクロ」的な質感が得られます。音符が途切れる瞬間の「ブチッ」という音が、ガレージロックの生々しさを演出。シングルコイルピックアップのテレキャスターやジャガーと相性抜群。
サイケデリック・リード:ジミ・インスパイア
- Gain: 4時(ほぼフル)
- Tone: 11時
- Output: 12時
- ピックアップ: フロント+センター(ハーフトーン)
- 推奨楽曲: Jimi Hendrix「Voodoo Child (Slight Return)」
ゲインを深くかけることで、バイオリンのようなサステインが得られます。特筆すべきは、この設定でも音が潰れすぎず、ワウペダルとの相性が抜群に良いことです。
知人プロが語る:VooDoo-1が手放せない理由
プロギタリスト Y氏の証言
「VooDoo-1 Classicを手に入れてから、ファズ(っぽいディストーション)に対する概念が完全に変わりました。以前は『ファズ=極端な歪み=特定の曲でしか使えない』と思っていましたが、このペダルは違う。ギターボリュームへの反応が素晴らしく、クリーンからファズまで連続的にコントロールできる。つまり、常にボードに組み込んでおくべき『基本ツール』なんです。
自分のギターとアンプに最適化すると、まるでペダルが生き物のように反応し始めます。これは『調整』というより『対話』です。ペダルと音楽的な会話をしている感覚がある」
スタジオ・ミュージシャン K氏の証言
「レコーディング現場で『何か良いディストーションない?』と聞かれたら、まずこれを差し出します。どんなアンプに繋いでも、(特にローゲインセッティングで)そのアンプの良さを殺さずに、一段階上のランクに引き上げてくれる。特にBFアウトの音質は、ミックス時にギターがスッと前に出てくる不思議な力を持っていますね。」
ROGER MAYER VooDoo-1シリーズ を使用するアーティスト
Michael Landau(マイケル・ランドウ)
現代最高峰のスタジオ・ワークとトーン・マスターとして知られるランドウは、VooDoo-1の最も有名な愛用者の一人です。
- 詳細: 2008年のケルン公演でのペダルボード写真(Flickr等)で確認。彼のトーンの「基盤(foundational role)」として長年語り継がれています。
Scott Henderson(スコット・ヘンダーソン)
ジャズ・フュージョンからブルースまで、驚異的なニュアンスを操るヘンダーソンもこのペダルを高く評価しています。
- 詳細: ロジャー・メイヤー公式サイトにて、ウェスト・コーストの主要プレイヤーとして名前が挙げられています。
Kevin Shields(ケビン・シールズ / My Bloody Valentine)
シューゲイザーの先駆者、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのケビン・シールズもVooDoo-1をボードに組み込んでいます。
- 詳細: Equipboard等において、イエローのTone-Benderの隣に配置されているのが確認されています。
Stu G(ステュー・G / Delirious?)
イギリスのギタリスト、ステュー・Gも長年のユーザーです。
- 詳細: 2006年のペダルボード写真にて確認されています。
Danny Jones(ダニー・ジョーンズ / McFly)
イギリスの人気ポップ・ロックバンド、McFlyのダニー・ジョーンズも愛用者です。
- 詳細: 自身のInstagram投稿にて、ペダルボードの一角に配置されているのが公開されています。
Leendert Haaksma(レーンダート・ハークスマ)
オランダの実力派ギタリスト兼プロデューサー。
- 詳細: 彼のボード上にVooDoo-1シリーズが確認されています。
ライバル機との徹底比較分析
| 項目 | VooDoo-1 Classic | Ibanez TS808 | ProCo RAT2 |
| 歪みの性質 | ワイドレンジ/倍音モンスター | ミッド強調/マイルド | 荒々しい/エッジ |
| ダイナミクス | ◎(最高クラス) | ○(圧縮感強め) | ○ |
| 汎用性 | 意外と高い | 特定のジャンルに強い | ロックに特化 |
| 価格 | 高価 | 標準 | リーズナブル |
まとめ:時代を超える「普遍的な」音色
現代のプロダクションでは、『時代性』と『普遍性』のバランスが重要です。
実際問題、あまりにトレンディすぎる音色は、数年で古臭く聞こえてしまう。
VooDoo-1 Classicの音色は、1960年代のクラシックロックから2020年代のモダンプロダクションまで、あらゆる文脈で機能します。これはジミヘン達が遺してくれた、『時代を超えた唯一無二の音色』だからです。
ロジャー・メイヤーという名前がクレジットに載ること自体、作品に歴史的な重みを与えます。VooDoo-1 Classicを導入するということは、『ロック史の一部』を作品に組み込むということなのです。



